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あなたの隣に立つために #13



目を覚ました時には既に朝日は部屋を明るく照らしていた
理子と瞳月のいない静かな朝

○:家の中とか...片付けなきゃな...

少し頭痛が残っており、体調は良くない
今日は母が帰ってくる日
少しでも片付けておきたいところだ

○:...

朝ごはんを用意しながら思い出す
昨日の麗奈の一言


─────────


麗:私を助けてくれて…ありがとう…


─────────


○:どういう意味だったんだろ...

あの後見た顔は本当に知らない顔だった

○:もしかして麗奈も過去に戻されたとか...?

○:...いやいや、流石にそれは無いな

もしそうだとしても戻るきっかけがない
○○は恐らく車に轢かれた事が原因だろう

しかも戻された日は麗奈が転校してきた日なので同時、もしくは直後に何かしらの理由があって戻されていないと時間軸が合わないのだ

○:にしても元の世界とズレすぎだろ...

現実世界でこんなことは絶対に有り得なかった
どこをどう変えても瞳月と康希は不仲にならないし、愛季が好きだなんて言ってこない

○:いっ...

ズキズキと痛む頭
無理やり家に戻ってきたものの依然として吐き気、頭痛は止まらない

○:テストの後に病院か...嫌だな笑

無事なことを願いつつも家を出て学校に向かうことにした




○:めっちゃ晴れてる笑

綺麗な空
快晴すぎて少し暑い

天:おはよっ

○:奇遇だね笑 天おはよ

丁度向かいの家から天が出てきた

天:体調は大丈夫?

○:ちょっと頭痛いのと、吐き気かな

天:やっぱり昨日救急外来行っておくべきだったんじゃ...

確かに今思えばそうだ
どうせ行くなら早い方がいい

○:まぁ、大丈夫だよ

登校の時間が被ったため後ろから俯きがちで理子が出てくる

○:理子おはよう

理:うぅっ...にぃちゃん...

○:えっ!?朝から!?

○○を見るなり直ぐに抱きつく理子
震えながら存在を確かめるように抱きしめられる

理:にぃちゃん...にぃちゃん...ウグッ...

○:昨日は取り乱してごめんね

○:理子を守ることしか頭になかった

理:いいのっ...グスッ...にぃちゃんが生きててくれたらっ...それでいいのっ...グスンッ

何がともあれ泣かせてしまったのには変わりない
今1度抱き締め返す

○:不安なことがあったらにぃちゃんに言ってね、絶対に守ってあげるからね

理:うんっ...グスンッ...りー学校頑張るっ...

○:テストだもんね笑 頑張っておいで ナデナデ

可愛い顔が赤くならないように優しく涙を拭き取る
絶対にテストが終わったら理子を笑顔にすることを誓った○○だった

理子を見送って反対方向に歩き出す

天:瞳月ちゃんは?

○:瞳月は愛季に任せてる

○:あの時間に家に詰めかけて了承してくれた天と愛季の家族には頭が上がらないよ...

天:そりゃ...あんなボロボロになって家に来て「助けてください...」なんて言われたら断れないでしょ笑

麗奈に肩を借りながら家を訪れた○○
天の父母も愛季の父母も○○の様子を見て只事では無いと悟った故の判断だったのだ

○:病院から帰ってきたらお礼に回らないとね

天:ううん!うちは大丈夫!理子ちゃんが全部話してくれたからお礼なんかいらないよってお母さん言ってた!

天:なんならもっと頼ってもいいのにって笑

○:神様か何かなの?笑

この包容力、頼りがいのある存在が近くにいて助かった

森:2人ともおはよ

玲:ちゃんと勉強した?

○:もちろん!(天、話合わせて)

天:さすがに赤点取れないもん笑(了解!)

アイコンタクトで連携を取り、昨日のことは隠すことにした
このことを知っているのは2人以外に麗奈、理子、愛季、瞳月の4人だ

森:今回!森田ひかるちゃん自信あります!

玲:それさっきから言ってるじゃん笑

森:ホントだって!満点取れちゃうもんね!

さすがに満点は無理だろうと思っていると後ろからとてつもない足音が聞こえる

ドタドタドタッ

○:なに!?

ガシッ

夏:やっと追いついた...

麗:みんな早くない...?

森:びっくりした...来てるなら言ってよ!

肩を掴まれて振り返ると肩で息をする2人がいた
整えてきたと思われる髪も少し荒れ気味

麗:だって気づいてくれないんだもん...ハァハァ...

玲:そんなに走らなくてもいいじゃん笑

夏:朝から疲れた...

