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あなたの隣に立つために #18



天:それじゃあ!1時間後にここ集合ね!

ひ:…グスンッ

泣くなら嫌がればよかったのにと心から思う

○:ほら、泣かないよ笑

ひ:でもっ…ちょっとこぁい…グスッ

そんなひかるは理子と麗奈のトリオ
理子もこういう系は苦手なので少し心配なところ

麗:だ、大丈夫!私が引っ張るよ!

理:…ギュッ

…とてつもなく心配だ

愛:天ちゃん怖いよ…愛季心霊系苦手…

天:安心して!何があっても私が守るから!

イケメン天は愛季とペア
天はめっぽう強いのであまり心配はいらないだろう

瞳:夏鈴さん…

夏:…頑張ろうね

実を言うと夏鈴も大の苦手だ
瞳月は愛季達に比べると大丈夫そうだが少し怖がっているようにも見える

○:じゃあ行こっか

玲:…

そんな○○は玲とのペア
玲は全く情報がないので苦手か得意かも分からない

天:電波はちゃんと使えるのは確認してるから何かあったら連絡すること、それは決まりね

もしものために電子機器が使えるかどうかは確認してある
それだけを約束事としてスタート





○:玲大丈夫?

玲:ちょっと怖いかも…

今回やってきた心霊スポットはキャンプ横にある過去に処刑場があったという王道の心霊スポット

○:にしてもキャンプ場近くにこんなところあるなんてね…

玲:なんか寒気する…

後ろをちょこちょこ着いてくる玲
離れないように距離は縮まる一方

玲:怖いから手繋いでもいい…?

○:うん、いいよ

サラサラの掌から少し冷めた体温を感じる

○:怖い?

玲:…コクンッ

○:無理しなくてもいいよ?

玲:でも○○が横にいてくれたら…大丈夫だと思う…

玲はボソッと惚れさせるようなことを言うからずるい
少しドキドキしながらも先に進んでいく

○:待って

玲:ビクッ…

ただならぬ空気を感じ取る
どうしても足が出せない不思議な感覚

○:玲…ここから先は行っちゃ行けない気がする…

玲:えっ…怖がらせないでよ…

○:本当にこの先は行けない気がする

玲:…行ってみよう?

○:えっ…いやほんとに

玲:行ってみよう…

何かに誘われるように手を引かれる
先程までの様子とは違いどんどん先に進んでいく

○:玲!止まって!

玲:行ってみよう…行ってみよう…!

○:玲っ!

腕を引き抱きしめる形になる
ようやく足が止まった

○:どうしたのさ!

玲:…

○:演技ならタチ悪いよ…?

玲:…

何も答えることなく体の力が抜けていく
○○の方に倒れ込むように目を瞑る

○:玲…!玲!

玲:何があったの…?私…どうしちゃったんだろ…

震えながら目を潤ませている
どうやら記憶は無い模様

○:引き返そう、ちょっと深入りしすぎた

玲:う、うんっ…ウルウル

○:大丈夫だよ、怖かったね

自分の身に何が起きたかも分かっておらず
パニックからなのか涙がこぼれる
そんな玲を支えながらその場から引き返した

あとから地図を確認した際、あの道の先には実際に処刑を行っていた場所があり、立ち入り禁止の場所にもなっていた





○:大丈夫大丈夫 ナデナデ

玲:…

集合場所付近まで戻ってきた
この状態の玲をあの場に留めておくのはあまりにも可哀想だ

○:今日はもうここまでにしよっか

玲:…グスンッ

集合時間まではかなり時間もある
天達が帰ってくるまでずっと玲を落ち着かせていた

天:いやぁ怖かったね!笑

愛:うぅっ…グスンッ…ほんとに怖がっだぁ…

ハイテンションの天と号泣の愛季が先に帰ってきた

天:あら、早いね

○:ちょっとね…

玲:グスンッ…

○:大丈夫、怪我とかはないよ

天:そっか、○○ありがとね

玲の様子を見て察したのかそこまで詮索はされなかった

ひ:こぁい…グスンッ…

理:あははっ…笑ってたら楽しかった!

麗:心臓バクバクなんだけど…

相変わらずひかるは泣いたままだったが理子が意外と大丈夫そうだった
麗奈は泣いてはいないものの少し余裕があるようだ

○:あとは瞳月と夏鈴か…



『もう!やかましいっ!』



天:え…今の声って…

麗:絶対…



『やめてぇや!怖がらせるんあかんやろ!』



○:瞳月…笑

遅れてやってきた夏鈴と瞳月
木霊する関西弁は瞳月のものだった

瞳:ホンマに嫌や…

夏:ほんとにっ…面白すぎっ笑

ブチギレしーちゃんの横で爆笑している夏鈴
何があったらそうなるのかという状況

理:しー怒ってるじゃん笑

夏:ずっと怒ってるんだよね笑

瞳:夏鈴さんがおらんかったらしーもう号泣でした…

夏:私は瞳月ちゃんのおかげで笑わせてもらったよ笑

お腹を押えながら笑う夏鈴
みんな瞳月の意外な一面に笑いが止まらなかった




夜も深くなり、もう寝る時間

○:玲大丈夫?

玲:…

未だに玲は変わらない状況だった
既に他のメンツはそれぞれのテントに戻っている

○:1人じゃ寝れないか…

3人用テントが1つ、2人用テントが2つ、1人用テントが2つとなかなか難しい分け方となっている

玲:…

先程から服の袖をキュッと摘んで離してくれない
年下組3人は3人用、幼馴染組と麗奈で2人用テント2つを使用しておりあとは1人用テントしか残っていない

○:(とはいえ怖い体験をしたのはほんとだからな…)

高校生とはいえ心霊体験は怖いものだ
今のままの玲を1人にするのはあまりにも酷だ

○:テントおいで、一緒に寝よ?

