あなたの隣に立つために #10
鳥のさえずりが目覚ましがわりとなり朝を告げる
理:んん...もう朝かぁ...
ウトウトしながら起き上がる理子
まだ瞳月はもちろん、他のメンツも起きていない
理:にぃちゃん変なことしてないよね...
妹として兄ではなく幼馴染として天を守る側の理子
忍び足で○○の部屋に向かう
理:にぃちゃん〜... ボソッ
ゆっくり部屋のドアを開ける
そこには布団が敷いてあるのにも関わらず○○のベッドで眠る2人の姿があった
理:仲良く抱き合っちゃって...笑
抱き合いながら寝る2人を尻目に机の上に目をやる
1枚の紙が違和感を放っている
理:ん?これなんだろ...
紙の1番上には『この先の出来事』と書かれている
理:デートのプラン...?
純粋な理子はこれが何を意味しているかわかるわけがない
目を通していくと、最後の文が目にとまる
理:『一生記憶から消えない出来事が起きる』...?
理:『これは絶対に防ぐ』、『何としても助け出す』って...にぃちゃんまたなんか危ないことに首突っ込んでるんじゃ...?
詳細を書いている途中に寝てしまったのかそれ以上先は書いてなかった
○:ふぁ〜...
天:んっ...んぅ...
読んでいると目が覚めたのか起き上がる2人
机を向いていた理子は動くことも出来ないので後ろの○○と天を視界に捉えることが出来なかった
理:落ち着いて...知らんぷりして戻ればっ...
意を決して振り向く
理:へっ...///
○:んぅ...ん?
天:おはよぉ...○○...
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
玲:なになに!?
麗:理子ちゃん!大丈夫!?
愛:りー!襲われたかっ!?
夏:事件性ある叫びだったよ!
理子の声を聞いて全員が○○の部屋に集まる
理子は顔を真っ赤にして手で覆っている
理:にぃちゃん...にぃちゃんのバカっ!///
それでも理子は勇気を出して指をさしながら声を上げる
理:そういうのは2人きりの時にしてよ!///
理:付き合ってもいないのに!///
しかしここまで、自分の部屋に逃げていった
愛:そういうの見たくなかった...///
○:待て待て誤解だ!
みんなが驚き、顔を赤くしても無理は無い
天:ほっ...?
着ていた上着やズボンは着用していない下着姿の天と○○が同じベッドで寝ていたら誰でもそうなる
○:なんで着てないんだよ!///
麗:もう...ちゃんと男子高校生みたいなことしてるじゃん...///
玲:合意の上だよね?じゃないと○○しばくよ?
拳を固く握り今にも振りかざしそうな玲
○:合意もなにもまず事は致してないから!///
天:嘘つき...もう獣みたいだったんだから...///
愛:うわ...ちょっと引くわ...
○:天!お前変な事言うな!///
天:もしかしたら...デキちゃったかも...///
もう見ていられなかった
軽蔑の目が○○に注がれる
夏:そこら辺にしときな笑
笑いながら天に服を渡す夏鈴
天:もう...つれないな〜
プクッと頬を膨らませて子供のように拗ねる
渋々服を着始める
夏:みんな大丈夫よ?これいっつもだから笑
愛:え...いっつも夜な夜な...///
夏:愛季違う笑
どうやらこのノリにいつも夏鈴は被害に遭うらしい
そもそも天が暑がりなのもある
天:暑くて寝ずらいんだよね笑
玲:もうびっくりしたんだから!
天:へへ...みんなの反応面白いからさ笑
○:俺は本気で嫌われるかしばかれるかの2択だったんだぞ...
○:...
理:...
朝食をみんなで食べているが理子は先程の事情を知らないため本当にそういう兄だと思っている
○:理子今日どこべんきょ
理:ご馳走様
早く食べ終えて部屋に戻っていく
ちなみにひかるも瞳月も理子の声に起きることなく爆睡していた
瞳:りー今日機嫌悪いのかな...
ひ:んー、でも理子ちゃんに限って○○を突き放すようなことするかな?
みなまで言うなという顔の○○
大好きな妹に嫌われたのだ
○:はぁ...
天:まぁ〜どんまいどんまい!
呑気に背中を叩いてくる天
○:元はと言えば天のせいだからな?
