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あなたの隣に立つために #6



ピッ...ピッ...

○:...

愛:しー...

運び込んだ病院で先生に状態を診てもらった
過度な暴力による気絶状態だったらしい
骨にヒビも入っておらず命に別状は無い

○:瞳月...なんであんなところに...

理:康希...あいつだよ

愛:今日しー学校来なかったの...

○:来なかった?

愛:うん...無断欠席で先生も心配してて...

○:康希は朝から来てたけどな...

理:でもしーに暴力なんて康希ぐらいしか考えられないよ

○:もし康希だとしたら瞳月...今日ずっとあそこで倒れてたのか?

愛:流石に誰か声かけるでしょ、多分康希今日遅れてるはずだよ

そう考えないと辻褄が合わない
来ているかどうかも記憶しか頼りがないため確実性に欠ける

瞳:ん...ここは...

愛:しー!

○:ちょっと愛季優しく!

目覚めた瞳月に勢いよく抱きつく愛季
理子も安心したのか涙を流しながら手を握っている

愛:しー...もう嫌だよ...グスンッ

理:傷ついてるしーはもう見たくないの...グスンッ

瞳:ごめんね...私がもっとできる人間なら...

瞳:私にもっと行動力があれば...グスンッ

愛:あんなやつ兄じゃない!実の妹こんなにして...!

理:にぃちゃん!何とかしてよ!

○:何とかって言われてもな...

踏み切ったことをしてしまえば康希が瞳月に何をするか分からない
慎重に動く必要がある

瞳:あなたは...

○:この前ぶりだね

瞳:はぁ...はぁ...嫌だっ...!

愛:しー...?

瞳:嫌だ!やめてよ...やめて!助けてっ!

理:しー!しっかりして!

○:愛季ナースコール!

愛:わかった!

すぐにナースコールを押した
恐らくだが康希がトラウマ的存在になり拒絶反応が出たのだろう

○:瞳月...

愛:大丈夫、私達は○○を信じてるよ

理:にぃちゃんが誰かをいたぶるなんて有り得ないから

○:ごめんな...クラスが一緒なだけにこんなことに...

愛:でもこれで確定だね

○:だな、康希を何とかして瞳月から離さないと瞳月がもたない

理:こんな時に両親がいれば...

○:え?

いない訳がない
家族4人で暮らしており、おばあちゃんも家にいることもありすごく仲良くしてもらっていた

○:いないってどういうこと?

愛:しーは両親が離婚して康希と一緒に暮らすことにしたの

愛:両親も康希がいるからって言ってたんだけど...

拳をにぎりしめる愛季
康希は親の前ではいい子を演じていたんだろう

○:...瞳月を引き取る

愛:え!?

理:そんなことしたら康希が!

分かってる
自分でもそこのリスクを考えた上での判断だ

○:他の人に預けると康希が連れ戻す可能性がある

○:それなら俺が守れる方がいい

理:でもそしたらにぃちゃんが...

○:大丈夫、逆に瞳月に向く矛先が俺に向かってくれた方が助かる

愛:何かあったら私も手伝うから

○:気持ちは嬉しいけど...ここは大人に任せて

愛:高校生のくせに...

そうか、見た目高校生だった
しかし中身は大人だ
サッカーボールを蹴る探偵の子供の劣化版だ

○:それでも愛季と理子を危ない目には合わせられないよ

理:任せていいの...?

○:もちろん

愛:わかった...でも辛くなったら言ってね?できることはやりたいから...

○:ありがとね笑

力になりたくてもなれないもどかしさから俯いてしまう
そんな愛季の頭を優しく撫でる

理:ずるい!りーも!

○:張り合ってる笑

撫でろと言わんばかりに寄せられた頭をこれまた優しく撫でる

「面会の方ですかね、今落ち着いたんですけど...」

○:愛季と理子はもう少しそばにいてあげて

愛:うん、でも○○は?

