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「24分のX」・・・21 「玉砕前提」連続超ショートストーリー
「サイズはいくつ?」
スナック「馬酔木」でそう聞かれて、
8年思い続けた女について何も知らないことに松野は気付いた。
でももう時間は無い。
退職勧告を受け入れた彼女に会えるのは、あと一日か二日なのだ。
「しょうがないわ。とりあえず9号を買いなさい。後で調整も出来るから」
「玉砕するなら、何だって良いでしょう」
「玉砕が前提?」
「そうよ。もう既に一回玉砕してるんでしょ。
それなのに、指輪を買って再挑戦する男なんて、気持ち悪くて
一歩間違えばストーカーよ」
「だったら、買う意味ないじゃないですか~」
「当たり前でしょ。いきなり指輪贈るような真似は止めて
少し頭を冷やしなさい」
「そういう意味だったんですか? 指輪の話したのって」
「あんたって、他人の事はあんなに考え抜くのに、
自分の事になると、計画性がなくて、何も考えずに行動するのね。
もう少し落ち着いて行動できるといいのに」
「すみません」
そう言って松野はグラスを空けた。
「とにかくそんな辛気臭い顔していられたんじゃ、こっちが堪んないわよ。
ちょっと散歩でもして、酔いを醒ましてらっしゃい」
「面白そうに煽っておいて、頭を冷ませだなんて、翻弄されるなあ。
ママさん。俺の恋で遊んでるでしょ」
「ふふふ。いいから。あんただって、翻弄されるのが楽しくて
ここに来てるんでしょ。
さあ行った行った。少し冷めたら戻って来るのよ」
追い出されるようにドアを開け、松野は一歩外に出た。
「あ!」
そこで松野は、思わず息を呑んだ。
つづく
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