「会津嶺の鐘」・・・運命に抗うという生き方。
新撰組日記「会津嶺の鐘」渋谷伝承ホール。
滅びゆく者たちの浪漫。
それを今の世の中で表現するのはかなり難しいだろうと思う。
自粛で生きる糧や居場所を失っている人たちが現実の世界にいる中、滅びを美化させるような内容の作品は、辛いと考える人もいるだろうし、自粛警察を自称する人たちから非難される可能性もある。
だが、そんな中で、この作品は、「運命に抗う人々」を果敢に描いている。
新撰組日記とされているが、この舞台で多く目につくのは、
会津娘子隊の女性たちだ。
来るべき決戦の日を前に薙刀の稽古に勤しみ、
ついには官軍相手に戦いを挑み散って行く。
白虎隊の悲劇に注目が当たりがちな会津戦争で、
女性戦闘部隊に目を向けたのは、
「運命は誰にでも差別なく訪れ、それに甘んじず抗っていくことが大切である」
という狙いを感じさせてくれる。
袴姿で戦に挑む女性たちの姿は舞台に華を添えている。
その中で私が個人的に注目したのは、飛田さやかさんが演じる岡村すま子だ。すま子は、乳飲み子を抱える身なのに薙刀を振り回し、官軍に挑む。
時には男に混じってダンスを踊り、時には薙刀の二刀流まで披露する。
ちょっとお得な役どころであるが、役者の持つキャラクターと
よく合っていたように思える。
さらには、ベテランの一谷伸江さん。
タイトルでもある「鐘」の守人を演じているが、
最後にナレーションとして流れる声が昔と変わらないほど奇麗で、
かつてのドラマやバラエティ番組で慣れ親しんだ身としては
懐かしさを覚えるほど心が高揚した。
勿論、長谷川かずきさん演じる高木時尾の凛とした佇まい。
藤松愛さん演じる大河ドラマでも有名な山本八重の存在感なども
つい目で追ってしまう。
さらに、賀集利樹さん演じる新撰組の斎藤一の葛藤も見逃せない。
観ていくうちに、運命に抗うとはどのような生き方なのだろうと、頭の中でずっと考えていた。
多くの登場人物が入り混じり、運命に抗う人々の一大群像劇を展開していく。
今度は是非とも運命を課していく官軍側の考えや葛藤も
たっぷりと見てみたいと思った。
もう一つ記しておくと、会場である渋谷の大和田伝承ホールは、
劇場内の壁や音響も個性的である。
特に客席の左右に、桟敷があるという変わった造りで、
今回は客席としても使い、一部は演出の舞台として活用している。
どの様に使われているのか、実際にご覧になるのも良いであろう。
2月14日月曜まで、渋谷大和田伝承ホールにて。ご興味のある方は是非。
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