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カクレンボ 3日目



深夜、日付を過ぎた頃に4人は職員室に到着
ドアの前までは普通の職員室だ


彩:開けるよ…?


茉:まぁ大して荒れてへんやろ


奈:でも血の海とか言われたら少し戸惑うけどね…笑


い:ここに来てる時点で戸惑ってないじゃん…笑


と言いつつも中が見えない恐怖
叫ぶ可能性もある


彩:じゃあ開けるよ…?


茉:ゴクリッ


ゆっくりとドアを開ける
その隙間から一気に出てくる腐敗臭
血なまぐさい匂いが鼻を突き刺す


奈:やばいっ…ぅっ…


い:彩一旦閉めよう…!


彩:3人とも私の後ろ来て…匂い一気に出しちゃうから


そう言って一気にドアを解放する
ドア付近まで溜まっていた血溜まりも徐々に廊下に侵攻してくる


茉:あかんっ…匂いでバレへん…?


奈:匂いでバレてるなら香水つけてる女子全員見つかってるよ…それは心配しなくていいと思う…


彩:…中行ってみよ


い:うん…


勇気をだして中に入っていく
上靴で血溜まりを進んでいく
転がっている肉塊を踏まぬようにゆっくり進む


茉:っ…ここやばい


奈:気持ち悪くなってきた…


い:っ…


彩:いろはっ!


あまりのキツさにふらついてしまういろは
彩が何とか支え、倒れずに済んだ


彩:しっかりして!


茉:1回窓開けよか


奈:そうだね


茉央が窓際まで向かい、窓を開ける
まだ春先の肌寒い風が職員室に吹き込む


茉:さむっ…やっぱり夜は冷えんな〜…


奈:でも新鮮な空気だからね笑


彩:いろは…大丈夫?


い:何とか…ごめんね…


茉:こんな状況や、正直茉央達頭おかしなっても不思議じゃないからな


奈:助け合いでしょ?一緒に逃げ切ろうね!


茉央と奈央の無垢な笑みが彩の心に刺さる
そして思い出すのは咲月の悲しげな顔


彩:…


茉:ん?どないしてん


い:…戻ろう…?さっちゃんが心配だよ…


奈:お友達置いてきたの…?


彩:私のわがままで…残してきちゃったの…


茉:1人!?そら心配やな…


それでも今更戻ったところで咲月に突き放されるだけ
後悔先に立たずとはこのことだ


い:さっちゃんならわかってくれる…ちゃんと謝ろうよ…


彩:でももう遅いよ…私たちのことなんて許してくれない…


茉:ええか?彩ちゃん


窓際に腰をかけて月を見上げる茉央


茉:友達に謝るのに遅いも何も無い、謝って仲直りできるんが友達やで?


奈:カッコつけてる茉央可愛い〜笑


茉:ちょっ…今カッコイイ雰囲気出てたやん!///


奈央にいじられ、耳まで真っ赤の茉央
照れ隠しなのか急いで窓を閉める


奈:でも茉央の言う通りだよ


奈:その…さっちゃん?って子も今頃後悔してるよ


奈:生きることに必死なのは仕方ない、でも一人で乗り越えられない壁も友達がいれば乗り越えられるよ


どちらともなく目が合う奈央と茉央
この2人の間には見えない固く結ばれた絆があった


彩:…私戻る


い:私行くよ!


彩:いや、私が悪いから責任もって咲月連れてくる


茉:そうやな、監視の目は多い方がいいしな


奈:彩ちゃん気をつけてよ?


彩:うんっ…ありがとう


目に涙を溜めながら決心した彩
来た道をそろりそろりと戻ることにした


い:大丈夫かな…


奈:ふふっ…やっぱり友達は心配だよね


茉:茉央も奈央おらんかったらおかしなるもん


奈:ちょっと嫌だ〜♡…照れるってば!///


い:…(私も行けばよかった)








既に時刻は2時を回っていた
もちろん廊下は真っ暗
鬼も闇に隠れるため、気は抜けない


彩:(無事でいて…咲月…!)


慎重に全方位を確認しながら進む


”キィィィ…”


どこかの扉が開いた音
ここまで軋むドアはひとつしかない


彩:(美術室のドア…咲月が危ない!)


