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あなたの隣に立つために #19



『いただきます!』

川辺に座ってみんなで西瓜を頂く
みずみずしい果肉が火照った体を冷ます

麗:ん〜!おいしぃ〜!

○:やっぱり夏はスイカだよね〜

玲:スイカ割りも楽しかった!

愛:しーがあんなにも三半規管が弱いなんてね〜笑

瞳:もうっ…りーが回しすぎやねん…///

割る人は順番に回し、結局最後のひかるが割った
綺麗に割れたため、等分するのも難しくはなかった

理:だってしー自信満々だったじゃん笑

ひ:『うちスイカ割りだけは得意やねん』って笑

瞳:ひかるさん!///

夏:そんなところも可愛いけどね笑 ナデナデ

瞳:…///

なんだろう
このキャンプで瞳月と夏鈴の距離が異常に近づいた気がする

ここの世界に来る前も確かに2人でたまに出かけるとも聞くし仲は良かったのだろう
ただ学生時代はこんなに仲は良くなかったはずだ

○:…

天:ん?どしたの○○?

○:あぁ…いや、なんでもないよ

天:…?変なの笑 モグモグ

ひとつが大きくてもこの人数で分ければすぐ無くなる
濡れた服もお日様のおかげで乾いてきた

愛:明日からまた学校か〜…

理:ずっとこのままがいいな〜…

ひ:でももうすぐ夏休みだし!頑張ろ!

天:夏休みもみんなでお出かけだね!

珍しく天とひかるが学校に前向きだ
確かにテストが終わればあとは学生のオアシス、夏休みに突入するのを待つだけ

夏:夏祭りとか花火大会もあるもんね

麗:楽しそう!

瞳:そうなんですね…

○:あれ?瞳月行ったことなかったの?

瞳:いつもお兄ちゃんに止められてたから…

ひ:そっか…じゃあ私達がお祭りの楽しみ方教えてあげないと!

天:そうと決まれば早速予定立てよ!

○○そっちのけでどんどん話が進んでいく
いつ予定が空いてるとかではなく、この日は空けとけと言わんばかりにグイグイくる

愛:あ、そういえば

○:この日なんかあるの?

愛:違う違う

スマホを取り出し何かを探している

○:?

愛:○○に会ってみたいって子がいてね…えっと…

○:俺に?笑

理:あ!こんなぎでしょ!

愛:そうそう!



ようやく会えるタイミングになったようだ
○○にとっての”キーパーソン”に




○:こん…なぎ…?笑

愛:小島凪紗ちゃん!すっごい可愛いんだから!

そんなことは重々承知だ
どれだけ一緒に出かけたと思ってる

○:そうなんだ笑

ここに来て自分の演技力が上がってきたと思う

愛:あったあった!この子!

何度も見てきた顔がそこにはあった
幼くもどこか大人っぽい凪紗

理:こんなぎににぃちゃんの写真見せた時乙女の顔してたもん!

愛:だから愛季の婚約者だよ〜って言っといた!

○:違うでしょうが笑

天:ちょっとそこ!

輪になって予定を立てていた天がこちらを見る

ひ:みんなの予定聞くんだから参加して!

夏:じゃないと無理やり予定入れちゃうよ?

もともと無理やりでしょうが
と言える訳もなく大人しく参加することになった

○:ふぁ…っ!

ゆっくり伸びてマイナスイオンを体全体に行き渡らせる
最近こんなゆっくりできなかったせいなのかすごく幸せを感じる

天:えっと…じゃあこれで!

夏:グループ送っておいたから確認しておいてね〜

急遽できたグループに予定表が貼り出される

愛:今から楽しみだね!

瞳:○○くんと人生初めてのお祭り…!

麗:ちょっとちょっと!私たちもいるからね!笑

玲:瞳月ちゃん大胆だね〜笑

瞳:そ、そんなんちゃいますよ…///

瞳月よ、動揺し過ぎて訛りが出てるぞ
いつの間にか太陽は一番高い位置に

○:そろそろ帰らないとね

ひ:楽しかったね!

