天真爛漫委員長はしっかり者になりたい
まただ
何度この光景をみたことか
○:...
璃:美青ちゃ〜ん💕ギュウ
的:ちょっと璃花みんな見てるから…
目の前で繰り広げられる女の子同士のハグ
みんなもう慣れたものだ
愛:…別に私の方が美青のこと知ってるもん
純:愛季嫉妬しないの笑
愛:美青はめっちゃ甘えたさんだし、何気に1番精神年齢幼いというか...とにかく可愛いんだからっ!
谷口さんの主張も分からなくもない
的野さんはカッコ可愛いという現代において女子にモテる女子というやつだ
村:ん〜...これ美味しいっ!ゆづ!食べたことある!?
山:ホンマにそろそろ静かにしてくれん...?💢
中:しづ...笑
こっちはこっちで村井さんに山下さんがブチ切れてる
所謂『ブチ切れしーちゃん』というやつだ
...あと村井さん授業中ね?
理:...また負けた
麗:理子ちゃん大事なのは点数じゃなくて過程なんだよ?
理:むぅ...次は負けないもんっ
うちのクラスはよく荒れる
特に今騒いでいる女子を中心にだ
○:はぁ...
こういう時”あの子”がヒーローになる
『はいはい、みんな落ち着いて!』
”さっすがこんなぎ!”
”やっぱり学級委員長は頼りになるよね〜”
うちのクラスの学級委員長・小島さんだ
常にニコニコしており、優しい雰囲気が隠しきれない彼女はしっかり者でクラスを上手に纏めている
そんな彼女も普段は...
──────────
山:凪そこ頭危ないから気ぃつけてな?
凪:ありがと!し
ゴツンッ
凪:いったぁ...
山:だから言ったやん...笑
──────────
──────────
凪:美羽〜購買行こ!
美:ん、いいよ
凪:よし財布財布...あれ!無い!
美:...忘れてきたの?笑
凪:あっちゃ〜...忘れちゃった...
美:仕方ない、出してあげるから買いに行こ?
凪:ごめん美羽...
──────────
と、こんな感じでどこか抜けている
だがそんなところも可愛い
凪:璃花は美青とイチャイチャしないよ〜
璃:は〜い💕
的:あ...離れちゃった... シュン
凪:愛季は嫉妬しないで仲良くする、いい?
愛:うぅ...ごめんって
純:愛季には純葉がいるじゃん!
凪:優はお菓子食べないで話し合いに参加しようね?そしたらしーもイライラしないからさ!
優:ごめんっ!ちゃんと参加する!
山:ホンマに頼むで?
中:というかなんでお菓子食べてんの笑
凪:理子と麗奈は勉強も大事だけど文化祭案も真剣に取り組んでもらえると嬉しいな!
理:あ、ごめん!集中してた!
麗:私はフロランタンが看板メニューの喫茶店を提案したい!
こんな感じで彼女が一声かければ一気にクラスは纏まる
おかげで担任の先生も頼りにしているみたいだ
美:流石凪だね
○:ほんとだよ、小島さんやっぱり頼りになるよね
美:人に寄り添える優しい子だからこそ頼りになると私は思うよ
急に表現者のような語彙をズラズラと並べる彼女は美羽
中学が同じで会話はしてこなかったが、何故か高校からはすごく話すようになった
凪:はいっ!ということで案が出たんですけど...喫茶店っと...
凪:他になにか案はありますか?
山:...
山下さんがモジモジとして何か言いたげにしている
凪:ん?しー何かある?
山:えっと...その...
モゴモゴと濁す山下さん
恥ずかしいからなのか意見を言えない
凪:...私ラーメン屋さんとかいいと思うんだよね〜!
何かを察したのか急に喫茶店の横に追加されるラーメン屋
山下さんも首が取れるんじゃないかと心配になるほど縦に首を振る
的:それいい!私もラーメン大好きっ!
中:いやいや釜飯でしょ!
凪:か、釜飯?
中:すっごい美味しくて...私釜飯屋さんでバイトしてるから大体は作り方とかもわかるよ!
『中嶋〜』
中:なんですか〜?
『うちの高校バイト禁止だぞ〜』
中:...
一気に顔色が悪くなる中嶋さんを他所に話し合いは進んでいく
石森さんから出た『ハンバーグ屋』『オムライス屋』に加えて遠藤さんから出た『定食屋』など様々な案が名を連ねる
凪:よしっ、これだけ案が出たのでそろそろ多数決取りますかね...
ということで多数決で決めることに
もちろん多数決ということは大半が自分の意見が通らない訳で
凪:じゃあ『ハンバーグ屋』に決定です!
多数決の結果は僅差でハンバーグ屋だった
決定の途端に教室に飛び出す数個のため息
”はぁ...ハンバーグって作るの大変じゃん”
”まじでだるいよね...”
