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あなたの隣に立つために #7



○:えっと...ここなんだっけな〜

夜な夜な机に向かい勉強している○○
ゲームに付き合い、そのままずっと一緒にいたため勉強する暇がなかった

○:高校の範囲曖昧すぎるな

教科書を片手に天を仰ぐ

○:もうこんな時間か...

時計を見ると時刻は深夜2時
良い子はお布団でねんねの時間だ

○:玲に聞いてみようかな...

真面目な玲ならまだ起きていると思い電話をかける
しかし睡眠時間だけは削らない玲、出なかった

○:さすがに無理か...笑

一か八かで夏鈴にかけることに

○:出るか...?

夏:もしもし?

○:あ、出た

テスト勉強をしていたらしく2コール目ぐらいで出た

夏:そこは多分、化学反応のところの応用だよ

○:なるほど...

夏:先生もここは絶対出すからって言ってたから確認しときな

○:おっけい...さんきゅ

無事問題も解決
夜も遅いので長話せずに切ろうとする

○:まだ勉強するの?

夏:うん、もうちょっとやろうかな

○:じゃあ頑張ってね、ありがと

夏:あ!ちょっと待って!

夏鈴にしては珍しい程の大きな声

○:声大きい!理子達起きるから...笑

夏:理子達?愛季もいるの?

○:あれ?話してなかったっけ?

夏:最近○○と話してないもん、何も知らない

確かに最近は瞳月のことで手一杯だった
知らない内にみんなと過ごす時間も短くなっていた

○:山下康希いるじゃん?

○:康希の妹の瞳月引き取ったんだよね

夏:...は?

○:えっと...色々事情があって...

夏:ねぇ○○

夏:その瞳月ちゃんって...



『康希から暴力かなんか受けてた?』



内心ドキッとした
何故ここまでドンピシャで当たるのか
冷や汗が一気に吹き出してくる

○:なんで?

夏:その...みんなには内緒ね?

夏:○○知ってるか分からないんだけど...天、山下くんと付き合ってるって...

○:...

知らないわけない
2人きりでいるところに遭遇しているからそれが確かなことぐらいわかる

夏:それで...天今おかしくなってて...

○:おかしくなってる?

夏:うん...天ってさこんな夏に長袖着るような子だったっけ?

○:絶対ないね、天は暑がりだから夏は半袖とか袖なししか着ないでしょ

夏:だよね...最近ずっと長袖着てるの

○:それと康希がどう関係してるの?

天の長袖と康希が瞳月に暴力を振るっていたことがどう関係しているのかわからなかった

夏:もしかしたら...



『瞳月ちゃんの代わりが天になってるかもしれない』



その時全ての点が繋がった

○:待って...長袖着てる理由って...!

夏:もしかしたら痣とかを隠すために着てるのかもしれない

夏:そのぐらいの理由がないとおかしいよ

夏:最近目が死んでるって言うか...なにかに怯えるようになってるの

矛先が俺ではなく他に向くという1番最悪な可能性を引いた
しかも相手は天だ

○:最悪だ...

夏:私達も何とかしようとしてるんだけど...天が「私は大丈夫だから」の一点張りなの

夏:もしかしたら何かで脅されてる可能性もあるかも

○:あいつほんとに...

込み上げてくる怒り
捕まってもいいから1度病院送りにしてもいいぐらいの怒りだ

○:わかった、ありがとう

夏:ごめん...私達が1番近くにいるのに...何も出来なくて

○:大丈夫、それを教えてくれただけ助かるよ

今はテストに集中して欲しいので「任せて」とだけ伝えて電話を切る
まだまだテスト勉強はさせて貰えないようだ

○:あのバカ...すぐ言えよ...






翌日、○○は学校ではなく天の家に来ていた
夏鈴の話では1週間前から学校も来ていないようで、先生に聞いても体調不良としか聞いていないと言われたらしい

ピンポーン

○:いるかな?

天母:あら?○○じゃない

天のお母さんが玄関を開けてくれる

○:お久しぶりです、天います?

天母:えっと...天なんだけど...

途端に顔が曇る

天母:ずっと部屋から出てこなくて...ご飯も食べてないの...

なるほど、家だけでなく部屋も出てないときたもんだ
かなりの重症、そして夏鈴の説が濃厚になってきた

○:入ってもいいですか?