○:俺がいるとまた暴れちゃうかもだし、帰るよ

理:じゃあ帰る時に連絡するね

○○がいない時にしか出来ない話もあるだろう
それに理子だけだと心配だから愛季にも残ってもらっている
...過保護すぎる兄だ




○:にしても親が離婚か...

この世界線の状態が自分の知っているものと違いすぎて理解に苦しむ

○:康希と瞳月も仲良かったのに...

康希とも仲が良かった○○は瞳月と理子を合わせた4人で遊ぶこともあった

○:全部が全部一緒じゃないってことか

この先どうしようかと歩いていると目の前から一緒にいて欲しくない2人の姿が見えた

○:嘘だろ...

咄嗟に隠れてしまう
堂々と会えないのは本性を知っているから

○:何とかして帰ろう...

早くなった鼓動で周りの音なんて耳に入らない
それでも何とか声を潜めて家までの道を進んだ





康:ねぇ今日家来ない?

天:...

康:ねぇ無視?

本当はこんな奴と一緒になんていたくない
今握られている手も今すぐに洗いたい

天:行かないよ

康:あーあ、寂しいな〜笑

顔がいいだけで中身はクズ男
でも断ったら...

康:○○に何かあってもそれは天のせいになっちゃうね笑

天:○○には手を出さないって約束じゃん!

康:って言われてもあいつのせいでおもちゃ捨てることになっちゃったし

康:天もこんなに可愛いんだからわかってるなら...少しぐらい遊んでよ笑

心底吐き気がする
でも○○のためなら...断ることなんて出来ない

天:...

康:ほら、早く家行くよ

天:っ...

○○のためにも...私が身代わりにならなきゃ







見てしまったこともあり、あれ以来気まずくなってしまった
ひかるや麗奈、夏鈴や玲に心配されたが瞳月のこともあり正面と向かって解決する暇もなかった

ひ:もうテストまであと1週間しかないよ〜!

麗:○○勉強教えてくれるって言ってたのに...

夏:玲がいるじゃん笑

玲:いいけど...真面目にやんないじゃん!笑

ひ:それは天ね?私は真面目だもんっ

夏:ひかるも大概だよ笑

ひ:なっ!失礼しちゃう!

天もあれ以来ひかる達といる時間も減っていた
遊んだとしても暑いのに長袖が多くなり、かなり派手なものを着ることもあった天は露出をゼロにした服装が増えていた


そして何より...

瞳:○○くん...

○:ん?どした?

瞳:ここ教えて欲しくて...

1週間程で○○と会話ができるようになった瞳月
○○の言った通り今は○○宅に居候という形になっている

理:あ!りーも教えて欲しい!

○:いいよ、教科書持っておいで

今のところ康希に動きは無い
両親にも事情を話した
『理子のお友達なんでしょ?なら尚更よ』と言って快く居候を了承してくれた

○:ここはね、さっき求めたこれを使って...

瞳:あ、なるほど

理:それでイコールで結んで文字式だ!

○:そう!理子さすがだね ナデナデ

理:えへへっ///

相変わらず理子を甘やかしている○○
そんなんだからシスコンとか言われるのだ

瞳:...

○:ん?どうした瞳月

瞳:いや...なんでもないよ...

スタスタと部屋に戻って言ってしまう瞳月
すると撫でていた頭がいきなり立ち上がる

○:うぉっ...!

理:しーは寂しがってるの

○:寂しがってる?

理:この前聞いたんだけど...家族がいなくなって寂しいって、夜も泣いてる声りーの部屋まで聞こえてるし...

理子と瞳月は両親の気遣いで隣の部屋、○○の部屋に聞こえなくて理子の部屋には聞こえるのも納得が行く

確かに暴力を振るわれたとはいえ離婚前の康希のことは兄として慕っていたはずだ
心の穴はかなり大きい

○:ちょっと瞳月の部屋行ってくるか

理:うん、行ってあげて欲しい

リビングに理子を残して瞳月の部屋に向かう

コンコン

○:瞳月?

