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カクレンボ 1日目



普通の日常なんてものはすぐに壊れる
いつも通り、学校に通っただけなのにこんなことになるなんて…


○:やっと来た…


和:おまたせ〜!


待ち合わせの場所に遅れてやってきた幼馴染
いつも時間ギリギリに呑気な顔でやってくる


○:そのギリギリなのやめてよ


和:間に合ってるから良くない?


○:そりゃそうだけど…


和:ほら、早く行かないとそれこそ遅刻するから


横並びで学校に向かう
何気ない通学路、この時間が年齢を重ねた時に思い出される光景になるんだろう


学校が見えてくる


○:あ、美空と△△じゃん


向かいからクラス唯一のカップルがやってくる


美:あ!にゃんに○○おはよう!


和:にゃんってやめて!


△:いいじゃん笑 にゃんにゃん言ってるんだから


和:△△に見せてないから!あれは美空がやれって言うから…///


○:まぁまぁ落ち着けって笑

ムキになって否定する和を押えながら校内に入る
やけに静けさが目立っている


○:…


和:ん?○○忘れ物でもした?


○:あ、いや…なんでもないよ


気の所為にして教室に入る
チラホラ席が埋まっており、まだ半分くらいだった


美:それでにゃん勉強してきたの?


和:もちろん、美空がやれやれうるさいから


美:なっ!にゃんを思って言ってあげてるのに!


○:仲良しか笑


△:○○も俺に勉強教えてくれてもいいんだよ?


○:断る


こちらもこちらで仲良し
しかし、ここで”イレギュラー”が起きた


△:先生遅くねぇか…?


既に朝のSHRが始まっている時間
しかし未だに担任は来ない


○:休みとか?


和:他の教室にも来てないみたいだよ?


廊下に出た和が耳を立てても先生と思われる声はひとつも聞こえない


美:先生今日全員休みなんだよ!


△:そんなわけないでしょ笑




キィィィィン




突如として響き渡るハウリング
それは校内全域に届いた


○:!?


和:なになに!?


美:△△…


△:落ち着いて


校内放送のマイクがオンになる


”あ、あ、マイク入ってます〜?”


変声機を通した声
年齢も性別も全く分からない




”突然で悪いんだけど…”


”君たちには今から10日間、かくれんぼをしてもらいま〜す!”




○:何ふざけたこと言ってんだ…


突拍子も無いことを言う『天の声』




”言っておくけどこれは遊びじゃないよ?”


”既に職員室は血の海、この学校は私のものになったのだ〜!”




狂ったように笑う『天の声』
”血の海”というワードにパニックなる校内


全生徒がこの地獄から逃げようと玄関に走る


和:○、○○!逃げなきゃ!


○:待て和!落ち着け!


走り出そうとする和の手を掴む
△△も怯える美空を庇うように抱きしめている



”ハッハッハ”


”逃げれると思ってるの?無駄無駄笑”





”キャーッ”



”嫌だ嫌だ!死にたくない!”



”おい開けろ!なんで鍵しまってんだよ!”



”助けてお母さん!”



”嫌だ嫌だ!開けてよ!ねぇ!”



開かない正面玄関
職員玄関も同じように施錠されている


○:何が目的だ…


”説明の前に…先に覚悟を見せておくよ”



パァァンッ



あれだけ騒がしかった声が一斉に止む
考えられるのはただ1つ


○:てめぇ…


和:○○…怖いよ…


○:大丈夫だ、和は俺が守る


怯え、震える和を抱きしめる
○○も心臓はこれまでにないほど速く脈を刻んでいる


○:なんのためにこんなことを…


”目的は〜…最後まで隠れられたら教えてあげる!”


”今教えちゃったらかくれんぼしなくても良くなっちゃうからね!”


”あ、ちなみに窓とか屋上から逃げようとしても無駄だよ?敷地内にセンサー設置したから自動射撃でバーンだからね〜笑”


○:こいつ…


笑って答える様子のない”天の声”
見つかれば命はないのが確定した生徒たち


”とりあえず最初は鬼1人だから隠れてね?”



”行くよ?”



”じゃあ…”




○:和!着いてこい!


和:○○っ…


△:美空!来い!


美:うぅ…





桜:アルノ…どうしよう…


中:大丈夫、桜は私がなんとしてでも守る






”ゲーム…”






奈:茉央来て!隠れるよ!


茉:うんっ!





い:さっちゃん…どうしよう隠れないと…!


咲:行かなきゃ!彩!


彩:どうしよう…どうしよう…






姫:てれぱんいいとこあるから行こ!


