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あなたの隣に立つために #5



何とか体育の授業を終え、教室に戻ってくる

○:康希どこだ...

瞳月から預かったものを渡そうにも康希の姿が見当たらない
いつもならもう戻ってきているはず

○:どこいったかな

天:いやぁ〜白熱したね!

ひ:意外と麗奈スポーツできるんだね!

麗:意外ってひどいっ!

天達も体育を終えて戻ってくる
その後ろには康希がいた

○:あ、いた!

康:ええっ...なに...?笑

○:これ!瞳...じゃなくて妹さんが康希にって!

康:あぁ...これね笑

渡した袋を開けることなく受け取る
だいぶ硬いものなので辞書かなんかだろう

康:あれ?瞳月と面識あったっけ?

○:いや?

それもそう
だってあと1週間後のテスト勉強の日に初めて会うから

○:妹さんに確認したら康希の妹だって言ってたからさ

康:なるほどね...笑

ちなみに瞳月と康希は大の仲良し
理子と○○と同じかそれ以上に仲がいいのだ

康:...

○:ん?どした?なんか顔つき怖いよ?

康:...ううん、なんでもないよ笑

見たこともない顔に少し違和感を覚える
もしやこの世界線の康希は少し違う性格なのだろうか

○:そっか!じゃあ渡したからね!

康:おう!さんきゅ!

無事ミッションコンプリート
あとは退屈な授業をやり過ごすだけ

○:次は数学か...

天:嫌だぁ〜!数学嫌いだもん!

ひ:今に始まったものじゃないでしょ笑

麗:でもテストあるから頑張らないと!

○:ちなみにまだテスト範囲終わってないからね?

天:○○助けてよ〜!

○:自力で頑張れー

助け舟を出すこともなく視線は外に向く
授業が始まっても何となく受ける気にならなかった

○:...

康希についての違和感だ

よく考えてみれば瞳月の性格上、礼儀が正しく、初対面でも打ち解けやすい性格だったはずだ
つまり俺が知ってる兄妹関係ではない可能性が高い

○:もしかして...不仲...?

そう考えるのも辻褄が合う
瞳月の話が出た途端に顔色が変わった
瞳月は瞳月で兄の名前を恐る恐る呼んでいた気がする

○:...ブンブンッ

いやいや流石にそんなわけないって
あの兄妹が?無い無い

○:...

でももし仮にそうだとしたら瞳月の反応的に...

─────

○:お兄ちゃん名前は?

瞳:山下康希です…

─────

早く動き出さなきゃまずいかもしれない

『おい○○〜聞いてんのか〜』

○:はい、聞いてます

『じゃあちゃんと板書しろ〜』

○:すいません

急いでルーズリーフを取りだし作戦を練ることにした




試行錯誤を繰り返し、ようやく納得した時にはもう午後の授業も全部費やしており周りの生徒たちも帰る準備をしていた

○:あれ?もう学校終わり?

天:すごい形相でなんか書いてたけど...何?

スクールバッグを片手に天達が机の周りに集まる

ひ:うぉ...字がびっしり...

麗:もしかして...病んでる?

○:違うわ!毎日楽しんでますから!

このことは3人には言えない
3人が瞳月と知り合ったのは俺と同じ1週間後
麗奈の時のように俺が一方的に知っていたらまた怪しまれる可能性がある

○:これは今回のテスト勉強の進め方を紙にまとめたの

これで誤魔化せるか...?

天:もしかして私たちの!?

ひ:さっすが!○○頼りになる!

麗:これで私達も高得点間違いなしだね!

さすが見込んだだけある

○:じゃあ帰ろっか

天:今日近くにクレープ屋さんできたからそこ行こうよ!

ひ:あ!昨日夏鈴と行った!超おいしかった!

天:いいなぁ...よし!直行だ!

麗:おぉ〜!

ひ:○○は?

○:俺はいいや

流れに沿わない発言
天もひかるもムスッとした表情になる

天:行こうよ

○:俺やる事あるからさ...ごめん!

ひ:ほんとかぁ〜?

ヤンキーどころがヤバめの輩の詰め方をされる
眉間に皺が寄っているどころの話では無い

○:いやほんとに...マジでごめん

麗:仕方ないよ!○○くんにも色々あるんでしょ?

○:うん...

天:...行こ、ひかる

ひ:あ!ちょっと天...

教室から逃げるように走っていく天
ひかるも止めようとするが出ていってしまった

○:ひかる...ごめん頼んだ...

ひ:ううん、無理に頼んでごめんね?天は任せて

麗:天ちゃん...

○:大丈夫だよ麗奈

ひ:天はみんなで楽しみたいタイプだから誰かを仲間はずれにしたくないだけなの...笑

○:麗奈が来る前は夏鈴と玲を含めた5人で毎日のように遊んでたからね笑

人との繋がりを大事にしている天だからこそ、少し頑固なところがあるのだ

○:じゃあごめん、先に帰るね

ひ:気をつけてね〜

麗:また明日〜





天:○○のバカ...なんなの...

『あれ?山﨑さん今帰り?』

天:山下くん...?

康:暇ならどっか遊びに行かない?






○○は今日から作戦を決行するためにある人物の元に向かっていた

○:着いた!

ピンポーン

トタトタと可愛い足音が家の中から聞こえてくる

愛:はーい!って○○じゃん!

○:お邪魔しても大丈夫?

愛:もちろん!なんなら婚姻届持ってきてくれても

○:持ってくるわけないでしょうが

まだ親御さんは帰っておらず、学校帰りの愛季だけがいた

○:それで早速なんだけど...

愛:珍しいね○○がお願いなんて

○:山下って...知ってる?

愛:え〜っと...どの山下?

