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'22山雅蹴球記 #12 藤枝MYFC戦

悪天候によりハーフタイムで1時間20分ほど中断となったこの試合。前半と後半でガラッと展開が変わってもおかしくないような難しい試合になった中で、きっちり90分を通して戦うことができました。前後半1点ずつを重ねて2-0で勝利。いい意味でいやらしいサッカーを展開しました。

こまっちゃん。

スタメン

山雅のスタートは保持4-2-2-2、非保持4-4-2。25分を過ぎたあたりで5バックに変更、非保持5-4-1。5バックの時間の方が長かったです。そしてコマツが1トップ気味で田中パウロが衛星的に動きます。
藤枝は可変を採用。基本的には3バックですが、どんどん飛び出して、そこを別の人が埋めてのポゼッション。


前半の展開

立ち上がり10分までは山雅ペース、その後11分の土井のボックス内でのシュートを皮切りに藤枝ペース。藤枝が攻めあぐね、山雅が耐える時間が続いた中、33分にコマツのシュートがCB小笠原の手に当たりハンドの判定。これで得たPKをコマツが沈め、苦しんだ中で山雅が先制。先制後は互いに攻め合う展開になりながら前半が終わりました。

多彩な藤枝の攻撃

3-4-2-1の藤枝は最近のトレンドを取り入れた戦い方を見せてきました。安易にロングボールを蹴ることはせず、鈴木淳を中心に丁寧に組み立て。ビルドアップは両サイドCBがワイドに開き、そこに鈴木・水野のどちらかのボランチかシャドーの横山がバックラインに降りてきて組み立てに参加。

そこから攻撃にいく際は、サイドを経由してゴールへ。左CBの秋山がハーフスペースからボックスまで入ってくる動きもありました。サイドで持った後も、簡単にクロスを上げずにボックスに人数をかけてからシュートに持っていこうとしているように見えました。マイナスに出してハーフスペースから狙ってきたシュートは脅威でした。

クロスもある、ミドルもある、山雅がラインを上げたら裏抜けも狙う、そしてFKでプレースキックもある。”全部盛り”な攻撃を見せてきた藤枝でした。


前節を活かした山雅

山雅は、前節の鳥取戦に続きコマツをターゲットにしてセカンドボールを回収することで押し上げる狙いがありました。攻撃時はコマツが1列目、田中パウロが1.5列目のような位置で飛び出します。

前節と比べて、トップとそのサポートの役割が明確になっていました。
1トップのコマツは、ポストプレーヤーとしてつぶれ役。ターゲットマンとして飛んでくるロングボールを収めます。前節は榎本もいて、榎本ターゲットもあることでコマツの役割がボヤっとした感がありましたが、この試合ではまずコマツしか狙わない分、やりやすかったように見えました。1.5列目ははセカンドボール回収に徹し、収まったらスイッチオン、味方が上がります。

前半を通してこれが機能したことでチャンスに繋がっていた感じです。


”攻撃特化型”の弊害

先ほどは山雅の前線の役割が明確になったことを書きましたが、藤枝の守備の弱みも関係していると思います。
田中パウロを誰が捕まえるのか、が藤枝のなかで明確になっていなかったことです。ポストプレーヤーとしてのコマツには中央CBの川島が基本的にマンツーマンで付いていました。しかもサイドに流れてもある程度は付いていっていました。

それに対し、田中パウロに対しては割とフリーにしている様子でした。同様に飛び込んでくる菊井やsmdに対しても割とフリーにさせていました。

藤枝両サイドCBは正面での守備は得意そうでしたが、ワイドの守備にはやや難があって、大外まで出ていくのか出ていかないのかというシーンで、出ていかなかったりしていました。しかも攻撃時はワイドに飛び出していくことが約束となっているので、マイボールから被攻撃に切り替わった際もポジショニングが曖昧になっている印象を受けました。

藤枝のワイドの守備に難があったことから、コマツがサイドに流れる動きは非常に効果的だったと思います。先制点に繋がったシーンでは常田が左サイドに出てsmdがバックラインに降り、外山を縦ズレさせる可変をしていて、まさに藤枝がやろうとしていることをやり返してやった、という感じです。