瑛:…







”スタートっ!”







スタートと同時に響き渡る銃声音
既に”見つかった”プレイヤーがいるらしい


○:和走れ!


和:力が抜けてっ…走れ…ない…


○:くっ…我慢してくれ!


和を抱き抱えて1番上の階を目指す
途中で△△達とは別れたので行方は分からない


○:はぁ…はぁ…ここなら大丈夫だろ…


1番上の階にある家庭科室に逃げ込んだ○○と和
普段から使われることの無いこの教室ならばまず見つかることは無いだろう


○:大丈夫か…?


和:はぁ…はぁ…


状況が上手く入ってこないのか過呼吸になっている
しかしひとつの呼吸でさえも命取りになる


○:落ち着いて…ゆっくり深呼吸だよ


和:はぁ…ふぅ…


チラチラと入口のドアにある窓を確認するも人影は無い


○:とりあえず10日間隠れ続けるしかないのか…?


和の背中を撫でながらそんなことを考えていた






△:美空…離れるなよ


美:…


こちらはこちらで教室と同じ階の1番隅の教室
学習室にやってきた
ここは生徒のみが使う教室であまり教師も来ない


△:大丈夫、俺が着いてるからな


美:△△…私たちどうなっちゃうの…?


△:10日間逃げ続けて、絶対にここを出る


美:でも見つかったら…


△:静かにっ…!


咄嗟に美空の口に指を当てる
△△の視界にはハッキリ捉えていた


△:(あれが…このゲームの鬼…)


人造人間と思われる鬼
角が生え、全身が真っ青なスーツに包まれている
表情は死角であまり見えないが、感情は無さそうだ


” … ”


△:(頼む…ここから離れろ…!)


美:っ…


美空もその存在に気づいたのか必死に息を殺す
物音1つ立てれば終わりだ


△:…


” … ”


何とか難を逃れた
鬼は引き返して行った


△:(あれならすぐに気づける…なんとしてでも10日間隠れ続けないと…)


美:っ…はぁ…はぁ…


気を抜かないで細くゆっくりと息を吐く美空
ここから動くことさえ困難な状況になってしまった







桜:はぁ…はぁ…


中:ここなら絶対に見つからない


人一倍冷静なアルノ
逃げ込んだのは3階の図書室
数多くの本を抱えている学校なので図書室もかなり広い


中:幸いまだ鬼は1人、冷静に立ち回ればそう簡単に見つからないよ


桜:ねぇ…あれって…


中:あれは…姫奈?


そこに居たのは隣のクラスの姫奈と瑛紗だった
アルノと姫奈は中学からの幼馴染、仲も良かった


姫:アルノ!?


中:静かに…!その行動ひとつで命取りだよ…?


姫:ごめんごめん…つい…


中:ん?奥にいるのは…?


姫:えっと、同じクラスのてれぱん


後ろには一緒に逃げてきた瑛紗がいた
表情も暗く、正しくこの状況に絶望しているようだ


瑛:…


姫:でもさっきからこの調子で…


桜:私と同じだ…


桜は姿勢を低くしたまま瑛紗の横に回る
そしてそっと抱きしめて背中を撫でる


桜:私も同じ…怖くて仕方ない…


瑛:…


桜:ねぇ…ここで10日間隠れられたら友達になろうよ


瑛:へっ…?


まさかの提案に表情が戻る
驚いた顔も端正な顔立ちだ


桜:目標があったら頑張れるじゃん


瑛:私でいいの…?


桜:うん!名前はなんて言うの?


瑛:私は池田瑛紗…あなたは…?


桜:私は川﨑桜、よろしくね


本棚から見えない程度に握手をして結託
アルノの考えもあり、大人数での行動は不利であると判断
同じ図書室でも別々に隠れることに


図書室にまだ鬼の影はない







奈:よしよし…ここなら大丈夫


茉:でも長くはもたんやろな…


2人は渡り廊下を走って体育館の器具庫にやってきた
ここは部活動の部室も近いため、他の人がいる可能性もある


茉:あかん…匂いが無理かもしれん…


奈:埃っぽいし…でも我慢しないと


いくら掃除をしたとはいえ、部活動によっては匂いが凄い部活動もある
加えてジメジメとしており、埃っぽい器具庫は長く隠れるには適していないだろう


茉:そうやな…我慢せなあかんもんな


奈:今のうちに助け呼ぼうよ!


奈央はスマホを取りだし連絡をしようとする
しかし電波はもちろん無く、圏外


奈:これはダメだ…スマホも使えない…


茉:ほんなら10日間見つからんで隠れるしかないってことやな


奈:そうだね…大丈夫かな…


茉:大丈夫や、2人で頑張ろな?