確かに同じ学校にもたくさんの山下がいる
ピンポイントで瞳月と分かるヒントがあれば...

○:えっと...お兄ちゃんがいる山下

愛:私と同い年?

○:多分...ちなみにお兄ちゃんの名前康希ね

刹那、愛季の顔が強ばった

愛:康希...○○康希と仲良いの?

恐らく仲良いと答えれば追い出されかねない
○○の予想は的中したようだ

○:いや、ただのクラスメイトだよ

愛:康希...私が1番嫌いな人だよ...

○:何かあったの?今日妹さんが忘れ物?届けに学校来てたんだけどさ

愛:え!?しーが!?

○:しー...って名前なの?

愛:脅されてるのかな...名前聞くことも言うことも怯えて言えないのに...

怯えてる...
なるほどそういう事か
礼儀が正しいが故に名前を言わなければならない状況を俺が作ってしまったのか

○:詳しく聞かせてくれないか

愛:ごめん...いくら○○でも

○:今日瞳月ちゃんにあって違和感があったんだ

○:打ち解けやすいはずなのにどこか雰囲気が暗かったというか...とにかく何か隠しているような感じもあったんだ

○:そして愛季に聞いてみたら...って感じで

○:心配なんだよ、瞳月ちゃんが!

愛:しーに会ったことないのになんで名前も明るい性格っていうのも分かるの...?ちょっと怖いかも...

またやってしまった
熱くなるとついつい知っている情報を口にしてしまう癖を何とか直さなければ

○:えっと...まぁその...とにかく!愛季も瞳月ちゃんが苦しんでるところは見たくないでしょ?

愛:当たり前だよ!しー毎日家に帰る時泣いてるんだから...何とかしてあげないと!

○:任せて、絶対に瞳月ちゃんを助ける

愛:うん!あとりーもいればもっと動きやすくなるかも!

そうだ理子も同じ学校だ
なんだ...理子に頼めばよかった...じゃなくて!愛季にまずは怪しまれないように瞳月との距離を縮めないと

○:じゃあとりあえず会わないとだな...

愛:○○明日暇?

○:放課後は大丈夫だよ

愛:しーは康希に外出禁止されてるから帰り道で会うしかない、それか誰かが康希を連れ出して家に帰るのを遅らせるかだね

○:後者は厳しいものがあるな...康希すぐ帰るから...

愛:じゃあ帰り道少しゆっくり歩くから追いついて欲しい

○:了解

愛:りーも一緒に帰るから場所は私かりーから送るね




瞳:...

ガチャン!

瞳:ビクッ

康:おい瞳月、お前ちょっと来い

瞳:ごめんなさいお兄ち...

パチンッ

瞳:っ...

康:お前忘れ物届けるのに俺の名前使わなきゃ渡せねぇのか?

康:誰が名前呼んでいいなんて言ったよ

瞳:ごめんなさい...ごめんなさい...

康:謝ってねぇで質問に答えろや!

ドスッ バチンッ

瞳:うぐっ...うぅ...グスンッ

康:泣いてねぇで答えろって、どうせお前友達もいないんだからそういうところで役に立てないとやばいよ?

瞳:うぅ...ごめんなさい...ごめんなさい...グスンッ

康:はぁ...お前もうおもんないわ、出てけ




作戦も決まり翌日
誰よりも早く教室を出た

天:早っ!

ひ:昨日から変だね...笑

麗:○○...無理してないかな

天:え?

麗:多分○○は今結構踏み切ったことしようとしてる気がする...

ひ:私もそう思うんだよね、あの○○はなりふり構わず何かしようとしてる顔だもん

ひかるも麗奈も薄々気づいていた
断ることがまず無い○○
しかも天の誘いを断わっているのだ

天:○○...危ないことしてなければいいけど...

康:天〜遊びに行こ〜

馴れ馴れしく天の肩に手を置く康希

ひ:山下くん...

麗:えっ...天ちゃん...

天:違うの!その...友達...だから

康:違うでしょ?俺は天の”彼氏”なんだから笑



○:愛季か理子から連絡が来るから...

しかしいつまで経っても連絡は来ない
もう待てないので電話をかけることに

○:出るかな...

しかししばらく呼び出しが続いているが応答はない

○:何かあったのかな...

とりあえず学校の方に向かって歩く
学校が近くなってくる頃...

○:あれは...!

道端で倒れている人を発見

○:大丈夫ですか...瞳月!おい!大丈夫か瞳月!

倒れていたのは瞳月だった
顔だけでなく腕にも痣があった
声掛けにも反応は無い

○:とりあえず救急車か...?いや家か!?

幸い近くに病院があるため救急車を呼ぶより走った方が早い
ぐったりとしている瞳月を抱えて病院まで走ることに

○:なんであんなところに...?

理:にぃちゃん!

愛:えっ!しー!?

恐らく瞳月がいなくて焦っていたであろう理子と愛季を発見

○:理子!愛季!この先にある病院に話してきてくれ!あとから向かう!

愛:で、でも...

○:行け!多分...瞳月危ないぞ!

愛:っ...そんな...

あまりの衝撃に膝が笑って動けない
走りたい気持ちはあるのに体がついてこない

理:愛季行くよ!

愛:りー...

理:しーを助けるって決めたんでしょ!それなら私たちから動かないと何も始まらないよ!

○:理子も愛季も俺なんかより足速いだろ!頼む!

愛:動いてよ!私の足...!

震える足
それだけ今の状況に恐怖と不安を抱えているという証拠だ

理:愛季!

○:愛季!

愛:っ...行けるっ!りー!

理:お兄ちゃん全力で走ってきてね!

愛:しーに何かあったらタダじゃ置かないから!

○:任せろ!

視界の先を走る2人の背中が頼もしく見えた
瞳月を抱きかかえて必死に走った

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