【初級者必見】スタンドアップパドルボード(SUP)のフィッシングことはじめと昨シーズンの振り返り
スタンドアップパドルボード(SUP; Stand Up Paddleboard、サップ)とは、1960年代ハワイが発祥のマリンスポーツで、サーフボードのようなボードに立ち、パドルを漕ぎながら海や湖、川をクルーズしたり、波に乗ったり、ヨガをしたりする水上アクティビティのひとつです。
SUPに乗って沖で釣りをする「SUPフィッシング」
そのSUPに乗って、オフショアやインショアで釣りをすることを「SUPフィッシング」と呼称され、カヤック、カヌーなどと共に「パドルフィッシング」というカテゴリーに属している様子です。
PVC(ポリ塩化ビニル) やEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)といった素材を重ね合わせた外殻に、空気を入れて膨らませる「インフレータブルタイプ」があり、アマゾンなどの通販サイトを通じて手頃な値段で買えて、かつ、軽量コンパクトなので持ち運びが容易で、どなたでも気軽にエントリーできるのが特長です。
事実、SUPフィッシングは事故が多い
前述の通り、エントリーしやすい釣行スタイルですが、下図の通りここ数年、横ばいではあるものの、70件前後の事故が発生し、死者も出ています。
遊泳などを含めたマリンレジャー全体の事故(762名)の約1割を占めています。プレイヤーの母数が不明なのであくまで推測ですが、一人あたりの事故率はべらぼうに高そうですね。
また、上記集計はSUP全体であり、ヨガやクルージングも内包されていると思います。ただ、事故の9割以上が「帰還不能」なので、それらよりも沖に出るSUPフィッシングの方が多いかもしれません。
例えば、以下の新聞記事のようなパターン。
SUPフィッシングは、死のリスクを負った釣行スタイルだと考えたほうがよいでしょう。
ただ、SUPフィッシングは釣行スタイルとしては歴史が浅く、安全管理のノウハウや知識がまだ浸透しておらず、未然に防ぐことができる事故がたくさんあったのかもしれませんね。
事故のリスクを最小化し、安全に楽しむために
以下に事故の傾向と参考コンテンツをまとめました。ぼくもまだまだ初級者ですが、これから始めようとする方に参考にしてもらえれば幸いです。
まず、事故原因ですが「無謀な行為」が一位で26%を占めていますが、事故事例を見ると、強風や高波での出艇だったり、必要な装備を怠ったり、自力で戻ることができない沖まで出てしまったりする行為のようですので、二位の「気象海象不注意」、三位の「知識技術力不足」と混在している感じがします。四位の「他人の過失」はちょっと思い浮かびません。なんだろ…
要するに、生存のための知識と体力をつけて、装備を怠らず、出艇前、出艇中の絶え間なく判断を見誤ら無ければ、事故のリスクを最小化できる、ということだと思います。
効率的にそれらの知識やノウハウを入手できるコンテンツを以下にご紹介します。
1.海上保安庁の『ウォーターセーフティガイド』
まずは、こちらを一通り読みたいですね。
補足になりますが、「パドルの基本的な取扱い」でシングルブレードパドルしか紹介されていませんが、釣りをされる方の大半はボードに座位でダブルブレードをお使いになるパターンが多いので、ダブルの場合は「利き手で漕いだ後、手首を返して反対側を漕ぐ」といった、使う道具ごとに必要な知識を仕入れておく必要があります。
2.TGさんの『TGパドルフィッシングSTUDIO』
パドルフィッシング、特にSUPにおける安全管理に対し、実演を交えて様々な観点で網羅的に語られていることとや、漁協の皆さんやプレジャーボート操船者といった海上交通における関係者視点にも言及している点で、これ以上無い "STUDIO" だと思います。
いつの動画か忘れてしまいましたが、「再乗艇の対処方法」を実演されておられて敬服致しました。今シーズンからSUPにトライする方は、一通りご覧頂くのを推奨します。
ぼくはまだTGさんにお会いしたことはないのですが、釣行エリアが近いので、いつかお会いして感謝をお伝えできる日が来たら嬉しいです。
3.ぼくの個人的な細かな安全対策
こちらはご参考まで。
初めて訪れた場所では、波や風の傾向を掴むまで釣行範囲をインショア(沿岸部)に制限
PCサイトやスマホアプリの「海天気.JP」「Windy」「Weathernews」のレーダー情報など、複数の予報をみて出艇の可否を検討。判断には風速計も利用
出艇中はスマホアプリの「海釣図V」や、GPS機能付き魚探をチェックし、自艇の現在位置と風や潮に流されている方向と速度を適宜確認
