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2024シーズンを終えて

サッカーの残酷さを痛いほど味わって2024年シーズンを終えた。今年から導入されたJ2昇格プレーオフ決勝、アウェイの富山の地で2点をリードしながら終盤に返され、さらにアディショナルタイムに同点弾を喰らい、レギュレーションにより3位の富山がJ2昇格を決めた。順位のままに年間3位が昇格するのだから順当と言えば順当だ。

昇格してうれし涙を流すまで我慢していようと思ったが、それでもさすがに悔しくて泣いた。言葉を失った。

冷たいことを言うと、まさに今年の松本山雅を象徴するような幕引きだった。そこまで負けはしないが、勝ちきれない。さらに交代選手のインパクトが弱く、逆に相手の交代選手にやられる。後半の後半にやられる。個人的には、霜田監督は選手個人の能力を高める、準備によって相手からリードを奪うことはできるものの、どこか勝負弱い印象を受けていた。


シーズンが終わった今、年間の38試合にプレーオフ2試合を足して、いくつかのデータを使って自分が受けた今シーズンの「勝負弱い」という印象がデータとして実際そうだったのか、検証してみる。


引き分けの傾向

こちらが今年の松本山雅の成績。40試合を行って、16勝14分10敗となった。終盤の5連勝までは、勝っては負けて、引き分けてを交互に繰り返すようなシーズンであった。

FootyStatsより

プレーオフの2試合を含めると、今年40試合中引き分けは14試合となった。このうち、1-1のスコアが9試合あり、22.5%と今年のなかで最も多いゲームスコアであった。
14試合の引き分けを見ると、

スコアレス:2試合
追いついた試合:5試合
追いつかれた試合:7試合

と、引き分けのうち50%が追いつかれた試合であった。つまり多くの取りこぼしをしてしまったと言える。
また追いつかれた7試合のうち5試合がアルウィンであったため、余計に追いつかれ、勝ちきれない印象を持ってしまったと言える。アウェイで追いつかれた場合はまだ割り切れなくはない。


一方、こちらが昇格を争った富山の40試合を終えての成績。

FootyStatsより

スコアレス:6試合
追いついた試合:7試合
追いつかれた試合:5試合

富山も引き分けの数は18試合とかなり多いが、うち追いつかれた試合は27%と松本と比べると少ない。もったいない引き分けが少ないのだ。

富山はシーズンを通して6敗しかしていない。ホームでは1敗しかしていないのだ。その分無失点で耐え忍んだり、リードされても追いついたりして、負けを回避し、しぶとく勝点を重ねてきたと言える。


時間帯別得失点分布

今シーズン、松本山雅は追いつかれた引き分けが多かったことについて書いてきたが、さらに終盤に失点する印象もあったので、時間帯別の失点割合を見てみる。

FootyStatsより

こちらは10分単位の失点分布。
前半に失点することは多くないが、終盤にかけて失点が多かったことがわかる。総失点数48のうち、17点が71分以降から試合終了までに喫した計算になる。

アウェイの大宮戦や、5連勝のうちの宮崎戦や沼津戦のように終盤に勝ち越しゴールを決め勝利する試合もあったが、終盤に失点して勝点を失った試合も多々あった。ホーム北九州戦、信州ダービー、金沢戦は、終盤に1点を返されて1-1で終了した試合だ。
また、アウェイ相模原やアウェイ八戸のように終盤に決勝ゴールを決められショッキングな敗戦となった試合もあった。

体力・集中力の勝負となる終盤に、リードを守り切れず勝点を落としてしまう、という印象を終盤の連勝まではずっと感じていたことである。
思えばアウェイの信州ダービーも、前半はかなりいい戦いができていたものの、終盤は押されっぱなしで、辛うじての引き分けであった。


参考までに、こちらも富山の情報を載せる。

FootyStatsより

こちらが得点分布。試合の最終盤に得点を決めている。

FootyStatsより

失点は、ほぼ後半にまんべんなくしている。


プレーオフ最終戦は、まさにこの松本と富山の傾向がそのまま出てしまったと言える。終盤に失点を喫し勝点を逃す松本山雅、終盤に得点し、0を1にする富山。

12.7の展開は、データから見れば一目瞭然であった。


交代選手が得点した試合

今シーズンを通して、交代選手で入った選手がインパクトを残さない印象があったので、交代選手による得点がどれくらいあったのかを調べてみた。以下は交代選手による得点があった試合と交代出場による得点者。

2節 野々村
11節 佐相
17節 山口
24節 村越
29節 安藤×2
33節 高井 野々村
36節 浅川

交代選手が決めた試合は計7試合9得点あり、それなりに得点しているように見える。

そこでさらに深堀りして、交代選手のゴールによって勝点を拾った(=勝った&引き分けた)試合がいくつあったのかを調べる。

2節 野々村 A琉球 90+6' 2-2 ★
11節 佐相 H富山 72' 3-1 
17節 山口 H沼津 78' 4-0
24節 村越 H相模原 90+5' 3-2 ★
29節 安藤×2 A讃岐 51'&57' 1-4
33節 高井 野々村 H鳥取 80'&87' 3-4
36節 浅川 A盛岡 74' 1-6 

となり、交代選手によるゴールで勝点を拾った試合は2試合しかなかった。逆にいうと、この2試合以外は勝っている試合でさらに得点を重ねたということである。
交代選手による得点という最もわかりやすい形での貢献がもっとあれば、負けを引き分けに、引き分けを勝ちにすることができたのかもしれない。


まとめ

あと一分二分を凌ぐことができれば、J2に行けたかもしれないと思うと、当然悔しさは残る。いけるならいきたかった。
しかし後から考えると、じゃあ胸を張ってJ2で戦えるかといえばそうでもないような気がする。ここまで述べてきたとおり、終盤の5連勝までは勝負強いチームという印象は正直持てておらず、プレーオフさえ微妙な感じだったことを忘れていない。すでに述べたが、終盤にガス欠がなく、もっと負けを引き分けに、引き分けを勝ちにすることが出来ていれば、もっと評価も結果も違っていたと思う。

ただ、残り5試合とプレーオフを通して、サポーターとクラブがひとつの目標である昇格に向けてまとまっていくあのエネルギーを感じたのは久々だった。今までの呪縛のようなものから解放されていくような感覚さえ覚えた。まさにonesoulだった。
あれがせめて自動昇格圏を争える時期、3位を争える時期からそうなっていれば、、という悔いが残る。多くの選手が霜田監督のもと戦える選手になった収穫の一方で、勝負としては、あまりにも取りこぼしが多かった。そんなシーズンだった。

これを書いている時点で、霜田監督の任期満了・下條SDの退任が決定されたので、今回の内容は今更感があるかもしれない。来年は予算的にも厳しいが、なんとか霜田監督のもと花開いた選手たちを慰留させ、今度は終盤まで落ちない走力としぶとさ、したたかさを身につけて、チームとして成熟するようになってもらいたい。この富山戦を胸に刻んで。

プレーオフではなく自動昇格をつかんで自他ともにJ2にふさわしいと思えるようなチームになって昇格してほしいと思っている。もちろん来年も応援します。


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