見出し画像

あなたの隣に立つために #20









〇:ごめん、天と付き合うことは出来ない







天:...そうだよね、やっぱり私なんかより玲ちゃんの方がいいよね

〇:違う!聞いて欲しいんだ...

天:ごめん〇〇...

〇:待って!天!

咄嗟に腕を掴んだ
立ち上がった天も俯いたまま止まる

〇:隠し事はできないから...言うよ...

〇:”彼”について...思い出したことがあるんだ

天:思い出したって...!

〇:だから全部片付くまで答えは待って欲しい...ごめん

ふわっと香る柔軟剤の香り
普段より高めの体温に体が包まれる

天:まだ...チャンスあるって信じてもいいの...?

〇:チャンスも何も...いや、この言葉は取っておきたい

天:振られたと思った...〇〇がいないと無理だから...

声を震わせ抱きしめる力を強める天を撫でる
長年の想いが飛び出した反動もあるのだろう

〇:ごめんね、言い方が良くなかった

天:ううん...ちゃんと説明してくれたから許す

天:でもまだ足りない...スリスリ

〇:ちょ...頬擦りしないで笑

天:〇〇が悪い!天ちゃんのこと不安にさせて!

〇:もう...笑

天がここまで甘えてくるのは久々だ
こちらも歯止めが効かなくなる寸前

天:だってまた危険にさらされるんでしょ...?

〇:理子を守るためにはこれしかない

〇:理子が無事なら俺は...

天:ダメ

人差し指がその先を止めた

天:理子ちゃんも〇〇も無事でようやく一件落着なの

天:そんな考え絶対許さないから

その通りだ
以前の件でそんなこと身に持って感じていたはず

「置いていかれる方の気持ち」

愛季から言われた言葉だ

〇:ごめん、その通りだね

天:うんっ!〇〇とまだ一緒にやりたいことたくさんあるんだから居なくなられると困るもん

〇:急に素直...///

天:だから...


天:だから...今だけは天ちゃんに構って欲しいのです...///


耳元で囁かれ、こそばゆい気持ちに脳が揺れる
そのまま後ろに倒れ込み胸で天を受け止める

天:〇〇...大好き...

〇:だから答えは待っててよ笑

天:いいのっ、答え貰えるまで言い続けるから

〇:全く...笑 ナデナデ

天:んぅ...もっと撫でろ...///

〇:はいはい笑

永遠と胸に顔を埋める天を撫で続ける
気づけば可愛い寝息が聞こえてきた

〇:ふふっ...ほんとに可愛いよな

〇:この笑顔を守るためにも...失敗は許されないぞ...

やり直せるチャンスがあるなら絶対に防ぎたい出来事
そのためにも気は抜けない

天:にひひっ...〇〇...Zzz...

〇:...でも今はこの寝顔を可愛がってもいいよね

仄かに染まる頬を撫でて夢の世界に飛び立つ







〇:ふぁ〜...眠い...

あとは夏休みを待つだけ
授業を真面目に受けるのも今だけはお休み

ひ:およ?珍しいね〇〇が眠そうだなんて

麗:夜更かしでもしてたの?

〇:ちょっとね...笑

ひ:まぁ〇〇がこの感じでも仕方ないよね

天:Zzz...

天はいつも通り爆睡中

麗:そういえばお祭りって浴衣?

次に予定されているイベントはお祭り
夏休み突入の週の最初の土曜日だ

ひ:浴衣がいいよね!せっかくだもん!

麗:よしっ!気合い入れないと!

〇:そんなに気合い入れなくてもいいでしょ笑

「おーい、そこちゃんと聞いとけよ〜」

どこに付いているか分からない教師の目
黒板にチョークを走らせながら注意される

ひ:〇〇は甚平?

〇:あの甚平サイズ合うかな?

最後に着たのは高校1年生
あれから体も大きくなって...

ひ:え?去年から身長そんなに大きくなった?

〇:あ、そ、そうだね!合う合う!余裕で!

...演技が上手くなったと思っていた自分を殴りたい

〇:じゃあ甚平だね

ひ:あと!理子ちゃんも浴衣ね!絶対!

麗:すごい圧...笑

〇:分かってるって笑

小学生の理子に浴衣を着せて祭りに行った年
その年からひかるや夏鈴から念を押して理子に浴衣を着せるよう言われていた

ひ:めちゃめちゃ可愛いんだから!

麗:確かに理子ちゃんなら何着ても赤ちゃんだもんね!

赤ちゃん扱いが嫌になる年頃
そろそろ本気で嫌われるだろう

キーンコーンカーンコーン

「よし!じゃあ授業終わり〜」

〇:さて弁当弁当...あれ?

麗:天ちゃ〜ん!起きて〜!授業終わったよ〜!

天:ふぇ...んんっ...もう終わったのぉ...?

爆睡をかまし顔は跡だらけ
ノートも途中から解読不能だ

ひ:〇〇弁当忘れたの?

〇:みたい...今日昼抜きだ...