天母:もちろんよ

快く家に入れてもらう
高校以来来なかった天の家、5年振りくらいに入る

○:久しぶりだな...

天母:え?つい3週間前くらいにきたじゃない笑

○:そ、そうですね!すいません急に...笑

...いい加減学べ○○

早速天の部屋に向かう
天の母が渡してくれたおにぎりを持って階段を昇っていく

コンコン

○:天?

...

○:開けてもいい?

...

内心倒れてるんじゃないかと思った
しかし微かに聞こえる物音に望みをかける

○:今日学校サボってきた笑

○:最近忙しくて全然話せてなかったからさ

そこから最近あった話、勉強をした話、理子とゲームをした話など他愛もない世間話を1人でしていた
もちろん瞳月については触れずに

○:無視してれば帰ると思ってるなら大間違いだよ

○:誰よりもしつこいの天が1番知ってるでしょ?

天が考えていることなんて大体わかる
他人に心配をかけずに笑顔を振り撒いてきたから”あんなこと”が起きたんだ

○:いつまでも待つよ

その言葉を最後に天の部屋の前に居座った
恐らく長期戦が予想される



どれくらい時間が経ったのだろうか
天のお母さんにも心配をされたが折れる訳にはいかなかった

○:...

不器用で何も出来なかった○○
それを変えるためにこの時代に戻されたんだ
今の○○にできることは天を信じることだけ

○:(そういえば...小さい頃喧嘩して謝りに来た時もこんなことあったな笑)

その時は母親にも「また今度来ようね」と言われたが、○○は負けず嫌いなのか帰ることは絶対にしたくなかった

○:(懐かしいな...笑)

思い出に浸っているとドアが軋む
恐らくドアのすぐ後ろには天がいる

○:(お腹も空いてるだろうし...てか夏鈴が言うには1週間学校行ってないんでしょ?)

○:(ガリガリになってるだろ...)

内心早く出てきて欲しいが急かすことはしなかった

ガッ...チャンッ

○:開いた...

そこには全身痣だらけ、あちこちに湿布を貼った天がいた
ご飯も食べていないためかなり細くなっている
寝不足もあるのか目の下は真っ黒だった

○:天...

天:...フラッ

力が抜けたように倒れそうになる天
すぐさま支えるように抱きかかえる

天:○○...

○:...

天:ごめんね...私のせいで...

○:何言ってんだよ...

天:私があいつを無視してるから...○○に危害が加わったんでしょ...?

話すことさえ辛そうだ

○:危害...?どういうこと?

天:隠さなくてもいいよ...ごめん...ごめんね...

錯乱状態の天
震え、涙を流す天を抱きしめるしか無かった

○:康希...あいつ...!

何とか切れないで保っていた○○の線はプチッと切れた

○:天、安心しろ

○:俺があいつを何とかする

○:ごめんな...気づいてやれなくて

天:○...○...助けてっ...

天の悲痛な叫び
どんな言葉よりも心に刺さった

天を抱きかかえ、下の階まで運ぶ
天のお母さんも涙ながらに天を抱きしめていた
そんな光景を後に、○○は学校へと向かった




○:...

時間的に放課後の時間
自分のクラスの教室に直行する

○:...

○○自身も信じられないくらいキレていた
教室に入ると帰りのSHRが終わったすぐ後だった

ガラガラッ

先:ん?○○お前何しに来た?もう学校終わったぞ?

○:...

先:お、おい!

無言で康希の元に向かう

ひ:ありゃ、○○寝坊した?

麗:いや寝坊しすぎでしょ笑

玲:ひかる〜、麗奈〜、一緒に帰ろ〜って!○○じゃん!

夏:まずいっ...!○○ストップ!

夏鈴の声も○○には届いておらず康希の元に着いてしまった

夏:ひかる!手伝って!

ひ:え、なに!?

○:...

康:○○じゃん、体調大丈夫なの?笑

○:黙れ

康:なんで怒ってんのさ笑

○:...

拳を握りしめ康希を殴ろうとした瞬間、拳が止まる
教室も悲鳴が上がっていたが一瞬無の空間ができる

○:離せって

夏:だめ、○○をそっち側に行かせないから

○:こいつを1発殴らないと気が済まないんだ

ひ:何があったのさ!○○らしくないよ!

止めたのは夏鈴とひかるだった
野生児としても名高いひかるの力はとてつもなく、○○を一瞬で康希から離す

康:ほんとに何怒ってんの?笑

○:ヘラヘラすんなよ、お前のせいで...お前のせいで...!

