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カクレンボ 2日目



真っ暗だった外も明るくなり始め、今日もまた一日が始まる
あれからも銃声は止まることなく夜間響き続けた


○:和…起きて…朝だよ


和:ん…○○…


2人は移動もせず、家庭科室で一日をすごした
しゃがみ込んだような体制が続く○○は腰が痛くなっていた


○:朝だよ、おはよう


和:ごめんね…私だけ寝ちゃって…


○:ううん、睡眠は取らないと倒れちゃうし、いざって言う時に走れないからね


申し訳なさそうな和を撫でて再びスイッチを入れる


和:鬼増えることとがあるのかな…?


○:うーん…なんとも言えないね



”キーンッ”



昨日と同じようなハウリング
寝不足、または寝起きの耳には優しくない


”おはようプレイヤーのみんな!”

”よく眠れたかな?笑”


○:こいつ寝てないのを知ってて…


和:…


”さて、2日目に入るんだけど…ここでみんなにいいお知らせと悪いお知らせが入りました!”

”まずはいいお知らせから!”


○:いい知らせ…?


こんな状況だ
どんなニュースであれ基本的にはいいニュースだろう


”鬼に見つからない安置を設置しました〜!”

”いぇ〜い!安置だよ安置!”


にわかに信じ難いが、このゲームに安置が出来たというのだ
こんなの罠に決まっている、そう考えるのが普通だろう


○:安置なんてあるわけないんだよな…


和:でもそれを見つけられたら撃たれないんじゃ…?


○:それを餌に動きを増やして脱落者を増やす作戦だろ


和:なるほど…○○冴えてる!


○:そりゃどうも笑


しかしまだ悪い知らせが残っている
考えられるのは鬼の増員、もしくは期間延長だろう


”じゃあ悪い方のお知らせね”

”まぁ予想はついてると思うけど鬼増やすね〜”

”しかも次の鬼は足音とかないタイプだからよろしく!”


○:!?


和:足音がないって…そんなの無理じゃん


目視でしか確認できない鬼
この存在がかなり厄介になってくる


”それだけ!じゃあ今日も頑張って隠れてね〜!”







△:美空…!美空起きろっ…!


美:んんっ…鬼来たの…?


△:それよりも厄介なことになった…!


△△は今の放送の内容をまとめて伝える
足音がないということは死角から見られたら終わりだ
部屋に隠れた場合のみ開く音がする


△:つまり部屋に隠れさせようって作戦だ


美:でも安置あるんでしょ?


△:それも恐らく誘導だ、油断させて移動したところを見つけるって感じだろうな…


美:そっか…じゃあここからあんまり動けないかもね


幸いにも学習室にはまだ誰も来ていない
だからこそ怖いところもある


△:とりあえずはここにいよう


美:うん…




安置という提案に疑いを持つプレイヤーも多いのか
昼頃まで銃声は無し、足音がない鬼も見つけられていない状況だった


桜:図書室安置だったりしないかな…


中:そう信じたいけどね…笑


こちらにもまだ動きはない
姫奈と瑛紗も一緒だ


姫:なんか思ってたよりも余裕じゃない?


中:確かに…でもあと8日でしょ?ここからキツくなってくるんだよ


瑛:ここは安置じゃなさそうだね…


突然瑛紗が言った
図書室の扉の前には鬼がいた


中:!?


姫:(てれぱんそれすぐ言ってよ!)


瑛:(ごめん…)


桜:(入ってくるかな…?)


中:(いや、入るのを躊躇してる気が…)


アルノの言う通り中々鬼は入ってこない
扉にすら手をかけていない


瑛:(あの鬼がいなくなったら移動しよう?)


姫:(でも…入ってこないんだよ?)


中:(入ってこないならここが安置の可能性がある、無闇に動く必要は無いんじゃないかな)


桜:(…瑛紗を信じてみようよ)


中:(そんなこと言っても…)


桜:(瑛紗は瑛紗なりに考えがあるはず、それなら聞いてみるのも大事だよ)


ここまで怯えて何も発言してこなかった桜
その桜が勇気を持って信じようというのならそれを断る理由もない


中:(…)


瑛:(お願い…信じて欲しい)


姫:(よしっ、動いてみよ!)


瑛:(姫奈…)


中:(そこまで言うなら信じてみよっか笑)


ということで図書室を動くことにした4人
鬼がいなくなるタイミングを見計らって動き出す


桜:場所を決めてから動こう?


中:それなら4階の面接室とかは?


面接室は3年生が入試で行われる面接の練習や、来客の際に使われたりする部屋だ
いくつか部屋はあるので全員一気にということは無い


姫:よし!そうしよう!


瑛:姫奈声大きいってば…!


姫:ごめんごめん…笑


中:今鬼いない、行くよ!


桜:うんっ!