唯一の楽しみの弁当を忘れた
午後は頑張れないことが確定した

天:忘れたんじゃなくて、はい!

天から差し出された可愛い弁当

天:〇〇ママ朝早くから仕事だからうちのママが作ったの!

ひ:すごい連携取れてる笑

〇:あ、だから1回家戻ったんだ

天:待っ...!それ言ったら...!

時すでに遅し
ひかると麗奈の目が変わった

ひ:家行ってたんだね?天ちゃん?

天:ひっ...!

麗:麗奈は門前払いされるのに天ちゃんはいいんだね〇〇くん?

〇:そ、それは...

覇気を纏った2人が詰めてくる
もう逃げ場はない

ひ:少しお話しよっか

麗:〇〇くん襲われる準備しててね♡

夏:〇〇〜ご飯食べよ〜

玲:ん、なんか怒られてた感じ?

ここにまさかの助け舟
乗らない選択肢は無い

〇:た、食べよ夏鈴!うん!今すぐ食べよ!

天:玲待ってた!

夏:なんか都合良く使われてる感じするけど...まぁいいや

玲:今日はお母さんが私の好きな物でお弁当作ってくれたんだよね〜

ほのぼのとした空気がやってくる
先程までの張り詰めた空気は無い

ひ:むぅ...逃げられた...

麗:負けたぁ...ぐぬぬっ...

結局みんなで仲良く机を囲んでお昼ご飯
天母の料理も最高に美味しいのは知っている

〇:美味っ!

天:へっへん!さすが私のママ!

夏:〇〇1個貰うね

〇:あ!ちょっと!

食べかけの卵焼きが遠ざかる
なんで食べかけ?

夏:ん、美味しい

麗:夏鈴ちゃん食べかけ食べるのは違うじゃん!

しかも卵焼きは手をつけていないのもある

夏:んー、別にだよね?

〇:まぁ慣れたけど...新しいの食べればいいじゃん笑

夏:食べたら〇〇あと半分しか無かったんだよ?

〇:確かに...それは助かる?かな

幼馴染効果発動
効果:慣れ

ひ:にしても美味しそう...

玲:これは今度天ちゃんの家でお泊まりだ!

天:カモンカモン!ドンと来い!

何故こんなにも乗り気なのかは知らない
お昼を過ぎればあとは午後の授業

玲:もうこんな時間だ!早く教室戻らないと!

夏:だね

別クラスのふたりが戻っていく

ひ:そういえば聞いた?

〇:なにを?

麗:理子ちゃん!めっちゃモテてるんでしょ!?

〇:...

ひ:あ、シスコンだから嫉妬してるの?笑

違う
そんな可愛いもんじゃない

〇:...それいつ聞いたの?

麗:キャンプの時愛季ちゃんと瞳月ちゃんからだけど...

思ったより早かった
本来ならもっと後だったはず
...いや、もっと前だった気もする

〇:なんで複数の記憶があるんだよ...ボソッ

ひ:〇〇大丈夫...?

天:顔すごい怖いよ...?

顔も強ばるだろう
どっちにしろ後にも先にも理子に近づいてきた男はあいつだけだ

〇:大丈夫だよ笑

麗:あぁ〜!

ひ:ビクッ...なに笑

麗:教科書忘れたぁ〜!夏鈴ちゃんに借りなきゃ!

風のように去っていく麗奈
もちろん授業も間に合わず、夏鈴も置き勉はしないので教科書もゲット出来ていなかった


キーンコーンカーンコーン


「じゃあ気をつけて帰れよ〜」

長い学校を終えてあとは帰るだけ

〇:今日も疲れた...

天:〇〇今日もお家行っていい?

〇:母さんもいないしいいよ

天:やった!じゃあこのまま行くね!

ドタドタドタ

夏:ちょっと待った!

恐らく帰りのSHRを終えてすぐに走ってきただろう夏鈴
髪が少し乱れている

ひ:焦りすぎだって笑

夏:私と玲も行く

麗:ずるい!じゃあ麗奈も!

天:私と〇〇の時間邪魔しないで!

玲:まだ天ちゃんのじゃないよ?

天:っ...

その通りだ
まだ付き合ってもいなければキスをしている玲の方が1歩リードといった感じだ

〇:まぁまぁ...笑

天:でも玲ちゃんまだ〇〇と寝たことないじゃん

玲:ギクッ...で、でもキャンプの時に寝たもん!

天:まだ私のじゃないけど...それでもっ...あだっ!

〇:いい加減にしなさいっ

軽く頭をチョップし天を止める
このままでは2人が険悪な仲になりかねない

ひ:みんな仲良しがいいよね

麗:〇〇のことはみんな好きだから2人のだけじゃないもん!

夏:結局は〇〇が決めることだしね笑

目をそらしてはいけない事実
いずれは誰かを選ばなきゃいけない
本当に自分なんかが選んでいいのだろうか

〇:決めるって...やめてよ笑

天:とにかくっ!今日は天ちゃんの日!