パドルなどに使うリーシュコードの金具部は突然壊れるので、定期的に交換するか、プラスチック製にしておく
ライフジャケット(PFD; Personal Floating Device)はフロントが薄く、再乗艇しやすいカヤック向けのものを選ぶ
ライフジャケットはカラーは明るければ明るいほどいい。ショア向けのライジャケはダーク系が多く、海の色と同化しやすく、プレジャーボード操船者から視認され難い
万が一、流されたときのために水やウィダーinゼリーを常備
万が一、流されたときのために笛を常備
万が一、SUPに穴が空いたときのために耐水の粘着テープを数枚常備
加えて、2級小型船舶免許をとって、気象や海象に関する知識や、水上交通のルールを学びました。
2024年、昨シーズンの振り返り
ここからは、ぼく魚伴(ぎょはん)の話になります。
ぼくは海なし県の出身で、子供の頃から一級河川の本流や支流を主な遊び場とし、エサ釣りから毛鉤釣りなどを経験。進学で上京、そのまま東京で就職し、仕事そっちのけで三浦や西湘のサーフでルアー(VS シーバス)、神奈川や山梨の川や湖、管理釣り場でフライフィッシング(VS トラウト)に勤しむ日々を送っていましたが、ここ2年くらいは忙しさにかまけて釣りに行く頻度はガクッと減っていました。
きっかけは三浦のスティングレー
そんな中、6月にたまたま気分転換のドライブに行った三浦半島のサーフで、たまたまクルマに積んであったシーバスロッドとバイブレーションで、たまたま大きなスティングレー(アカエイ)を釣ったのですが、そこで何かのスイッチが入ってしまいました。
これまでも一級河川で鯉、西湘でシーバスやマゴチなどパワーのある魚を釣ったことはありましたが、振り出しのロッドがギシギシと軋み、ラインが糸鳴りするようなスティングレーとのファイトは、これまでの人生で出たことのない脳内ホルモンが分泌されてしまったようです。脳汁ぶしゃーってやつですね。
そこからは、「大物を釣るためにどうしたらよいか」を悶々と考えるようになり、ネット等をひたすら検索し、気づいたら7月にはエントリーモデルのインフレータブルSUPが家に届いていました。手段としてSUPを選んだ決め手は、2ドアクーペで運用できるところ。
クリスマスにプレゼントを開ける子どものような気持ちで、アマゾンの箱を開封したのを覚えています。ちなみに、注文したのは紫のサンゴのデザインでしたが、開封したら真っ赤なペイズリー調のデザインでしたが、船舶から見て目立ちそうだ、という理由でそのまま受領しました。
今シーズンは34回出艇(さっき数えた)
その後、2024年末までに34回出艇し、たくさんのドラマがありました。ベスト釣果はこちらに。初マダイ、初青物、初タチウオなど、感動の出会いがたくさんありました。
故障やメンテナンス
故障やメンテにについては、出艇20回目くらいで付属の手動ポンプの調子が悪くなり、電動エアーポンプ(+静音の細工)を導入しましたが、SUP本体はこれといったトラブルもなく、毎回しっかり膨らみ、しっかり畳めました。
ちなみに、ぼくは現場で洗わず、そのまま畳んで家に持ち帰って、庭で洗って干して、クルクル巻いて室内保管していました。このあたりの運用方法が故障率に関わってくるところかもしれません。
なお、三ヶ月に一回は空気を入れた状況で一週間ほど放置し、圧が下がっていないかチェックしました。
次期SUP選び
とは言え、30回以上使ったので劣化が気になるところです。満遍なく目視チェックしていますが、干潮時に岩肌に擦った艇底も気になり、今シーズンは新たなSUPの導入を検討しています。
いまのところ、アウトリガーフロートを備えた三気室構造のSOUYU STICK 23年モデルのADVENTURE ODR 10'10"(GOODTIME ODR 10'10"含む)が第一候補です。色は船舶からみて目立つヴィンテージオレンジ。
【Elenaさんの紹介動画】
上記の動画でADVENTUREとともに紹介されているDISCOVERYも魅力的ですが、厚み「24cm」がどうしても気になってしまい尻込みしました。現在使っているモデルは15cm、ADVENTUREは12cm。厚みは浮力と安定性をもたらすとともに、風の影響を受ける要因になります。新技術のV字キールを実装しているとは言え、どうなんでしょうか。
今後は新SUPによる釣行の記録や、船外機による動力化なども紹介していければと思います。2025年も安全管理にしっかり留意して出艇して行きたいと思います。みなさま、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m