○:あははっ笑 走りすぎでしょ笑

幾らかの代償は出したものの平和な日常を感じられる今に心の底から笑顔が溢れる

玲:というか早く学校!行こ!

○:よしっ、お先にっ!

森:あ!待て!

麗:待って今走ったばっかりだから!

夏:絶対許さない...

天:かけっこ勝負だ!

テストの勉強はしてない
それでも何故か学校へ向かう足は軽快だった




学校に到着し、テストが始まる
今日は比較的楽な科目が多い
あれだけ不安そうだった天やひかるも無事に終えたようだ


キーンコーンカーンコーン


先:よし、じゃあ答案用紙回収するぞ〜、後ろから回せ〜

教室内の声は安堵の声と不安の声が半々ぐらいだ

天:ねぇ○○できた!

森:私も!最後のところ○○が教えてくれたやつそのままだった!

○:おぉ〜、よかったよかった笑  麗奈は?

麗:多分満点...

森:えぇ!?満点!?

あの麗奈がまさかの満点というのだ
確かに教えていても飲み込みが早かったので取れていても不思議では無い

○:まじ...?笑

天:いけるよ今回!私たち上位いける!

子供のようにはしゃぐ天
玲と夏鈴に関しては心配していない

先:じゃあ今日は終わりだから寄り道しないで家で勉強しろよ〜

答案用紙を持って教室を出ていく
騒がしくなってきた学校内、少し頭に響いてくる

○:いててっ...

天:およ、大丈夫?

森:ん?○○頭痛?

○:そ、そうなの!あはは...笑(あっぶねぇ...バレるバレる)

麗:...

麗奈からの冷たい視線が刺さる

○:じゃあ理子も早く帰ってくるから先帰るね

森:うん!また明日ねっ

麗:夏鈴ちゃん迎えに行こっと

ひかると麗奈は玲と夏鈴を迎えに行った
残った天が○○の前に立ち塞がった

○:ん?何?

天:どうやって病院いくの?

○:え?歩いて行くしかないでしょ笑

天:ダメっ!お母さんに頼んで車出してもらうから私の家来て!

○:はぁ!?

別に歩けない訳じゃない
天にとっては1人で行かせるのが心配なのだろう
...過保護すぎやしないか?

○:さすがに申し訳ないよ

天:いいから!理子ちゃんも1回家帰ってくるから!

○:いや...でも...

天:精神的に不安定でもテスト頑張った理子ちゃん1人にするの?

○:...






○:お邪魔します...

天母:○○大丈夫なの!?

○:大丈夫です...笑

そんな事言われたら断れないだろうが
1番先に理子を愛でたいので黙って従うことにした

天:それで今日病院行くらしくて、送って行ってあげてほしいの

○:いや本当に大丈夫なんで...

天母:確かに今○○のお母さん泊まりの仕事だもんね...うん!送って行くよ!

やはり天の母は神様だったようだ
直ぐに鍵を持って向かう準備をしてくれている

○:申し訳ないな...

天:いいのいいの!こういう時は助け合いだから!


ピンポーン


天:理子ちゃん帰ってきたんじゃない?

出てこいと言うので玄関に向かった
ドアを開けるとうちの可愛い天使がいた

○:おかえり理子 ギュッ

理:んっ...にぃちゃん急にハグされたらびっくりするから笑

何故だろう
昨日から理子が可愛くて仕方ない
昨日からというか常に可愛すぎるのだ

天:シスコンがっ!って言いたいけど...理子ちゃん可愛すぎてシスコンにもなるわ笑

○:テスト出来た?

理:うんっ!しーと愛季とやったところ出たから助かった!

○:そっかそっか、よく頑張ったね ナデナデ

理:へへっ...りー頑張った...///

理子を愛でていると準備が出来たようだ

天母:○○行くよ

○:すいません、じゃあ理子は天と待っててね

理:にぃちゃん大丈夫だよね...?

先程までの喜んでいた様子はなく、今にも泣き出しそうなほどに心配しているようだ

○:大丈夫だよ笑 軽く診察受けるだけだから

天:理子ちゃん一緒に待ってよ?

理:うん...ちゃんと帰ってきてね...?

○:はぁ...可愛すぎる

最後に力いっぱい抱きしめて病院に向かった
待ち時間も天から理子の様子が送られてくる

○:まぁ軽い脳震盪だろうな...

天母:顎だっけ?

○:そうですね、グーでバコーンって...笑

天母:笑えないから

○:すいません...

さすが親子だ
恐らく天だったとしても同じ反応だろう


「遠藤さーん、2番の診察室どうぞー」


○:じゃあ行ってきます

天母:ちゃんと聞いてくるのよ?