正直いつやられてもおかしくなかったので、まず守備がよく耐えたことが素晴らしい前半でしたが、少ない攻撃でも相手の弱点を上手く突くことができていた前半でした。
簡単に言えば、藤枝は可変することで攻撃では特徴を出せていたけど、被攻撃になるとその代償でガタついてたよねってことです。だからこそ先制点による藤枝が負ったダメージはなかなかあったと思われます。


後半の展開

中断時間があり、前半は前半、後半は後半とガラッと内容が変わるかもしれなかったわけですが、蓋を開けてみると前半に引き続き、こじ開けようとする藤枝と固める山雅という構図が変わることはありませんでした。5-4-1のフォーメーションは下川を右CB、前Tを右WB、アンドゥsmdのダブルボランチを引き続き採用。
51分に菊井と外山の崩しからコマツのヘッドで2点目。その後は時間を上手く使い、藤枝を焦らしながら試合をクローズさせました。ある程度やらせてもリードを奪ってあとは固めて相手を焦らすっていう展開が一番得意ですよね。


崩しの真髄

山雅の2点目は、まさに狙い通りの崩しから生まれました。菊井と外山がサイドでお互いを追い越しながら相手を引き付けスペースを作り、オーバーラップした外山がダイレクトでクロス。複数の相手を引き付けてからクロスを上げたことで、相手はサイドに意識が向いた状態になっており、中央でコマツをマークすることができていませんでした。見事な崩しからのゴールです。

思い返せば鳥取戦では選手間の距離が遠く、クロスも相手を崩せていない状態で上げていたので、やみくもに上げている感じがあって可能性が感じられませんでした。それに比べてこの追加点は、近い距離感で回して相手を引き付け崩してからクロスを上げることができていたので、前節から変わったなと感じられたのがよかったです。
前半同様、藤枝がワイドの守備にやや難があったことも否めませんが。。


なにもさせず試合を終わらせる

後半から配置も替えて5バックで戦っていた山雅でしたが、追加点を奪うとより自陣で構えてからカウンターという狙いを強めます。山雅は5-4-1で構え、藤枝は選手交代で3-5-2に変更。ディフェンスラインと中盤のライン間が非常にコンパクトで、藤枝にシュートさえほとんど打たせませんでした。これもお互いの距離が遠く感じた前節から改善されていた部分です。

藤枝は2点のリードを許してからも基本的には足元足元に繋ぐサッカーを変えませんでした。サッカーを変えるより人を替えポジションを変えることで違いを作ろうとしていた感じです。鈴木淳を下げてからは、より早い段階でサイドの足元に付けてから更に足元に繋ぎ、それが繋がってやっと裏に出すという回し方でした。

しかし5-4でコンパクトに守る山雅の集中力は高く、サイドを突破されてもそのカバーリングでシュートまでは行かせません。CBの飛び出しで裏もケア。むしろ藤枝が組み立てのところでミスがあれば一気にカウンターへ。田中パ、そこはコマツに出してくれよ!というシーンもありました。


まとめ

藤枝自慢の可変を使った攻撃力を見事に封じ、さらに鳥取戦では見られなかった前線のはっきりした働きにサイドの追い越しもあって、耐える時間もありながらも90分を通して狙い通りのサッカーが出来ていたように思えます。
横やん不在の最後に試合でコマツくんがここまで機能したことは、いい意味でヒロシを悩ませるでしょう。さらに初先発となった田中パウロも思った以上に(?)自陣まで戻ってのチェイシングを怠らず時には奪うことも出来ていて、さらにフリーで貰う動きも巧みで存在感がありました。守備のタスクがない方が彼は活きますね。潰し屋アンドゥの状態もかなり上がっています。

相手に手ごたえを感じさせたところでひっくり返し、構えてカウンター狙い。そして試合をシャットアウト。山雅の真骨頂ともいえるサッカーだったと思います。

幾度となく笛が吹かれ試合が止まり、選手はシュートを打たれ、サポは雨に打たれのなか、耐えた先に勝利がありました。
思わぬ長丁場、お疲れ様でした。


それではまた!

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