”誰だよハンバーグ屋って意見出したの...”
○:っ...
美:やめときな
○:でも...
特に案も出さないのに文句しか言わない奴がとにかく嫌いだ
言い返してやろうとした所を美羽に止められる
凪:で、でも決まったことだから...
”はぁ?知らねぇよ笑”
”おれ当日休みま〜す”
”俺も彼女と他のクラス回るからパスで”
凪:そんな...
璃:ちょっと!そんな言い方ないじゃん!
的:そうだよ!頑張って凪が纏めてくれてるのに何その態度!
教室内が荒れ始める
担任の先生も重たい腰を上げた
『よし、お前らあとで俺のとこ来い』
『小島の大変さ教えてやるから』
”いやいや、それは勘弁だわ笑”
”いやまじですいませんした!小島さんが正しいですもんね!”
見るからに落ち込んでいる小島さん
何とか反論しようにもあちら側が聞く耳を持たない
『それが嫌ならちゃんと謝れよ?』
『小島だって苦労してるんだから』
一旦話し合いは終わった
しかし、小島さんの気分が上がることは無かった
小島さんの周りは女子達でいっぱいだった
○:小島さん...
美:私絶対許さない、凪から笑顔を奪ったこと許さないから
○:美羽がそんなに怒るなんてよっぽどだな...
と言いつつも何か声をかけたい気持ちが主張を始める
凪:...ごめんねっ!
愛:凪!
そう言って教室を出て行ってしまう
咄嗟に動いた足は小島さんを追いかけていた
初めてだった
こんなにもみんなの意見を聞けなかった自分が情けなかった
全員が楽しめればそれでいいのに
凪:やっぱり私には向いてないのかな...
私はあの言葉を文句だとは思わない
彼たちも自分が楽しむための提案をしてくれただけ
凪:自分を変えたくて立候補したのにっ...
あまりの悔しさに涙が出てくる
こんな姿、絶対に見られたくない
特に、彼には見られたくなかった
○:小島さん...大丈夫?
凪:○○くん...
でも振り向いた先には彼がいた
彼女は空き教室にいた
窓側を向いて肩を揺らしている
○:小島さん...大丈夫?
凪:○○くん...
決して涙を見せたくないのか袖で雑に拭った
真っ赤になった瞳がこちらを覗く
凪:あはは...私また空回りしちゃった...
凪:まとめられなくてごめんねっ...みんなの雰囲気も悪くしちゃって...
凪:しっかり者とかよく言われるけど全然そんなことない...私なんかが学級委員長なんて...無理だったんだよ...
無理に笑顔を作る彼女を見てもう耐えられなかった
凪:っ...
○:全部凪紗のせいだなんて誰も言わない、俺が言わせない
○:だからさ、あいつら見返すくらい大盛況させてやろうよ
○:頼りになる学級委員長がいないと、クラスのみんなもやる気出ないよ
俯く彼女をそっと手繰り寄せて包み込む
後ろからの視線を感じたが、気付かないふりをした
凪:私でいいの...?
○:小島さんじゃなきゃ嫌だ
凪:そんなこと...初めて言われた...
こちらを見上げる彼女の目に火が点いた気がした
やる気になった小島さんは誰にも止められないで有名なのだ
凪:うんっ...!私もう1回あの子達説得してみる!
涙を拭って笑った彼女
『誰も仲間はずれにしない』
彼女のモットーが分かった気がした
○:よし...じゃあ戻...
美:ふ〜ん
愛:心配で見に来たけど...
山:ちゃんと青春してるやん
入口には小島さんが心配で見に来たであろうメンツ
視線は気の所為ではなく、ガッツリ見られていた
純:そっと抱きしめて『全部凪紗のせいだなんて誰も言わない、俺が言わせない』だって!笑
璃:もうキュンキュンしちゃったよ!
中:○○くんやる〜!
○:あ、あはは...
向井さんだけは絶対にバカにしている
ツボに入ったのか手を叩いて笑う
理:それで〜?
麗:2人は付き合ってるの?
○:へ...?
優:うんうん!すごくお似合いのカップルだと思う!
凪:ま、まさかそんなわけ!///
その動揺の仕方は逆に怪しまれるだろう
ニヤニヤしてこちらを見てくる一同
凪:えっと...そう!励ましてくれただけ!ほんとに!///
中:まっ、そういうことにしといてあげるよ笑
凪:ゆ〜づ〜💢
中:きゃ〜逃げろ〜笑
何がともあれ小島さんが元気になったようで良かった
あの男子生徒達は担任からこっぴどく叱られたらしく見違えるように協力的になった
○:美羽そっち持ってほしい
美:はい
○:さんきゅ
そこから当日までのクラスは見違える程の団結力を見せつけていた
璃:提案したからには主体となってやらないとね!