ひ:落ち着いて!

夏:○○、ごめん、あとは任せて

夏鈴が康希に詰寄る

夏:私たちの天を返して

康:は?

パチンッ

何が起きたのか理解するのに時間がかかった
あの夏鈴がすることとは思えなかったからだ

麗:夏鈴ちゃん...!

玲:な、何してるの!?

夏:あんたみたいな!あんたみたいなクズ男がいるからいつまでも世の中は不安で溢れてるんだ!

夏:精神的に追い込んで...挙句の果てには暴力...?人として失格だから!

康:いってぇな...お前よ

康希が夏鈴に掴みかかろうとする

ひ:夏鈴!

○:夏鈴まで汚れさせるわけねぇだろ

ひかるを振りほどいて康希を押さえ付ける
もう教室はめちゃくちゃだった

康:ぐっ...離せよ!

夏:瞳月ちゃんの話も○○から聞いた、どうしようもないクズだね

康:黙れ!俺は間違ってない!暴力?ただのおもちゃなんだから遊んで当たり前だろ!

○:いい加減にしろ!

○:お前よ...瞳月の気持ち考えたか?

康:...

○:離婚前、兄としてしっかりしていたお前を瞳月は慕ってたんだ

○:そんな妹の気持ちを踏みにじってよ...お前ほんとに兄貴かよ

理子がいるからこそ妹という存在が大きい○○
全てにおいて否定的な康希を許す訳にはいかなかった

○:その上...天を...天を!

康:あんなの新しいおもちゃに過ぎない、ちょっと遊んだだけで引きこもりやがって...!そんなボロおもちゃなんていらないんだよバーカ!

○:っ...お前!

ひ:ダメ!絶対手は出したらダメ!

先:○○やめろ!

担任が慌てて止めに入る
○○をひかるがもう一度引き剥がし、先生は康希を立ち上がらせる

○:ひかる離せ!

ひ:嫌だ!

○:こいつは許しちゃダメなんだよ!天と瞳月を苦しめたんだ!

ひ:それでも○○が殴っていい理由にならないよ!

○:っ...!

先:山下、今の話本当なんだな?

康:そうだよ、おもちゃで遊んだだけなのに...

先:来い、話をしよう

康希の肩を持って連れていく担任
標的を失った○○は怒りのぶつけ先が無くなった

ひ:どうしたの○○らしくないよ!いつだって優しかった○○が怒るのもわかるよ...でも暴力なんて振るう人じゃなかったじゃん!

ひ:嫌だよ...○○が人を殴るのなんて...私見たくないよ...

感情が迷子になっているのか泣き出してしまった

ひ:ダメだよ...私嫌だ...グスンッ

○:ごめん...ちょっと取り乱した

ようやく落ち着いた○○
玲と麗奈も駆け寄る

麗:天ちゃんと瞳月ちゃん...何かあったの?

夏:山下くん、2人に暴力振るってたの

玲:えっ...

ひ:...グスンッ

○:瞳月は今うちで居候してる、天も今日家に行ってきた

夏:暴力ってなると...警察?

麗:多分...

○:ごめんなひかる

いくら怒っていたからと言っても幼馴染を泣かせてしまったことに罪悪感を感じる○○

ひ:うぅ...○○が怒ってるの嫌だよ...グスンッ

玲:あ〜あ!るんちゃん泣かせた〜!

○:ごめんって!まじで!どうしたら許してくれる?

夏:そんなの決まってるでしょ

聞いていない夏鈴が答える
するとひかるもコクコクと頷く

夏:テスト終わったらみんなでお出かけでしょ?

○:え?

ひ:じゃないと...許さないもんっ...ウルウル

玲:それ名案!

麗:最近みんな揃ってなかったし!

夏:もちろん、天もだよ?

久々のお出かけ
急に決まってオドオドしてしまう
それでも今から楽しみが隠せないのはみんなが好きだから

○:じゃあテスト頑張らないとね!

麗:嫌だぁ!

ひ:○○助けて...ウルウル

○:ひかる潤んだ目で上目遣いは反則だよ笑

夏:みんなで勉強会だね笑

玲:○○いるなら私も楽だ!

まだ天は回復していないものの、状況がこれ以上悪くなることはないだろう
テスト勉強はようやく明日から集中できそうだ

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