美術室の隣が音楽室
扉を開けたのが鬼なら絶体絶命だ


スピードを上げて階段を上る


彩:(ごめん…ごめん咲月!私の…せいで!1人にして!)


上り切ってあとは音楽室に向かうだけ
鬼が居ないかを確認しながら進む


彩:(いない…よしっ)!?


”キィィィ…”


丁度、美術室から出てきた鬼と出くわす
まさかのご対面に足が動かない


彩:いやっ…来ないで!


” … ”


彩:ごめん…ごめん咲月!1人で怖かったよね…寂しかったよね…!


どうせ最期になるならと思い、音楽室にいると思われる咲月に向けて想いを叫んだ


彩:全部私のせい…!酷いこと言ってごめんね!大好きだよっ!


” … ”


銃口と視線が合う
撃たれる、そう確信した


バンッ


咲:私の彩に何してんだ!


音楽室から飛び出した咲月が鬼を後ろから羽交い締めにする


彩:咲月!?


咲:私の親友に何してんだ!お前なんかが撃っていい相手じゃないんだよ!


” … ”


鬼も必死の抵抗
凄まじい力に咲月の腕も耐えられそうにない


彩:やめて!咲月逃げて!


咲:ごめん彩!私も素直になれなくて…!


咲:こんな時こそ助け合いでしょ!私たち3人なら絶対逃げ切れる!


彩:咲月っ…!


「友情ごっこ」と言った彩を身を呈して守る咲月
もう前が涙で見えなかった


彩:もうやめて!咲月が撃たれちゃうよ!逃げてっ!


咲:彩と仲直りできるなら…こんなの全然ヘッチャラなんだから!


” … ”


咲月の腕は限界だった
起き上がり始めた鬼、咲月を持ち上げていた


彩:咲月っ!


咲:逃げてっ!このままじゃ2人ともやられちゃう!


彩:嫌だ…咲月がいなくなるなら私が代わりにっ…!


咲月に加勢しようと鬼の方に走り出す
その距離はかなりある


咲:こっちに来たらダメ!彩!


彩:でも見捨てるなんて出来ないよ!


咲:いいのっ!私は2人を守れればそれでいいの…!


咲:だって…どこに居たってずっと親友じゃん!たとえ死んじゃったとしても心ではずっと繋がってる!


彩:咲月…っ…!


咲:だから逃げて!


葛藤した
目の前で必死に足止めをしてくれる親友
それを置いて逃げていいのか


” … ”


咲:くっ…すごい力っ!彩早く!


彩:うぅ…さっちゃん…


もう鬼は完全に立ち上がった
発砲までもう間もない


咲:あーや!大好きだよ!


彩:っ…!


咲:いろはも!大好きだよ!


彩:あぁっ…うぅっ…


拭っても拭っても溢れてくる
それと同時に3人の青い春が脳内に流れてくる


咲:2人とも!大好きだよ!


咲:走って!


彩:っ…私も大好きだよさっちゃん!


鬼が咲月を引き剥がす所までは見えていた
そこからは死に物狂いで走った


彩:ごめんね…っ…ごめんねさっちゃん…っ!


ドンッ
アガッ!


人からしてはいけない音を背に職員室まで急いだ
溢れ出た涙で袖はずぶ濡れだった




”パァァンッ…”




ガラガラッ


茉:おっ、戻ってきた


奈:あれ…お友達は?


彩:っ…私のっ…せいだっ…!


い:っ…うぅ…


先程の銃声が誰に向けられたのか
3人とも彩の表情ですぐに察してしまった


茉:…ごめんな、茉央が変なこと言わんかったらこんなことにならんかった


奈:ううん、茉央のせいじゃないよ、最後に背中押したの私だから…


い:さっちゃん…


彩:いろは…さっちゃん…2人のこと大好きって…


い:あぁ…さっち”ゃん…うぅ…なんでこんな目に…あぁっ…


職員室の空気は新しくなったはずなのに、再び重たく4人にのしかかっていた










3日目の朝
既にプレイヤー達はボロボロ
食べ物も水もないゲームほど辛いものは無い


美:△△…朝だよ…


△:んっ…美空ありがとな…


美:怖かった…!