天:理子ちゃんに1番先に見られるとは思ってなかったもん
狙いは○○を起こしに来たひかるや夏鈴あたりだった
まさかまさかの理子に天も対応しようがない
○:後で謝るか...
ご飯を食べ終えて、朝から勉強
集中しているのか今日は誰も話すことなく進
麗:...チラッ
○:...
麗:...
○:...どこ分からないの?
麗:ごめん○○助かります...
...むわけもなく後半は質問大会だった
そして時刻は昼頃
○:ご飯どうしよっか
愛:食べに行く?
玲:みんなで作ろうよ!絶対楽しい!
ひ:玲ちゃん天才!そうと決まれば買い出しだっ!
玲の一声でお昼はみんなで作ることに
それぞれ買い出しの準備をして玄関に集まっている
夏:でも理子ちゃん大丈夫なのかな?
そう、理子は今日ずっと1人部屋で勉強していた
瞳:心配だよ...
愛:○○のせいだ
○:まぁ...今回はそうだな
ひ:私たちで買い出し何とかするから仲直りしてきな?
天:私のせいでもあるから私も残るよ
麗:じゃあ他の人で買い出し行こっか
夏:何食べようかな〜何作る?
ひ:おでん!
夏:昨日食べたから却下
ひかるの提案が却下されたところでご飯はハンバーグになった
玄関は閉まり、天と○○が残された
○:謝るか...
天:...
○:ん?どした?
俯いている天
どこか違和感でもあるのだろうか
天:...昨日のメモ○○片付けた?
○:いや机にあると思うけど...まさか...
天:見たんじゃないのかな...?
明らかに原因はベッドの件だが、もし仮にそれが絡んでくると話は変わってくる
○:でも直接的な表現はしてないよ
天:理子ちゃんが純粋なのを祈るしかないね
とりあえず理子の部屋の前に立つ
勇気をだしてノックをする
○:理子
理:なに?今日にぃちゃんと話したくない
とてつもなく冷徹な返事
○○には大ダメージだ
○:勘違いなんだ、あれはただ天が暑くて脱いだだけなんだ
理:嘘つき、そうやって天ちゃんまで使って言い逃れするのやめた方がいいよ?
天:ほんとだよ!○○は関係ないよ?
理:大丈夫だよ天ちゃん、にぃちゃんに脅されてるんだよね?
純粋が故の弊害
完全に悪者にしたらそれが正解になってしまう
○:はぁ...どうしたものかな...
理:...どうしても許して欲しいならちゃんと愛してる証拠だしてよ
○:え...
天:そう来たか...
大ピンチ
ここで躊躇すれば今日仲直りは無理だ
しかし証拠とはどこからが入るのか
○:...
天:分かった
○:はぁ!?
天:とりあえず証拠だすから理子ちゃん出てきて?
何か策があるのか天は自信満々に理子を呼び出す
理子もそれに乗ってドアを開ける
理:...
天:見ててよ?これが証拠
理子と目が会った瞬間に頬に触れる柔らかい唇
一瞬と思ったその時間は少し長く感じた
○:...///
天:理子ちゃんが思ってるようなことはしてない、だって○○は私を大事にしてくれてるから
天:そもそも私だけ脱いでて○○だけ着てるのはおかしいからね笑
理:...
理子も目の前でキスをした天に何も言えないのか気まずそうだ
○:ごめんな理子、勘違いさせちゃって
○:流石の兄ちゃんでもそんなことする勇気はないよ笑
理:意気地無し...
え?なんで煽るんですか?
天:ほんとだよね!この意気地無し!
○:なんでそうなる!
理:へへっ...にぃちゃんの意気地無し!
天も便乗して理子側に回る
やり取りが面白かったのか笑顔が見えた
○:はぁ...傷つくんだぞ...?
理:ごめんねにぃちゃん...りー勘違いして怒ったりして...
○:大丈夫、兄ちゃんがクズにならないように怒ってくれたんだろ?
確かに付き合ってもいないのに体を重ねるのは少々複雑な部分がある
純白な理子だから怒れただろう
○:ありがとうな ナデナデ
理:えへっ...『にぃちゃんはりーが守るからね!』
時間が止まってしまったような感覚に襲われる
そのワードを最後に○○の撫でていた手は止まる
○:...
天:○○...
