「毒婦と呼ぶには余りにも可愛い」・・・奥女中 絵島の傳
駒塚由衣江戸人情噺 「恋無終絵乃嶋噺・奥女中絵島の傳」
吉原 中江別館金村
桜鍋で有名な吉原のお店で開催される恒例の駒塚由衣江戸人情噺。
今回は、絵島生島事件を題材にした物語。
大奥で月光院に使える絵島が、歌舞伎役者の生島新五郎に恋をして
逢瀬を重ねるという実際にあった事件を題材にした有名な物語であるが、
この噺では政争がらみの陰謀部分は排除されて、恋の顛末に集約している。
さて、以下は例によって個人の感想なのでご容赦を。
奥女中絵島が、恋に落ちて、徐々に女として毒婦として成長(?)していくのだが、
私が一番キラキラして恋を感じられたのが
物語のクライマックスで、久々に生島新五郎に
再会した時に絵島の口から出る
「どれほど会いたかったことか」
というセリフ、これが実に可愛らしい。
正直、そこに至るまでの、盗人を池に投げ込んだり、
脅しにかかった御殿医を逆にたらし込んだり、
肝の据わった毒婦に成長していく絵島は、ちょっと違和感のようなものを感じていた。
「禁断の恋に落ちたからといって、こうも躊躇なく毒婦になれるものなのだろうか?」
という印象を持ったのだ。
しかし、件のセリフを聞いた時、
「あ。絵島の恋は本物だ、許してしまおう」
と思えた。
それほど可愛いかったのだ。
毒婦と呼ぶには余りにも可愛く、キラキラしていた。
一瞬、ふわっと恋のお花畑に連れていかれる気がして、
この一言を聞くだけでも値打ちがあると思った。
また適当なことを言って、とお叱りを受けそうだが、
実際にどうなのか、ご自身の耳で聞いて確かめて頂きたい。
いくつかの日程でまだ席が空いているようなので是非。
終演後、浅草まで足を延ばし、毒婦の純愛を思い出しながら、
もんじゃを食べた。ほっこりと温かかった。
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