無駄に綺麗な診察室の扉を引いた






瞳:...

愛:しー?大丈夫?

瞳:私は大丈夫...でも...

テストが終わって帰っても、ずっとこの様子だ
愛季の家に帰ってきたが肝心の○○がいない

愛:○○なら大丈夫だよ、そんな簡単にやられたりしないもん

瞳:違うの...なんか嫌な予感っていうかなんていうか...

瞳:もしかしたらとか有り得そうじゃん...

愛:や、やめてよ...

こんなことを言う瞳月も珍しい
普段から基本的に「なんとかなる!」という感じだからこそ違和感があった

愛母:みんな○○が大好きなのね笑

瞳:愛季のお母さんごめんなさい...長居しちゃって...

愛母:ううん、愛季が普段○○にお世話になってるからこういう時に助けてあげないとね!

愛:お世話になってないから!///

愛母:はいはい笑

?:そろそろ○○兄ちゃんに会いたいな〜

愛母:宗汰も○○好きだからね笑

愛季とは3つ離れた弟の宗汰
宗汰もまた○○が大好きで昔はよく愛季と取り合っていた
しかし本命は夏鈴のようで、夏鈴の前では常に顔が赤いらしい

瞳:○○くん今どこにいるんだろ...

愛:病院?って言ってたけど...

瞳:りーなら何か知ってるかな...?

愛:不安なら聞きに行く?

愛季の家から天の家もそう遠くない
故にLINEやらインスタよりも家に行く方が早い

瞳:...

愛:多分天ちゃんもいるから家行っちゃお!

宗:俺はいいや

愛:ほんと?天ちゃんに会わなくていいの?

宗:俺は夏鈴ちゃん一筋だからねっ!

可愛くドヤ顔する宗汰
吹き出した愛季をペチペチ叩いたのは言うまでもない



というわけで天の家にやってきた2人
インターホンを押すと直ぐに天が出る

天:いらっしゃい!どした?

愛:しーがずっと○○の心配してるから連れてきた

瞳:天ちゃんさんごめんなさい...

来てしまったものの少し申し訳なさがあるらしい

天:瞳月ちゃんも可愛いね〜笑 ナデナデ

瞳:...///

俯く瞳月を撫でて家に招き入れる

天:私も正直心配だから気持ちはわかるよ

理:しーと愛季来たの?

理子も何となく感じてはいたのか驚きもしなかった
年下組がちょこんと3人並んでソファに腰をかける

天:なんか置物みたい笑 可愛いぃ〜!

写真会が始まったが3人はそれどころじゃない
すると天のスマホがなる

天:お、○○だ

直ぐに通話ボタンを押す

天:もしもし、どうだった?

○:特に問題はないってさ、でもよくすぐに動けたねって笑

診察の結果は軽い脳震盪
しかし殴られた直後の症状を話したところ意識を失ってもおかしくなかったらしい
それほどの威力があの拳にはあったのだ

○:吐き気も伴ってるならしばらく安静だねって

天:とりあえず死んじゃうとかはない?

○:うん、明日からも学校いけるよ

理:よかった...グスッ...

瞳:あの時の○○くんっ...倒れちゃいそうだったから...グスンッ...

安堵のあまり理子と瞳月が泣き始める
真ん中の愛季が焦って慰め始める

天:あ〜あ、○○理子ちゃんと瞳月ちゃん泣かせた〜

○:え、なんで!?

天:帰ってきたら分かるかもね笑

○:というか2人もカウンセリングあるからね?

愛:えっとそのことなんだけど...

どうやら学校に常駐するスクールカウンセラーの方が一般のカウンセリングも行えるため、担任と相談した結果学校にてカウンセリングを行っていく方針になったらしい

○:そうなの?それなら安心だ...

愛:だから今日からまた理子と瞳月をよろしくね?

○:うん!任せて!

これで本当の意味で日常が戻ってきた

理:にぃち”ゃん...グスッ...早く帰って”きて...グスンッ...

瞳:ぎゅーして...グスッ...○○くん感じないと死んじゃうっ...グスンッ

○:早く帰った方が良さそう...笑

電話を切り、車に乗り込む○○
既にエンジンはかかっている

天母:泣かれた?笑

○:理子と瞳月に...笑

天母:あらあらモテモテなのね笑

○:妹ですから笑

天母:でも瞳月ちゃんもいい男見つけたわね、○○よりしっかりしてる男の人なんてパパぐらいだよ笑

天の父も朗らかで優しい人
あの人には絶対に叶わないと昔から思っていた

天母:怒られる前に帰ろっか笑

○:運転お願いします笑

天の母が運転する車は自宅へと進み始めた

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