理:またみんなで来たい!

天:かわいぃ〜!ナデナデ

ニコニコ笑顔でバンザイする理子を愛でる天
そんな話をしているうちにそれぞれの親達が迎えに来る

○:じゃあまた明日だね

夏:寝坊しないでよ?

○:それは俺に言うセリフじゃない笑

玲:確かに笑

目線の先には天とひかる
視線に気づきもせずにイチャイチャしている

○:まぁ寝坊したら起こしに行くしかないよ笑

夏:ひかる寝起き怖いから嫌なんだよね…

玲:るんちゃんが暴れたら家壊れるでしょ笑

片付けも終わりバイバイの時間

○:理子〜!瞳月〜!帰るよ〜!

理:今行く〜!

愛:愛季も乗せて〜!

愛母:愛季はこっちだから笑

愛:ぶぅ…もうちょっと○○を感じたかったのに…

頬を膨らませ拗ねている様子
何故か隣の理子と瞳月は誇った顔

○:また遊びにおいで

愛:絶対だよ!約束だから!

○:そんな勢いよく言わなくても笑

愛:だって〇〇に念押しておかないとりーとしーが家入れてくれなくなるもん!

まさかそんなバカな
流石の2人でもそんなことをするわけ…

理:えっ!ダメなの!?

瞳:ぐぬぬ…他の作戦立てないと…!

するんかい
それぞれが帰路に着く中夏鈴だけ未だ残っていた

〇:夏鈴?お父さんとお母さん待ってるよ?

夏:うん

〇:?

夏:ジーッ

そんなに見つめられるほどの顔面はしていない
西瓜の種でも付いているのだろうか

〇:な、なに...?

夏:みんなは気づいてないだろうけど



「今日の朝玲ちゃんにキスされてるの、私にはバレてるよ?」



何を言い出すんだこの子は

〇:玲にキスされた?

夏:そして、もしかしたらそれに気づいた私が上書きしたかもね

〇:はぁ!?///

夏:じゃあ私はこれで

〇:ちょっ!詳しく!

夏:じゃあね〜

颯爽と車に戻って行った
帰宅途中の車内でも夏鈴の言葉が離れずにいた

瞳:~♪

〇:...

腕に抱きついてスリスリしている瞳月に目もくれない

瞳:〇〇くん元気ない...

理:忘れ物でもしたのかな...?

瞳:ねぇ〇〇くん、頭撫でてほしい

〇:...ナデナデ

心ここに在らずという感じがプンプンしている
ふくれっ面になるのは瞳月

瞳:むぅ...〇〇くんもっと!

理:もうダメ!次りーのばん!

瞳:いやだ!もっと愛情籠ってないといや!

〇母:今日も元気ね〜笑

〇父:仲がいいのはいい事だからな笑





〇:はぁ...

高校時代にひかる達の思いに気づけなかったからこそ今来る罪悪感がある

〇:でもそんな感じ全くしなかったぞ...

天しか見えてなかったということもあるのか全く気づかなかった
なんなら愛季や瞳月もあちら側だ

〇:ってことは凪紗もなのかな...?

凪紗があちら側だとかなりまずい
前の世界線でもとてつもないアピールをされていた

〇:それで天と喧嘩して...どうすりゃいいのよ...

逆に1周まわって嫌われていることにかけるしかない




ピンポーン

理:りーが出る〜!

ガチャッ

天:お、理子ちゃんさっきぶり笑

理:天ちゃん!こんな時間にどうしたの?

もう時計は22時を回っている
瞳月はもうお布団の中だ

天:〇〇いる?

理:にぃちゃんなら部屋にいると思うよ!

天:そっか!ありがとう!

