「橋の伝説」・・・怪奇サークルが見つけたものは。
SKYWAVE FM89.2の番組「清原愛のGoing愛Way!」(毎週木曜16時から)で朗読された作品を紹介します。
25日木曜日にも、別の作品が、放送されます。
お時間のある方は是非お聞きください。
よろしくお願いします。
こちらは、18日の予定が21日になった作品のひとつです。
*一部加筆しています。
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「橋の伝説」
大学のサークル棟にある部室は、どの部屋もエアコンは無く、
雨の日は湿気がこもって誰も寄りつかない。
しかし、この怪談研究会の部屋だけは違う。
このじめッとした空気が、怪談に向いているのである。
今日も酔狂な部員数人が、サークルの会誌をまとめるために集まっていた。
「いい感じに撮れてるじゃないか」
「でしょ。ちょっと絞りを暗くするのがコツなんですよ」
「怪奇は何より雰囲気が大事だからな。事実は二の次だ」
「それ言っちゃダメでしょう」
暗い部室の中に、そんな気楽な雰囲気が満ちている。
重く考え過ぎないのが、怪談研究会の特徴だ。
今回のテーマは先週訪ねた「河童伝説の橋」。
とある渓谷にかかる古い橋が舞台だ。
かつてこの橋は、何度掛けても水に流されることがあり、
年老いた祖母が幼い孫を残して亡くなったらしい。
その後、橋をかけ替える時に、水の中から河童が現れて
工事を手伝い、橋は無事に掛けられ、今も当時のまま残されている。
「あれ? この緑色、何だろう」
橋を撮った写真を確認していた浅野幸人(ゆきと)が、
タブレットを触る手を止めた。
橋の真ん中あたり、川の中に立つ橋脚の根元に
何か緑色の塊が写っているのだ。
拡大していくと、緑色の人のようだ。
川に半身を漬けながら、橋脚にしがみ付いている。
「これ、河童かも!」
一度そう思うと河童にしか見えない。
とんがった口、手の指に水かき。そして頭には皿。
明らかに河童だ。
「やった。凄いのが撮れた。これ、会誌だけじゃもったいないな。
雑誌に投稿しようか、いや、テレビ局に持ち込むか」
浅野はさらに写真を拡大した。河童の顔が大きくなる。
何か元気がないように思える。ぼおっとして虚ろだ。
「やはり百年も橋を支え続けると、疲れるのかな」
その河童の後ろに、何か黒い人影が見える。
「仲間の河童か?。
でも何か様子が違う。これ、人間だ。女、老女だ。
年老いた老女が、長い髪を振り乱して、河童の首にしがみ付いている。
しかも、河童の頭の皿に口をつけて、水を飲んでいる!」
水を飲まれた河童は、目の焦点が合わず、
気を失っているように見える。
それでも、腕はしっかりと橋の橋脚を抱えている・・・
いや。抱えさせられているのだ。
浅野は直感的に、その理由を感じ取った。
「伝説のもとになった、孫を失った祖母が
河童をその橋に縛り付けているんだ。
この先ずっと、河童は老女に頭の皿の水を飲まれ続け、
老女の望む通りに橋脚を支え続けるのか、未来永劫に・・・」
浅野は、河童の背中に貼りついた老女と目が合ったような気がした。
だが、次の瞬間、タブレットの写真から河童も老女も消えてしまっていた。
私は黙ってその写真を削除した。
伝説は美しいほうが良いだろう。
おわり
「めざせ100怪!ラジオde怪談」は、
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毎週木曜日16:00~放送中)内で、2か月、もしくはそれ以上の期間を使って怪談を特集する「怪談朗読特別企画」。
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