○:...そうだな、りーに守ってもらわないとな...笑
悲しそうに笑う○○
理子も気づく様子はない
○:お昼ご飯はハンバーグだよ、今買い出しに行ってくれてるからもう少し待ってね
理:うん!天ちゃんリビングいこ!
天:う、うん...!
天の手を引いていく理子
○○の顔は以前悲しそうなままだった
買い出し組も帰ってきていざ調理開始
何故かあの有名な料理BGMが流れるなか具材を切っていく
○:なんでこの音楽なの?笑
ひ:雰囲気出るじゃん!
夏:でもこんなに大量にあるのは初めてだな
机の上には見たことないくらいの大量の具材
包丁全てを取りだし、切り刻む
愛:うぅ...涙出てくる...
玲:玉ねぎはね、ガムとか何か噛んで切ると涙出てこないんだよ?
麗:あ、ちょうどガムあるじゃん
愛:いただきます...モグモグ
そして玉ねぎを切る
愛:ほんとだ!出ない!
玲:へへ〜凄いでしょ笑
麗:玲ちゃんなんでも知ってるね...笑
切り刻み終えたらあとは混ぜて焼くだけ
順番でボウルの中を混ぜていく
そしてよく混ざったら、形を整えて空気を抜く
ひ:そして!
瞳:フライパンに!
天:レッツゴー!
あとは焼き上がるのを待つだけ
待っている間に今日の寝床決めをすることに
○:...
○:俺も参加させてよ!
もちろん今回も○○はおやすみ
よって自動的にフライパン係になる
ひ:じゃあ今日は人狼で決める?
夏:でもそうなると進行役いないといけないよ?
麗:じゃあ○○にやってもらう?
○:おい俺の役多すぎだろ
愛:じゃあほかので決めよ!
結局ババ抜きという安定中の安定で決めだした
特にすることもないので騒ぐ声を耳にしながらフライパンを眺める
○:...
○:理子...
『にぃちゃんはりーが守るからね!』
その言葉が反響し続ける
理子の怒った顔、泣いた顔、笑った顔、何よりも可愛い顔
全てが走馬灯のように思える
○:...
込み上げてくる涙
深く遠い記憶が脳内のスクリーンに映し出される
○:兄として...失格じゃないか...
○:ごめんな...こんなに頼りない兄で...
涙は頬を伝うことなくぽたぽたと落ちていく
止まることを知らない涙には幾千の後悔が含まれていた
○:でも...泣いてるだけじゃダメなんだ...今回は絶対...
○:俺が解決してやるんだ...
涙を拭い、固く意志を結ぶ
天:...○!○○!
○:へっ!なになに!?
途端に現実に引き戻される
目の前にはモクモクと煙が出ているフライパン
夏:ハンバーグ!
ひ:焦げてる絶対!
○:やっべ!いや!まだ諦めるには早い!
急いで蓋を開ける
そこにはまだギリギリ食べれそうなハンバーグのようなものがある
愛:行けるの○○!?
瞳:○○くんファイト!
○:任せろっ!
とりあえずひっくり返し、火を弱める
そして少しだけフライパンに水を入れる
○:よし...何とかなりそう
理:でもお水入れちゃったら...
○:大丈夫、かなり火強めにしちゃってたからしっかり中まで火を通すって意味も込めての水だから
○:そのうちなくなるから問題ないよ
麗:さっすが○○!やっぱり料理上手いね!
○:え?麗奈に振舞ったことあったっけ?
正直、振舞った記憶は大学に入ったあとだ
家でパーティしたいと夏鈴が言い出したために○○が料理担当に任命された
麗:え、あぁ〜その...予想?笑
○:なんだそれ笑
そんな話をしているとハンバーグは元通りになる
美味しそうな匂いが食欲を刺激する
『いただきます!』
○:うまっ!
天:これレストラン出せるよ!
肉厚なハンバーグを割ると中からは肉汁が溢れ出す
中までしっかり火が通っておりソースとの相性は抜群
添えられた茹で野菜も旨みの中に野菜ならではの甘みがあり、メインのハンバーグを邪魔しない、且つ存在感がある
愛:美味し〜...モグモグ
理:みんなで作ったからだね!
瞳:最高すぎる...モグモグ
あれだけあったハンバーグもあまりの美味しさにすぐなくなった
午後の部もしっかり勉強した○○達
シャーペンが削れていく音と教科書を捲る音が空間を支配していた