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「語りの真剣勝負」・・・観客に聞かせるという戦い。


『第15回よみかたり』 六本木ストライプハウスギャラリーにて

和やかな雰囲気の中に、ピリピリするような真剣勝負の緊張感があった。

「よみかたり」は、森章二さんが主宰する朗読会で、今回で
15回目になる。


地下二階のギャラリーという環境で繰り広げられたのは、
「いかにして観客に作品世界を届けるのか、観客の心を震わせた方が勝ち」とでも言いそうな語りの真剣勝負である。

「この会が真剣勝負」と言っても、他の朗読会や演劇、ライブの数々が不真面目という意味ではない。勿論全ての表現活動は真剣そのものであるが、真剣勝負の形が今回は少し違っているように思えたのだ。

特に注目したのは、「よみかたり」でこれまで行ってきた楽器による生演奏を行わない選択をしているところだ。作品によっては、効果音さえ使わない。
潔い、と言ってしまえば簡単だが、演者にとってはとてもハードルが高かったろうと思う。

観客が受け取る朗読作品の印象が100%自分の責任となるのだから、気が抜けないし、細部にまで注意を払う事になる。

当然、本番に臨む緊張感が高くなることは容易に想像できる。
だが、ほとんどの語り手からは、それらの緊張や気負いのようなものは感じらなかった。無手勝流の散漫な力自慢にはなっていないのだ。
のしかかる緊張感を凌駕するように、作品に向き合う熱意と、観客に伝えようとする真摯な姿勢が感じられて、会全体の好感度に繋がっていたと思う。

それは、初めて朗読会を見たという同行者の
「本番までの鍛錬や練習が凄そうだ。その成果がにじみ出ていた」
という言葉からも間違いはないであろう。

もう一つ、真剣勝負を生み出しているのは、
会場となったストライプハウスギャラリーの反響構造である。

おそらく意図されたものではないだろうが、硬い壁で密閉に近い造りのギャラリー空間では、出演者の声はある種「揺らぎ」を持って響いてくる。

それは登場人物たちのキャラクターに深みをもたらしてくれるが、読み上げている語り手の心情を如実に表してしまうことがある。

それほどデリケートな環境なのだ。
この、語り手の毛穴まで見えるような朗読会を、「真剣勝負」と呼ばずして何と言おう。

さらに、こういう環境でも全くひるまず、観客を魅了していくベテラン陣の語りからは、長年の経験から生まれる実力の奥深さが感じられた。
ほんの少しのまくら語りで観客を作品世界に引き込んでいくし、群読では散漫にならないようにしっかりとした軸となっている。

「よみかたり」は、
襟を正して聞きたくなる正統派朗読の一つの極みと言えるだろう。

是非、ご自身の目で耳で、老若男女多彩な語り手の紡ぎ出す心情を感じ取って頂きたい。

8日木曜日まで、六本木ストライプハウスギャラリ-にて



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夢乃玉堂
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