ひ:黙って引き下がる訳には!

麗:いかないんですよ!

ピコンッ


瞳L:〇〇くんもうお家?


〇:?瞳月からだ

もう学校が終わったのか帰宅途中のようだ


〇L:まだ学校だよ

〇L:今から帰るけどどうした?

瞳L:この前言ってた2人きりのデートのやつ...///


そんなことも確かにあった気がする
まさか...今日使うつもりかこのお嬢様


〇:今日か...

天:ん?どうしたの?

〇:瞳月からのお願いだから今日はごめん

麗:瞳月ちゃんのお願い?

〇:かくかくしかじかで...

夏:それなら仕方ない

玲:別の日にしよっか

今日はやけに聞き分けがいい
いつもなら駄々こねるのに

〇:じゃあまた明日

天:じゃあねっ!

ひ:気をつけてね〜!

待たせるのも悪いので急いで帰る
しかしまさか瞳月が最初とは

〇:何するんだろ...

ガチャンッ

〇:ただいま〜

瞳:おかえりっ///

ギュゥッ

お出迎えは熱い抱擁
勢いトッピング付き

〇:飛びついたら危ないよ笑

瞳:〇〇くん遅いねんもん...///スリスリ

〇:今日は甘えん坊しーちゃんなのかな?笑 ナデナデ

瞳:抱っこ...///

甘えん坊というか赤ちゃんですね
赤ん坊しーちゃんです

〇:よいしょ...軽すぎ笑

瞳:だって重なったら〇〇くん抱っこしてくれんくなるやろ...?

〇:まず抱っこしません

瞳:ふぇぇ...してくれないんっ...?ウルウル

〇:...

とてつもなくこちらの調子が崩される
瞳月にぶりっ子というか...可愛いに特化させたら死人出るぞ

〇:とりあえず着替えさせて笑

瞳:しーも〇〇くんのお部屋行くっ

腕にしがみついた赤ちゃんをそのままに部屋に向かう
とてつもなく軽いので普通に歩いているのと変わらない

〇:あの...着替えるから

瞳:...///

〇:...本気ですか?

瞳:...コクッ///

背に腹はかえられぬ
男を見せる時だ

〇:じゃあ後ろ向いてて

瞳:〇〇くんの...///

〇:絶対見ちゃダメだからね!

瞳:わ、分かっとるよ.../// モジモジ

絶対見るやん
後ろ姿からしてもう振り向きそうだ
まぁそんなことしてる間にも着替えたんですけどね

〇:よし、じゃあ何する?

瞳:えぇっ!もう着替えたん!?

〇:そんなに時間かからないでしょ笑

瞳:んもぅ...〇〇くんの裸見ようとしたのに...

何考えてるんですかお嬢様
そんなことしたらもう構ってあげませんよ

瞳:よしっ...着替えたなら抱っこ!

〇:おいで笑

先程よりも勢いをつけて向かってくる
ちっこい瞳月を抱き上げる

〇:ほんとに小さい笑

瞳:むっ...小さいって言わんといて!

〇:可愛いからいいじゃん笑

瞳:でもぉ...

〇:ほらリビング戻るよ

瞳:落とさんといてよ...?

〇:...もしかしたら落としちゃうかも ダッ

瞳:いややぁぁぁぁ! ガシッ











瞳:むふふっ.../// スリスリ

〇:...ナデナデ

なんだこれ
リビングに入るなりずっとこの状態

〇:...ねぇ瞳月?

瞳:〇〇くんどしたん?

キュルキュルとした瞳がこちらを覗き込む
可愛いったらありゃしない

〇:ほんとにこのままなの?

瞳:撫でてくれればしーは満足やで

〇:もっと我儘言うのかと思ったからさ...

瞳:我儘言ってもええけど...〇〇くん困らせちゃう

他の暴れん坊将軍たちの願いを聞いてきたのだぞ
瞳月の我儘くらいどうってことない

〇:最近構ってあげられてなかったしいいんだよ?

瞳:...でも〇〇くんホンマに困ってまうよ?

〇:大丈夫だって笑

瞳:じ、じゃあ...

なにを言われるか覚悟していた
しかしどこにその力が出るのかという力で押し倒される

瞳:今は...お母さんも...りーもおらん...

瞳:〇〇くんと2人っきりやで...?

〇:し、瞳月止まっ...

瞳:もうこんな機会あらへん...しーを...






瞳:大人の女性にしてくれへん...?






1cm、また1cmと距離が縮まる
鼻先が触れる
言ってしまった手前もう、後戻りは出来ない



〇:待っ...

瞳:〇〇くんの力やったらどかせるやん

両腕がソファに押し付けられ逃げることが出来ない
でも瞳月なら押し返せる

瞳:抵抗せんってことは...そういうことやろ...?

瞳:〇〇くん...大好きやで...

最後に捉えた瞳月の表情は儚くもどこか寂しさを隠していた

いいなと思ったら応援しよう!