的:璃花のハンバーグめっちゃ美味しい...!
愛:こんなに美味しいの食べたことない!
純:璃花は何作っても美味しいからね!
こちらはこちらで味見で盛りあがっている
石森さんから漂うお母さん感は料理からも感じられるらしい
優:ゆづ〜!マジック持ってる〜?
中:こっちには無いよ〜
優:えっ!じゃあどこいったんだろ...
山:マジックならさっき○○くん持って行ったで?
優:へっ!そうなの!?しーありがと!○○く〜ん!マジック持ってる〜?
山:...ホンマに天然でこれなら怒られへんて
中:優は天然だから仕方ないよ笑
村井さんのリアクションの大きさはいつになっても変わらない
それに山下さんがちょっとイラつくのも見慣れた光景だ
麗:私のレシピも採用してくれるかな...
理:麗奈ちゃんのハンバーグも私好きだよ!
璃:だよね!どうせならみんなのレシピでハンバーグ作ってソースだけ変えてみよっか!
的:それいい!全種類コンプリートしたい!
準備段階だが自信を持って優勝出来るといえる
それほどまでに一致団結していた
”凪ちゃんこれどうする?”
凪:それは...△△くんのところ持って行ってあげて!
”こんなぎ〜?看板なんだけどイメージこの感じで大丈夫?”
凪:うんっ!すごくインパクトある看板だし絶対お客さんも見てくれるよ!ありがとう!
一時は落ち込んだ小島さんも学級委員長としてクラスをまとめ、忙しそうにあちこちを回っていた
○:小島さん
凪:あ!○○くんおつかれ!
○:大丈夫?疲れてない?みんなで仕事分け合えるからキツかったら言ってね
凪:ありがとう!でも私全然辛くないから大丈夫!
笑った顔は本当に子犬のような可愛さがある
あの特有のよしよし〜!がしたくなる顔だ
美:無理してたら分かるからね?隠し事はなしだよ?
凪:うん!美羽もありがとう!
凪:ところで...
グイッと体同士が近距離になる
こちらを見上げる彼女は何か物乞いするような視線を送ってくる
○:ど、どうしたの?
凪:いつになったら...その...///
ピンクに染まった頬
耳の先まで真っ赤っかだ
○:ん?
凪:いつになったら...あの時みたいに凪紗って呼んでくれるの...?///
○:へっ...///
どさくさに紛れて名前呼びをしたのがバレていたらしい
お互いに照れてしまって中々動けない
凪:わ、私は凪紗の方が...嬉しいな...///
○:じゃあ...頑張って凪紗って呼ぶね...///
美:...さてと、グループLINEに進捗状況報告しとかないと
結果的に飲食類の出し物で優勝したうちのクラス
決め手はハンバーグの種類の多さ、美味しさだったらしい
璃:やった〜!褒められちゃった!
的:これでまた璃花がみんなに見つかっちゃう...
璃:大丈夫!私は美青ちゃんしか見てないよっ💕
愛:ぐぬぬ...またイチャイチャしてるっ...!
純:はいはい、嫉妬しないよ〜 ナデナデ
そして後夜祭
生徒たちがグラウンドに集まる中○○は教室にいた
○:疲れた...
美:お疲れ様、今日は○○がMVPかもね
○:それはないよ...笑
優:ううん!○○くん今日大活躍だったもん!
接客、調理、列整備など全てにおいて休みなく行っていた○○
少しでも力になりたくて働いた結果グラウンドで盛り上がる元気もなくなってしまった
山:今日はゆっくり休みや?
○:山下さんありがと
中:みんなグラウンド行っちゃったもんね
教室には5人しかいない
というより教師陣もグラウンドに繰り出しているため校内には○○達しかいない
美:行かなくてよかったの?
○:何が?
山:凪のことや
○:小島さん...?なんの事?
中:最後の花火、一緒に見たら結ばれるってジンクス知らないの?
確かに聞いたことはあった
でも小島さんは他の誰かに誘われたと聞く
○:ここにいないってことは誰かと見る予定なんだよ
山:はぁ...ホンマに2人見てたらもどかしいわ
中:凪は断ったらしいよ?
○:えっ...?
美:まぁ理由は聞かなかったけどね〜
優:ふふっ!凪もちゃんと女の子だもんっ!
誘われたのはあの有名なサッカー部のイケメン先輩だ
断るわけが無い
○:そんなわけないよ笑 期待するだけ悲しくなるんだからやめようよそういうの笑
中:...あ!私ちょっと用事思い出した!
○:急に...?
美:私も
山:すまんな○○くん、ちょっと席外すで
優:へ?用事なんてな...モゴモゴ
山:あるやんな!ほら行くで!