4人は図書室を飛び出し、ひとつ上の階の面接室に走った


” … ”


出てから先程の鬼がまだ近くにいることを確認
戻ったとしてもほぼ確実に見つかる


中:(ゆっくり…足音ダメだよ?)


桜:(息がっ…苦しい…)


姫:(ここで死んでられないよ…)


瑛:(抜き足差し足…)


足音がたたないようにゆっくり階段までの距離を詰める


中:(よしっ!いけっ…)


” … ”


中:(まずい!)みんな走って!


向かいの廊下にいた鬼が急接近してくる
実弾で撃てる距離まで詰められたらゲームオーバー


桜:やだやだ!まだ終われないよ!


階段まで走っても後ろから追われるのは間違いない
そして面接室に逃げ込んでも入ってこられたらそこまでだ


中:ごめん!まさか目が合うなんて!


姫:てれぱん急いで!


瑛:っ…!


しかし、標的を見つけた鬼のスピードはとてつもなかった


中:くそっ!追いつかれる!


姫:…みんな走って!


桜:姫奈!


瑛:姫奈何してるのっ!


立ち止まって反対側を向いた姫奈
逃げる素振りもやめた


姫:ここは私が引きつける!


中:何してるの!逃げなきゃ死ぬんだよ!


姫:それでもっ!みんなで死ぬくらいなら…私が囮になる!


瑛:嫌だ…嫌だよ!なんで姫奈が犠牲にならなきゃいけないの!


姫:私後悔してたんだよ…


それは日々の学校生活のことについてだった
年頃の女の子ともなれば悪口なんてものは湧くようにでてくる


───────────


「ねぇ姫奈いつまであいつと仲良くしてるの?笑」


姫:え…?てれぱんはいい子だよ?


「でもさ〜…頭良くて顔もいいからってなんかいけ好かないんだよね〜笑」


「それな!私なんでも出来ますってオーラがプンプンしてるし笑」


姫:ちょっとやめなよ…!


「いい加減姫奈もあいつとつるむの辞めたら?笑」


───────────


姫:悔しいのに何も言い返せなかった…てれぱんに何かしてあげることも出来なかった!


姫:だからせめて…命だけは私が守る!


瑛:嫌だよ…姫奈がいなくなったらっ…私…


姫:大丈夫、桜とアルノがいるでしょ?


姫:ほらっ!早く行って!


姫奈の背中はいつもより大きく見えた
堂々と仁王立ちし、鬼を待ち構える


中:っ…!


桜:瑛紗行くよ!


瑛:嫌だっ!離して!置いていくなんて出来ないよっ!姫奈っ!姫奈ぁ…!


姫:じゃあね…てれぱん…いや、瑛紗…!


瑛:姫奈ぁぁ!!


アルノと桜に腕を引かれ、階段を昇っていく
面接室につき、1番奥の部屋に逃げ込んだ


瑛:待って…!姫奈を助けなくちゃ!行かなきゃいけないの!


中:落ち着いてって!


瑛:まだ…まだ姫奈はっ…!






” パァァンッ… ”





瑛:ぁ…あぁっ…姫…奈…っ…


桜:瑛紗…


膝から崩れ落ち、震えている瑛紗
アルノも桜もこの音が何を示したのかはすぐに分かった


中:姫奈のためにもこのゲーム負けられないよ…!


桜:瑛紗…辛いのはわかるよ…


桜:でも姫奈があの判断をしたのは瑛紗のためなの…


桜:姫奈の想い、受け取ってあげて


瑛:うぅ…姫奈ぁ…


自らを犠牲に他を助ける
残された側にとっては悔しい以外の何物でもない
3人は姫奈の分までという思いが強くなっていた





茉:あかんな…今日もここで寝ることになってまう…


奈:でも鬼増えたからね…無闇に動けないよ


なおまおコンビはあのまま剣道部の部室で寝ることになった
特に鬼が来る気配もなかったので動くこともなかった
しかし、2日目は厳しいものがあった


茉:よくよく考えたら体育館とかって追い詰められたら終わりちゃう?


奈:確かに…校舎戻った方が逃げ道増えそうだね…


茉:って言ってもなぁ…動くには少しリスク高すぎひんか?


現在鬼は2体
移動するなら早めの方がいい


奈:でも増える一方なら少ないうちに移動した方がいいんじゃない?


茉:でも見つかってもうたらそこでバーンっ、人生もゲームオーバーやて


奈:う〜ん…どうしたらいいんだろ…


茉:…


2人して顎に手を置いて悩む
あまりいい作戦が思いつかない


茉:待って…確か職員室って体育館出て真っ直ぐ走ったらあるやんな?


奈:え?あ〜…うんうん、あるね


茉:もう先生方やられてるならもう職員室に戻ることないんちゃう?


奈:なるほど…!確かに生存者が居ないところに戻るのは時間ロスだもんね!


茉:おっしゃ…!職員室目掛けてダッシュや…!