〇母:あら、天ちゃん!パジャマで来たのね笑

天:こんばんは!ちょっと〇〇に用事があって笑

〇母:もし長くなりそうなら泊まっていく?

天:いえ、すぐ終わるので大丈夫です!

階段をかけ登り部屋の前
いつもの元気はない

ガチャッ...

〇:ん?

天:...

〇:え!?天!?どうしたのさ!

天:...ホントなの?

〇:...何が?

天:っ...玲ちゃんとキスしたんでしょ!

〇:はぁ?

なんで天が知っているんだ
というか本人も知らないのになんで夏鈴や天が知っている

天:誤魔化しても無駄だよ

〇:いや俺もよくわかってないんだよ...記憶にないっていうか

天:ねぇなんで?なんでキスされたの?

パワーワードすぎやしないか
なんでキスされたかなんてこっちが知りたい

〇:というかなんでそれで天が怒ってるの?

天:そ、それは...

〇:別に関係ないっちゃ関係ないじゃん

〇:こっちだって帰る途中からその事で頭いっぱいなんだよ

〇:俺だって必死に整理してるよ今

天:っ...!そんなの私だってわかってるよ!

〇:わかってないから来たんでしょ?

天:違う!わかってるもん!

〇:だからなんで怒ってるの?何がそんなに天を刺激してるのさ

ズカズカと〇〇の目の前に立つ
その顔は怒っているもののどこか悲しげな表情

〇:なに?

バチンッ

天:〇〇のバカ!もう知らないっ!

頬を捉えた右手はもう見えない
扉だけが悲しく閉まった

〇:なんなんだよ...



そのままの勢いで家に帰り、自室に直行した天
その目元には光るものがあった

天:もう嫌だ...なんで嫉妬なんかしてるの...グスンッ

勉強机の上には数枚の写真
初めて撮って貰った写真、小学校の卒業式の写真、高校の入学式の写真
全て〇〇と写っているものだった

天:〇〇の隣は私がいいの...ずっとずっと好きだった...グスンッ

天:でもみんな可愛いからっ...私なんて選んでくれないよね...グスンッ

天母:天...?

玄関の音を聞きつけて部屋にやってきた

天:お母さんっ...グスンッ

天母:ちょっと!なんで泣いてるの!?

天:お母さんっ...辛いよ...グスンッ...好きな人が他の人にキスされてるのが辛いっ...グスンッ

天母:〇〇のことね...笑

静かに天の横に腰を下ろし抱き寄せる
ゆっくり頭を撫で、落ち着かせようと試みる

天:グスンッ...〇〇がね...?玲ちゃんにキスされたんだって...グスッ

天:それで〇〇に聞きに行ったらっ...記憶にないって...グスンッ

天母:あらあら...

天:私に隠してるんだよっ...グスンッ...それでそのまま玲ちゃんと付き合っちゃうんだっ...グスッ

天母:ふふっ...笑

可愛い妄想に母も少し笑みがこぼれる
しかし天の母も〇〇とは付き合いが長い

天母:〇〇は本当に記憶にないんじゃないかな?

天:グスンッ...なんでそう思うの...?

天母:〇〇が嘘つくわけないもん

天母:天が相手なら尚更ね?

何度も喧嘩はしてきたがお互いに嘘や隠し事はしてこなかった
それを天の母は知っている

天母:〇〇が寝てる時に玲ちゃんはキスしちゃったのかな?記憶にないってことはそのタイミングくらいしかないもの

天:グスンッ...

天母:大丈夫、みんなももちろん可愛いけど天が一番可愛いんだから!お母さんが保証する!

天:ママぁ...グスンッ

天母:どうせ〇〇に強気で捲し立てて喧嘩でもしてきたんでしょ?笑

天:うんっ...