奈:うん…




ガタンッ
バンッ




茉:!?


奈:(静かにっ!)


体育館のドアが開く音
こんな状況でここまで豪快に開けるのは鬼以外考えられにくい


茉:(とりあえずどこかの部室入らな!)


奈:(うん!あ、ダンス部の部室入ろう!)


奈央はダンス部、茉央は剣道部に入っているのでそれぞれロックを解除することはできる


奈:(気は抜けない、茉央油断しないでよ?)


茉:(うんっ!)


恐る恐る奈央が小窓から体育館内を覗く
そこには先程△△が見た鬼がいた


奈:(鉄砲持ってる…)


茉:(奈央あんまり見たらダメだよ!)



”チラッ”



奈:ヤバいっ…!


鬼がこちらを振り向こうとした瞬間に身を屈ませる
もしかしたら見られたかもしれない


茉:(ほら言ったやろ!ここはあかん!剣道部の部室や!)


奈:(ごめん…)


急いで剣道部の部室に入る
ドアから1番遠いところに身を潜める


茉:(絶対喋ったらアカンよ…?)


奈:(うん…!)


確実に近づいてくる足音
その音は剣道部の部室ではなく、ダンス部の部室の前で止まる


茉:(っ…)


奈:(お願い…早く行って…!)


ガチャンッ!


” … ”


心臓がうるさくて仕方ない
この鼓動さえ聞こえているのではないかと思ってしまう


” … ”


ガチャンッ…


そのドアを閉じた音がする
そのまま足音は離れていった


奈:(危ない…)


茉:(もう無闇に覗いたりしたらアカンで?)


奈:(気をつけます…)


体育館にも緊張感が走っていた








咲:ここに来たのはいいけど…


い:ここは楽器たくさんあるし隠れられるよ


彩:でも逃げ場がない…


3人は2階の音楽室に逃げ込んだ
ここは楽器が多く、見つかる可能性は低いものの少し動けば音が出るためほぼ賭けだ


咲:はぁ…なんでこんなことに…


い:急にデスゲームってドラマでしか見た事ないよ…


彩:でも隠れなきゃ帰れないんだよ?やるしかないって


彩だけは直ぐに楽器の奥に隠れようとする
咲月やいろはも続いて隠れる


咲:見つかったらやっぱり終わりだよね?


彩:さっきの銃声からして銃殺…


い:遠距離でも見つかった瞬間に…って感じか…


どう考えても圧倒的にプレイヤーが不利なルール
まだ鬼は1人だが、増えていけば大幅にプレイヤーが減るだろう


彩:なんとしてでも10日間隠れ続けよう…!


咲:うんっ


い:また3人で遊びに行こうね…!


彩:ちょ…いろはそれフラグ笑


咲:良くない良くない笑


い:ごめんってば笑


まだこの3人には余裕があるようだ




順調に隠れているプレイヤー達
しかし問題は日が沈んだあと


○:順番に寝るか…見つかりそうになったら声を掛け合おう


和:でも途中で寝ちゃったら…


○:大丈夫、夜更かしは得意な方だからさ


○:和が優先的に睡眠とって


和:○○はどうするの?


○:和が自信もって起きられる時間に寝るようにするよ


こうして2人で順番に睡眠を取ることがベストである
つまり2人や3人で隠れるのがベストなのだ
1人で隠れていてはもたないだろう


△:美空先に寝ていいよ


美:△△も寝ないとダメだよ…


△:最悪なのはどっちも寝て気づいたら見つかってること


△:どっちかが起きていれば絶対に大丈夫だから


美:じゃあ…先に寝る…


そう言って狭いところに隠れている美空は△△に抱きついて眠ることに
不安で眠れない心配もあったが心身ともに疲弊していたのか直ぐに静かになる


△:おやすみ、ゆっくり休んでね…




皆が寝静まっても鬼は止まらず動き続ける
そして、ヘマをするプレイヤーも出てくる


”バンッ”


”バンッ”


桜:うぅ…怖いよ…


中:桜…


寝ていても銃声で起こされる始末
桜も叫び声と銃声に起こされ、怯えながらアルノにしがみついていた


中:大丈夫…桜は私が絶対守る…


捕まれた手に優しく手を添える
姫奈、瑛紗組の様子は暗くてあまり見えなかった


桜:アルノっ…


中:大丈夫、大丈夫だよ


震える桜をあやすように撫でる
そのまま抱きしめて夢の世界へ押し出した







残り時間  9日
生存者  30名

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