玲:コクンッ…

大人として怖がっている子を放ったらかしにはできない
狭いテントに2人分寝袋を広げ、寝ることにした

○:狭くない?

玲:コクンッ…

○:そっか、ならよかったよ

表情は未だ固いまま
どうしたものか

玲:ねぇ○○…

○:ん?

玲:一緒の寝袋がいい…

○:でも大きさ的に入れないよ?

玲:それでもいいよ…今はくっついていたい…

○:…ちょっと待ってて

ファスナーを外すことで大きく広げられる寝袋のため、2枚どちらとも広げ1枚を敷布団、もう1枚を掛け布団にして横になることに

○:これでいい?

玲:コクンッ…

ギュッと体を密着させ微かに震えている玲
だいぶ応えたようだ

○:大丈夫だよ

玲:○○…怖いよっ…グスンッ

○:…おいで

大きく両手を広げ、力なく頭を預けてくれた玲を抱きしめる
声を漏らしながら恐怖に耐える

○:怖かったね、少し深入りしすぎたみたい

玲:ごめんね…ごめんね…

○:ちゃんと止められていたらこんなことにならなかった

○:ほんとにごめんね

玲:っでも…○○がいてくれてよかった…グスンッ


真っ赤になった瞳がこちらを覗く
潤んだ瞳も相まって幼く見えてしまう


玲:○○がいなかったら…私…取り返しのつかないことになってたかもしれない…


玲:やっぱり…隣に○○がいないとっ…私ダメみたい…


○:玲…



あれは夏の暑さを感じ始める高校1年生の春頃…

──────────


『私…○○君が好き…!』

『ずっと…隣にいたい…』


「…ごめん、玲ちゃんの想いには応えられない」


『それなら友達としてでも…傍にいさせて?』


──────────



玲:この先も…1人になっちゃいそうな時は…隣に○○がいて欲しい…


玲:辛いことでも…○○になら話せると思う…


体温に比例して騒がしくなる胸の鼓動
行き先を見失った手で後ろ髪を優しく撫でる


○:…


玲:ごめんね…急に…


寂しそうに俯いた玲が愛おしく思えてしまう
今すぐにでも抱きしめたい


玲:もし私も幼い頃から○○の近くにいたら…チャンスあったのかな…


細く消え入りそうな声を最後に会話は終わった
腕の中で可愛い寝息を立てる玲を今1度抱きしめて夢の世界へと飛び立った








玲:んっ…んんぅ…


気づけば朝日が顔を出し始める時間
朝焼けに空が染まっている


玲:○○…


目の前にはまだ夢の世界を浮遊している大好きな人
昨日のことはよく覚えていない


ただ、○○が慰めてくれたことは覚えている


玲:私のものになったらどれだけ幸せなんだろうな…


ないものねだりが声に出てくる
ツンツンしても起きる気配がない


玲:可愛い寝顔…笑


玲:いつもありがとう、大好きだよ


そっとバレないように頬に口付けをして○○の胸に飛び込んだ
次に目が覚めた時には暑い日中だった









ひ:2日目!

天:今日は何をするんですか夏鈴さん!

夏:今日はある程度楽しんだら帰ります

なんてざっくりした説明なんだ
でも大まかに捉えてはいる

愛:いい朝だねぇ

理:伸びても伸びてもまだ伸びる…!

そんなチーズみたいな…

瞳:麗奈さん肌綺麗すぎる…

麗:ちょっとやめてよ〜!照れちゃうからっ!

○:よく寝れた?

玲:うん、お陰様でね

心配していた玲も大丈夫そうだ
今日の予定は午後に帰ることぐらい

あとはほぼ自由時間だ

○:なにしたい?

愛:水遊びしたい!

理:確かに!川近くにあるもんね!

天:じゃあ川に直行だ〜!

愛季や理子よりもはしゃいでいる天
いの一番先に駆け出す

夏:タオルも持たずに…笑

ひ:まぁまぁ笑

瞳:天ちゃんさん幼く見えちゃいます笑

玲:あれが天ちゃんの通常運転だからね笑

人数分のタオルを持って天達を追いかける
途中で脱げた天のサンダルを拾い、川にたどり着く

既に3人は川の中

○:早いって笑

愛:早くおいでよ〜!

理:きゃぁっ!冷たい〜!

天:なにこれ!最高じゃん!

あまりにも楽しそうなのでひかるや瞳月も次々と川に入っていく

瞳:冷たっ!

ひ:ぴゃぁぁ〜…!

麗:水風呂より冷たい…笑

玲:でも水も澄んでるから気持ちいい…!

魚がいそうなくらい綺麗な川
水流もそこまで速くないので流される心配もない

○:長閑だね…笑

密かに持ってきた楽しみを川で冷やす

天:何黄昏てんだぁ!ビシャァッ

○:冷たっ!やったなぁ〜!笑

天:きゃぁ冷たいって!笑

愛:ひゃっ!

仕返しをしたつもりが、弾いた水は奥にいた愛季にもかかる

○:あ、ごめん笑

愛:もう怒った!みんなで○○びしょ濡れにするぞ〜!

理:にぃちゃんごめん!

瞳:○○くん覚悟っ!

一方的な攻撃になす術もなくすぐにびしょ濡れになる
ここだけの話絶対にタオルが足りないと思った

麗:あれ、○○くん何か持ってきてるじゃん

玲:あれは…

ひ:スイカだ!

持ってきたのはスイカ
少し早い夏の醍醐味、スイカ割りが今始まる

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