瞳:○○くん...?

若干声が震えており、細い

○:入ってもいい?

瞳:...

○:入るよ?

止められもしないのでゆっくりとドアを開ける
すると布団の上に座り込み、顔を覆う瞳月がいた

○:瞳月?

瞳:...

何も言うことなく隣に腰を下ろす○○
瞳月が話し出すまでずっと待った

瞳:○○くん...

○:ん?

瞳:私...ここにいていいのかな...グスンッ

○:うん、全然問題ないよ?

瞳:私...グスッ...何も出来ないからっ...グスンッ

○:大丈夫だよ

止まることない涙が頬を伝って布団に落ちていく
寂しさもあったが申し訳なさもあるようだ

瞳:○○くんだけじゃなくて...りーとか...グスッ...お父さんお母さんにも...グスンッ

○:...

瞳:私がいたら...迷惑かけちゃ

○:瞳月、そんな心配なんていらないよ

瞳月の言葉を遮る

○:迷惑だって思ってたら居候なんてさせてないし、そもそもここまでしてないよ

瞳:...グスンッ

○:瞳月が心配だし、瞳月を守るためにやってることだから

○:何もそこまで瞳月が心配することないよ

○:同い年の理子もいるんだしもっと我儘言っても誰も怒らないよ?

瞳:○○くん...

潤んだ大きな瞳がこちらを見つめる
綺麗な涙がこぼれる前に指で拭う

○:瞳月...寂しいなら隣にいてあげるし、抱きしめて欲しいなら抱きしめてあげる

○:康希なんか忘れさせてあげるぐらい俺たち家族で瞳月を愛するよ

瞳:○○くんっ...グスッ...抱きしめて欲しい...グスンッ

涙で震える瞳月を優しく包み込む
溢れ出た感情を体全身で受け止める
その小さな背中に背負ったものを少しずつ下ろしていく

○:...ナデナデ

こんなにも我慢させていたなんて
気づいてあげられない自分が情けない

理:グスンッ...うぅ...

○:理子!?

瞳月が泣いている声を聞いたのか号泣の理子が入ってくる

理:しぃぃ!

○○とは反対側から瞳月を抱きしめる

理:私にも言ってくれればよかったに!瞳月を1人にしないためにりーがいるんだから!もっと頼ってよ!

号泣しながらなので言葉はところどころ聞き取りずらくても
気持ちは全面に伝わってくる

○:理子...

理:大好きだよ...大好き!だから我慢しないで一緒に色んなことやろうよ!

瞳:りー...グスンッ...

お互いに泣きながら抱き合う2人
そんな2人の頭を優しく撫で、包み込む

○:理子も成長したね

理:うぅ...グスンッ...だってしーが大好きだからぁ...グスンッ

○:泣きすぎだって笑

理子が言うには後日愛季に話したところ同じように号泣で瞳月を抱きしめたらしい

○:テスト勉強してこよっと...

流石に1週間前、勉強しないと

理:にぃちゃん!

瞳:今から遊んで欲しい...

○:...

理:もしかして断られちゃうかな...ウルウル

瞳:さっきもっと我儘でいいって...ウルウル

そんな目で見つめられたら断れないって
後で必死こいて勉強すればいいだけの話だ

○:...何する?

理:やった〜!しー何したい!

瞳:一緒にゲームしたい!

理:よしっ!にぃちゃん行くよ!

○:わかったわかった笑

階段を駆け下りていく2人
こんな時間がずっと続けばいいのにな




カーテンも全部閉め、部屋のドアも誰も入ってこないようにタンスや椅子で塞いだ

「ねぇ、今どこ?」

「無視?」

「いい加減にしないと○○が可哀想な目にあうよ?」

「全部天のせいだからね」

天:...

止まることないLINEの通知
その音をビクビクしながら待つなんてもう嫌だ

天:誰か...助けて...

天の体には大量の湿布が貼られており、多くの痣があちこちにあった

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