奈:お〜!






咲:ん…寝てた…


彩:いろはごめんね…


い:ううん、ここは助け合いだから


音楽室組の3人はいろはが監視係、咲月と彩は睡眠を取った
夜も不安で眠れず、結局この時間まで仮眠をとっていた


咲:来る気配はあったの?


い:何回か足音は聞こえてた、プレイヤーの人か鬼かは分からないけど…


い:それよりも最悪なことに鬼増えるってさ…


彩:まぁ…そうだよね…


咲:予想はしてたけど…


い:それと安置、できたらしいよ


彩:ほんとっ…!


咲:罠っぽいけど?


こちら3人も怪しんでいる様子
さすがに罠だと思っているようだ


彩:でももし本当なら…行けばかくれんぼ勝てるよ!


咲:場所とかは言ってないよね?


い:それ言ったらみんなそこに行っちゃうからね笑


彩:探してみる価値はありそうじゃない?


”天の声”を信じていいのかの葛藤が始まる
こんなイカれたゲームの主催者ともなればありそうな気もする


い:でも手がかりがないよ…


咲:ここにいるのが得策じゃない?


彩:…職員室だ


い:へ…?


彩:”天の声”はもう職員室は血の海だって言ってたよね?


彩:それなら職員室に戻る意味がないよ


い:確かに…職員室に隠れられるとはいえわざわざ1階に隠れる人いなそうかも…


咲:でも階段降りる時に見つかったら?それこそ無駄だよ


彩:鬼の行動パターンとかが読めればいいんだけどね…


咲:彩本気なの…?


ここまで前向きな姿勢を見せられると本当に行くことになる
咲月には咲月なりの考えがあるらしい


彩:私は賭けてみたい、この音楽室にいてもいつ見つかるか分からない


彩:しかも追い詰められたらこの階の端にある音楽室は不利だと思うの


彩:最悪職員室が安置でなかったとしてもドアは2つある、どっちかから逃げることも出来るの


彩:だからさっちゃん…私と一緒に


咲:いかない


大親友の3人組に亀裂が入った瞬間だった
こんな状況なら仲間割れもありえる
しかし3人とも、考えは同じと信じていたが故の分裂だ


い:さっちゃん…


咲:私…死にたくないもん…!


咲:ここにいて見つかってないならここも安置の可能性がある


咲:変に賭けに出るよりここにいた方が断然いいに決まってる!


彩:…ならここにいたらいいじゃん


い:ちょっと彩…!


彩も咲月に従うつもりはない
生きられる可能性がある行動をとる、それだけだ


彩:さっちゃんとはここでお別れ、いろははどっちにするの?


い:それは…


咲:…いろはも一緒に行ったら?私なんかといてもつまんないでしょ


い:そんなこと言ってない…!ねぇなんで喧嘩するの…おかしいよ!3人で助け合おうよ!


彩:ごめん…今はそんな友情ごっこをしてる暇はないの


彩:命、かかってるよ


その言葉はずっしりと重くいろはにのしかかった
「友情ごっこ」という言葉に少し来るものがあった


い:どうしたら…どうしたらいいのっ…!


咲:…もういろはも彩について行きなよ!私は1人でいい!「友情ごっこ」なんて言われて…黙ってられないよ…!


い:うぅ…さっちゃん…


彩:いろは、どうするの?


い:っ…!


咲:…


彩:じゃあ行こっか…!じゃあね咲月


鬼が居ないことを確認して2人とも音楽室を出ていく
残された咲月は無表情のまま、頬には涙が伝っていた


咲:喧嘩なんてっ…こんな時こそ助け合いたかった…!


咲:なんで素直にっ…素直に言えないのさ…!


咲:3人で支え合えばどこでも生き延びられる…だからみんなでっ…みんなで耐えようっ…そう言えればこんなことには…








彩:…職員室どこだっけ


い:…


こちらもこちらで雰囲気は最悪
彩もどこか後悔したような表情


い:こっちだよ…


彩:…


年頃だからこそ周りにツンツンしてしまうのは仕方ない
それでも後悔してるのならばもう大人だ


彩:…ん?


体育館の方から見事に足音をたてないでこちらに走ってくる人が2人


い:プレイヤーさん?


茉:(奈央あかん!人おる!)


奈:(大丈夫あれプレイヤーの人だから!)


彩:足速い…


い:どこ向かうんだろ…笑


すると茉央と奈央は2人の前で止まる
肩で息をしながらも、音は最小限にする


茉:2人も職員室行くん?


彩:まぁ…そうですけど…


奈:私たちも行くから一緒に行こ!


い:えぇ!?


茉:ちょっ…声大きいて


奈:見つかる前に早くいくよ!


そして2人の腕を掴んで職員室に走り出す
外は既に暗くなり、2日目を終えようとしていた




残り時間  8日
生存者  27名

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