この日は美空が見張りだったのかずっと震えながら監視していた
寝起きの△△も気持ちを察し優しく抱きしめる


△:あと7日…頑張ろう


美:私たち…助かるのかな…


腕の中から覗く不安げな眼差し
ただ背中を撫でることしか出来なかった







○:和っ…!


和:うぉっ…びっくりした…


いきなり目を開けて声を出す○○
いくらなんでも心臓に悪すぎる


○:ごめん…


和:脅かさないでよ…怖い夢でも見た?


○:いや…別に…


やけに濁す○○
夢の話くらい教えてくれてもいいものだ


和:隠すの禁止、不安なことはお互いに共有して助け合おうよ


○:ごめん…ほんとになんでもないから


和:むぅ…嫌いになるよ?


○:…妙にリアルで怖い夢だった


和:最初からそう言えばいいのに…笑 おいで


広げられた腕に包まれる
赤子をあやす様に頭を撫でながら抱きしめてくれた


○:(言えない…)


和:大丈夫大丈夫…ここから出たら2人でお出かけしようね


○:(和が…)




(目の前で撃たれる夢を見たなんて…)




”キィィィィン”


○:っ…相変わらずだな…


”おはようプレイヤー諸君!”


”3日目だよ〜!まだ半分も行ってないね〜笑”


和:ほんとにイライラする…!


”まぁ今日も鬼増やすね〜!”


”しかも今日は2体!合計4体から逃げてね〜”


ボイスチェンジャーのせいで高く耳に響く声
もはや目覚ましの代わりになる

しかし初日に比べてどこかチェンジャーの効果が薄れているような気がした


”今日のお知らせはそのくらいかな…じゃっ!今日もファイト〜!”


○:こいつまじで…!


和:絶対隠れきってこいつ殴ってやる


今日の朝の放送も終わり、また一日が始まる
外の大人たちもそろそろ焦り始める頃だろう

しかしその情報も圏外の為何も入ってこない
外からの銃声は敷地内立ち入った者への射撃と思われる
生き延びる方法は鬼に見つかることなく10日間隠れ続けるしかないようだ








中:瑛紗…寝ないと倒れるって


瑛:…


桜:気持ちはわかるよ…私だって嫌だった…


瑛紗はあの後からずっとこの様子
瞳には光は灯っていない
絶望の縁に追い込まれた目をしていた


瑛:…もう意味ない


中:何言って…


瑛:もう全部…終わったんだ…


桜:瑛紗…


無表情で流れていく涙
目は真っ赤に腫れている


中:姫奈の分まで頑張ろうよ


桜:アルノに守られた分、私が瑛紗を守る


2人で瑛紗を挟んで励ます
このままの状態では逃げようにも逃げられないのだ


中:ここもいつ入ってくるか分からない


中:すぐ動ける準備しててね


桜:うんっ!




鬼が増えたからなのか昼から銃声がかなり増えた
外からの聞こえる銃声も増えたため、外部からの侵入も試みているのだろう


美:怖いよ…なんで私たちがこんな目にっ…


△:美空…


精神的にも緊張した時間が続き、糸はもう切れる寸前
弱音が見え隠れしている


△:何か救済とかあればな…


美:私は…友達と楽しく学校生活送って…ただ△△と一緒にいたいだけなのに…


△:…


同じ体制が続いて体のあちこちが痛くなっている
それでも美空を恐怖から守るために抱きしめる時は痛みなんて感じない


△:幸い、ここにはまだ鬼は来てない


美:…


△:もし”天の声”の言うことが本当なら、ここが安置なのを信じよう


ドアへの注意は怠ったことがない
常に監視し、来た際には逃げる準備もすぐできるように打ち合わせた


それでも…


”ガッ…チャッ…”


△:!?


美:っ…!



増えた鬼から逃れるには少し難しいようだ
ゲームの難易度が急に高くなった気がした



” … ”


美:(△△っ…!)


△:(まずいな…)


まだ昼過ぎ
3日目、脱出への道に大きな壁が立ちはだかった





残り時間  7日
生存者  23名

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