全てお見通しだと言わんばかりの笑み

天母:早いうちに謝っておいで

天母:もし長くなるなら〇〇のところ泊まらせてもらいな?〇〇のお母さんには私からお願いしておくから

天:ありがとうママっ...グスンッ

天母:ふふっ、いつでも頼っていいんだからね ナデナデ

天:私行ってくる!〇〇にちゃんと向き合う!




天母:ようやく...だね...笑




母に背中を押され再び〇〇の家の前
もう既に理子もベッドの中だ

〇母:いらっしゃい天ちゃん

天:〇〇ママさっきはごめんなさい...急に押しかけたのに挨拶もしないで...

〇母:何言ってんの笑 それもこれも全部〇〇が悪いんだからもう1回ひっぱたいてやって笑

天の母も大きな器を持った人だが〇〇の母もまた優しさの化身だった

〇母:理子と瞳月ちゃんはもう寝てるからその2人だけは起こさないであげてね?

天:うん!〇〇ママありがと!

再びやってきた扉の前
起きてる?いや、怒って出てくれないかもしれない

コンコンッ

〇:...はい

ガチャッ...

天:〇〇...

先程とは変わって机に向かっていた〇〇
その紙は以前見たものと同じものだった

〇:...

天:あ、あの...その...

〇:...お茶でいい?

天:えっ...う、うん...

1階に降り、2つのコップとお茶を手に戻ってくる
ベッドに腰を下ろしたがソワソワして仕方ない

〇:それで?何しに戻ってきたの?

少し刺がある言葉
再び涙が溢れそうになる

天:さっきはごめんなさい...急にビンタなんかして...

〇:...

天:私っ...その...

あと少し
突っかかるものが取れない

天:玲ちゃんにっ...〇〇が...

〇:...ぷっ、あははっ

天:えっ...

急に吹き出した〇〇
怖い雰囲気もどこかに消え、いつも通りの〇〇がいた

〇:あ〜面白い笑

天:私はちゃんと謝りにっ...!

〇:あのね、何年の付き合いだと思ってるの?

〇:天が勢いでビンタしちゃったことぐらいわかるって笑

天:〇〇...

すると〇〇はスマホを取りだし何やら操作する

〇:玲に聞いたよ

画面には〇〇と玲のトーク画面
そこには先程母から言われた内容と全く同じ内容が書かれてあった

〇:これでわかってくれた?

天:うぅっ...グスンッ

〇:えぇ!?なんで泣くの!

天:だって...〇〇を取られると思ってっ...

〇:取られるって物じゃないんだから笑

天:本気なのっ...〇〇のこと...〇〇のことがっ...!

肩を無理やり向き合わせる
どこか困ったような瞳

天:今回玲ちゃんが〇〇にキスしたって聞いて...私嫉妬しちゃったの...

天:変だよね...笑 恋人でも何でもない幼馴染ってだけなのに...

胸の内がすぅっと軽くなる
1度吐き出された思いの丈は止まることはない

天:ずっとずっと...小さい時から隣にいた人を誰かに渡すなんて私にはできないっ...

天:私には〇〇が必要なの...!落ち込んだ時も追い込まれた時もいつも〇〇が助けてくれた...!

天:だから次は私が支えたいの!

〇:...

天:私、〇〇のことが好き

天:ひかるにも、夏鈴にも、誰にも負けないくらい〇〇が好き

天:〇〇言ってくれたよね...なんでこの”世界”に来たのか...

天:未来のことなんて知らない、今から私と〇〇が歩んできた未来塗り替えようよ

天:〇〇、私と...










































〇:ごめん


















〇:天とは付き合えないんだ




























凪:へへっ...愛季に頼んで〇〇さんの写真もらっちゃった


凪:はぁ〜...やっぱりカッコイイ...


凪:〇〇さんが彼氏だったらな〜


凪:敵は多いみたいだから私も頑張らないとっ!








何かが動き出した
その鋭利なものは大事なものを奪っていく

しっかりと残る痕
半分近く消費した蚊取り線香が力なく落ちた

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