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「24分のX」・・・17 「言い訳」連続超ショートストーリー
「明日から海外赴任で、しばらく帰って来れないんだ。
朝早い便だし、今夜はこっちに泊まる。久しぶりだし、しばらく会えないから飲もうかと思ってさ」
登志夫の再会を求める言い訳に、美晴は戸惑いを覚えた。
どうしてこの男は、二人の過去がなかったように話せるのだろうか。
『こんな男と又会うの?』
そんな風に問いかけて来る自分の心に正しい答えは出せなかった。
でも、心がどんなに迷っていても、言葉は出てくる。
「わかった。でも、飲むだけね」
美晴は自分に言い聞かせるように答えた。
登志夫の都合の良いお誘いに、ツッコミもせず応えるのは
少し馬鹿っぽく見えるだろう。
それでいい。男なんて結局、聞き分けの良い女が好きなんだろう。
登志夫との関係はもう過去のものだと思っていたが、声を聞いた瞬間、
過去の思い出がよみがえった。
あの頃の甘い時間、二人の約束、笑いあった日々。
全てが美晴の心に蘇ってきた。
『もうどうでもいい』
そんな気持ちが心の中を支配していた。
この先の展開に進む言い訳を必死に探しているのだ。
『今の私はただ人肌が恋しいだけ。
だから、いくらでも聞き分けが良くなってあげられるわ』
思い出のラウンジで登志夫を待つ間、
大きな窓に当たる雨の音が美晴の胸に重くのしかかってきた。
「今、松野がいたら、又、ザマアミロって言われちゃうかもね」
つづく
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