「24分のX」・・・19 「指輪」連続超ショートストーリー
「早すぎる。もっと順番を考えなさい」
歴戦の勇者のようなアドバイスが、スナックのママから打ち出される。
しかし、そうとう酒の入った松野は暴走を止めることが出来ない。
「笑われたんだ。そんなに信用できないんだよ、俺は。
昔からそうだ。誰かを助けようとすると、遊びだの下心だの言われて、
結局相手は距離を取ってしまう。
もう、ド直球で玉砕するしかないんだ」
「だからって、最初のプレゼントに指輪を贈る?」
「でももう一度玉砕してるんだ。だから、指輪を贈って、こっちの本気を見せないと」
「そんなことしなくても、心が寂しい女は、優しい言葉で
簡単に落ちるわよ」
「だけどそれじゃあ。今までの男と同じなんだ。
言葉だけじゃない。体が目的じゃない。俺の真実を伝えるんだ」
「ほんとあんた、不器用なくらい真面目なのね。でもそうかもしれないわね。真面目に相手の事を考えたから、不器用でも真実を伝えたいんでしょ。その娘、それくらい傷ついて人間不信に陥ってるって事よね」
「そう。それなんだよ」
「あんた、本当に人事部に向いてるかも。
こんな厄介な女でもバランスをとって、更生させようとするんだから。
でも、あんたを人事部なんてバランス感覚が必要な部署に
配属させた上司を見てみたいわ」
「ありがとうございます!」
「何に感謝してるの。職業病って言ってるのよ」
「そうなんだ・・・」
「でもね、その年頃の女なんてみんな、心のどこかで期待してるんだから。引き返せなくなるわよ。良いの? 本当にそれで良いのね」
松野はそう言われて目の前のグラスを見つめた。
つづく
#短編 #ショート #連続小説 #不思議 #謎 #24分のX #女性 #会社員 #彼氏 #恋愛 #結婚 #メール #秘密 #不倫 #修羅場 #元カレ #失恋 #退職 #再会 #スナック
ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。