最後に村井さんがほぼ用事なんてないと言っていたがそそくさと出ていってしまう
教室に一人残され少し寂しくなる
○:ふぅ...にしても大盛況だったな...
想定以上の売上にランキングはダントツで1番だった
ここまで人気だったのも上手くまとめてくれた小島さんのおかげだろう
○:花火...か...
この期間、彼女が脳裏にこびりついて離れなかった
それだけ惹かれているのだろう
すると教室のドアが開く
凪:あれ?○○くんまだ教室にいたの?
○:小島さん!?花火に行ったんじゃ...
入ってきたのは渦中の子
動揺が隠せていない
凪:花火?あぁ...なんか誘われたけど...断っちゃった笑
○:なんで...だって3年のサッカー部の先輩でしょ?
凪:う〜ん...カッコイイけど...知らない人と花火見るなら私が一緒に見たい人と空見上げたいな
○:そっか...
凪:...
気まずい空気が流れる
隣の席に腰を下ろしたまま進展は無い
どちらも何も言い出せずに時計の針だけが進む
先に動いたのは○○だった
○:あ、あのさ...
凪:ん?
○:もし小島さんが良かったらなんだけど...
凪:...?
○:花火...一緒に見ない?
ジンクスは信じないタイプ
でも神様に祈って叶うならとことん信じてみようじゃないか
凪:...いやだ
しかし答えはNo
小島さんは席を立つ
○:...
凪:凪紗って呼んでくれなきゃ一緒に見てあげない
○:えっ...?
凪:ほら、どうするの?
小首を傾げてこちらを覗いてくる
答えなんて1個しかない
○:凪紗、花火一緒に見に行こ
凪:うんっ!私も○○と見たかった!
差し出された左手を握ってグラウンドへ急いだ
走っていても決して2人の手が離れることはなかった
○:はぁ...はぁ...何とか間に合った...
各々が場所をとって空を見上げている
打ち上げ前には間に合ったようだ
凪:あははっ...なんか疲れてるのに笑っちゃう!
○:階段すごいスピードで降りたもんね笑
凪:○○が速すぎるのっ!
あまり目立たない校舎側に腰をかける
繋がれたままの掌から速くなった脈を感じる
○:それにしても大成功だったね
凪:優勝したもんね!ほんとにみんなのおかげだよ...!
○:やっぱり凪紗がちゃんと引っ張ってくれたからだよ
凪:え〜?褒めても何も出ないよ〜?笑
○:そういうのじゃないから笑 俺は本心でそう思ってるよ
らしくない言葉が出てきたことに自分でびっくりする
こんな台詞言うよう柄じゃない
○:凪紗が自信もって進んでくれたから俺らも着いていけた
○:本当にありがとう
凪:なんか照れるな...///
暑さのせいでそれでなくても赤い頬がもっと染まる
凪:私からも○○にありがとうを言わなきゃいけないよ
凪:あのままだったら私学級委員長辞めてた
思い詰めた顔
つい昨日の事のように思い出す
凪:結局、何も変われないまま終わるところだった
凪:そんな私に希望をくれたのが○○
凪:純葉はバカにしてたかもしれないけど私の心にはあの言葉響いたよ
”全部凪紗のせいだなんて誰も言わない、俺が言わせない”
凪:あの言葉のおかげで、私って1人じゃないんだって
凪:この人が隣にいてくれたらなんでも出来るんじゃないかなって思えた
凪:だから...この先も私のっ...!
ヒュー...
バーンッ
○:それ以上先は俺が言いたいかな
凪:...///
○:凪紗、この先もしっかり者の君を隣で支えたい
○:好きです、付き合ってください
大きな花火に湧く生徒たち
そんな声さえも耳に届かない
凪:いきなりキスするのはずるいよ...///
凪:はいっ...よろしくお願いします...!
山:ホンマにヒヤヒヤしたで...
中:優にちゃんと説明したじゃん!
優:だって用事はないでしょ!
美:静かに、バレちゃうでしょ?
4人もグラウンドに出てきていた
空は光の花びらが広がる
山:でも...結ばれてよかった
優:でも元々両想いって噂だったよね!
中:2人とも不器用だから仕方ないよ笑
美:○○もだけど...凪は特に不器用だからね
視線の先には肩を寄せあい空を見上げる2人の姿
距離感はカップルそのもの
美:素直でしっかり者で...いざと言う時は自らが先頭に立ってみんなをちゃんと見てくれる
美:でも素直だからこそ隠し事ができなくて自信が無いのをバレないように距離置いちゃうんだよね
中:でもそこが凪のいいところだよね!
山:たまに甘えてくる凪めっちゃ可愛いねんな〜
優:自分はしっかり者じゃないって言ってたけど凪が1番しっかりしてるもん!
カップル成立に喜びの一同
会話に夢中の4人
そんな中、花火に照らし出される2つの影は1つになっていた
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