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WGによるWBの勝算

今日はチームの練習がオフだったこともあり、久しぶりに日本代表対サウジアラビアの試合をリアルタイムで見ることができた。試合を見ているうちに沸々と色々なことを考えたのでまとめていく。

日本は3-4-2-1で両WBに三笘と堂安の攻撃的な選手を起用。サウジアラビアは予想は3-4-2-1だったが4-3-3でこの試合に臨んだ。

日本vサウジアラビア

左右非対称の守備タスク

まずこの試合のキーポイントはサウジアラビアが4-3-3を採用したことだ。開始10分くらいまでは明らかに日本サイドには手探り感があり、3-4-2-1でくることを想定して準備していたような振る舞いに見えた。

開始10分くらいまでは相手の4バックに対して上田、鎌田、南野が頑張ってプレスをかけようとしていたが、ピッチの幅をSBにめいいっぱい使われてしまうとボールに寄せ切れずに結局撤退させられるという場面がいくつかあった。

そして、アンカーの8番に対して誰がプレスに出るのかというところで、徐々に守田が飛び出して牽制をかけ始めたことで中央は閉じることができたが、構造的な問題の解決にはならなかった。

しかし、徐々に日本も守り方に変化を加えて、最終的に落ち着いたのが、RWB堂安のRSB化+LWB三笘のLWG化による4-4-2の守備組織である。鎌田が一つ前に出て上田と横並びになりサイドへと誘導。RSB12番に対して三笘が飛び出して最終ラインをボールサイドにスライドさせるような形で上手く蓋をすることに成功した。

4-4-2の守備組織

日本の左サイドでは町田が対人の強さを発揮してサウジアラビアの攻撃を沈静化させた。

町田のところで潰しが効いたためあまりスポットライトは当たらなかったが、町田-谷口間のギャップの広さは気になる場面があった。サウジアラビアがさほどポケットを取りに行くようなチャンネルランをしてこなかったために危険に晒されなかったが、5バックからWBを1列上げた時の最終ラインのスライドの速さは個人的に気になるポイントだった。

町田がサイドに釣り出された時に残りの3枚は素早くスライドしたい

更に言うと、ハーフレーンの管理はボランチがするのか、ワイドCBがするのか、もしくは状況によって使い分けているのかが不明で今後注視する必要があるかもしれない。

そして、日本にとって1番脅威を感じたのがRSB化した堂安の守備だろう。左利きの選手がRSBをやることはそもそも珍しく、RWBであればRCBからのサポートもあるため保険があるのだが、4バック化を強いられた日本のRSBではその保険も使うことは難しくなる。特に堂安とマッチアップした相手が19番のサーレムアルドウサリでスピードとテクニックを兼ね備えた優れた選手だったことも堂安にとっては対応が難しくなったはずだ。数回日本の右サイドからアルドウサリに突破されてチャンスを作られた。

WGタイプの選手をWBとして起用することでボール保持では相手の脅威になることができるが、守備時にはWBがウィークポイントになる可能性も十分にある。特にこの試合のようにあまりボールが持てずにSBのような守備タスクを求められると、左利きの堂安のRWBよりも伊東という采配は納得できる。W杯や世界の強豪国と対戦する際にWGタイプのWBを運用することが可能なのかどうかは今後検証していくことが必要だろう。

3バックからの可変

予想以上にサウジアラビアが好戦的に日本に挑んできたのは驚きだった。守備でも日本の3バックに対して3トップをそのままぶつけて、ダブルボランチには両IHを当てることで5vs5の局面を作ってきた。ダブルボランチが塞がれているため外から前進しようとすると下の図のようにWGとSBがスライドして三笘と堂安にタイトに圧力をかけてきた。

3-2-5の日本のボール保持に対して4-3-3でプレス

当然、このプレスを剥がしてしまえば日本の前線には高いクオリティを持った選手たちが並んでいるのでチャンスになるのだが、なかなかボールを運ぶことに苦労した。特にダブルボランチがサウジアラビアの1列目を越えられる立ち位置でボールを受けることができれば良かったのだが、スペースが狭かったことや相手のIHもかなりタイトについてきたこともあってボールを受ける位置が低くなっていってしまった。

ベンチからの指示なのかピッチの中で選手たちが解決策を見出したのかはわからないが試合が進むにつれて、日本はボランチが最終ラインに降りてきて3バックを4バックに可変することでサウジアラビアの守備を攻略し始めた。例えば、守田が降りてくれば3トップに対して4枚でボールを持つことができ、そのままRIHがついてくれば鎌田が空くという構造になっている。ハーフスペースのところにはスペースがあるため南野が数回プレス回避の出口として縦パスを引き出したことも効果的だった。

3バックから4バックへの可変

この試合の1点目は南野がハーフスペースでボールを受けたところからアタッキングサードへと侵入することができたので、ピッチ上での選手たちの空間認識能力の高さを伺えた場面だった。残念ながら南野は前半でイエローをもらっており、サウジアラビアからも露骨に挑発されていたので、良いプレーをしていたがリスクを考えるとハーフタイムでの交代は致し方なかったように思える。

しかし、もう少し3-2-5から違うアニメーションを入れてプレスを回避する日本も見てみたかったという気もする。例えば、WBが高い位置で相手のSBをピン留めしてワイドCBと高い位置を取ったWBの間にシャドーが流れてくるというような攻略も有効だったかもしれない。まだまだ3-2-5からの応用というところまでは手が回っていない印象を受けた。

サウジアラビアのSBの原則

後半から日本は南野の変えて伊東を入れて堂安を右のシャドーに入れて伊東をRWBに置いた。サウジアラビアもRWGの23番を下げて11番をCFに投入し、CFでプレーしていた9番をRWGにシフトチェンジしてきた。これにより前半は23番がワイドに開いていたが、9番が中央に入っていってRSBの12番が高い位置を取り始めた。

また日本は前半の4-4-2気味の守備から、5-4-1のミドルブロックを構えるように変更。わざわざスライドしてスペースやギャップを与えるくらいなら、最初からスペースを埋めてしまおうというような意図が見えた。更には前半はアルドウサリが日本の脅威になっていたが5バックにしてしまえば、RCBもカバーに入れるというメリットがある。

後半の構図

この両チームの変化によってサウジアラビアがボールを持つ時間が増えたが、日本ゴールへと迫る回数は前半に比べると減っていった。

更にはサウジアラビアも選手交代によって前線のタスクが代わり、WGが中央に絞ってボールサイドのSBが高い位置を取るようになったが、それによってアルドウサリのボールを受ける位置が下がり、日本にとっては前半ほど脅威ではなくなった。もっと言うと前線に人は並んでいるが、前線とディフェンスラインを繋ぐ役割の選手が8番しかいないため、上田がスクリーンしてパスコースを封じるか、守田が牽制をかけることで日本の5-4-1の外側でしかサウジアラビアはボールを持てなくなった。

サウジアラビアの後半の配置

サウジアラビアのSBの原則としてボールサイドのSBは高い位置をとって攻撃参加し、逆サイドのSBは内側に絞って守備のバランスを取っているように見えた。従って、配置的には3バックに見える時もあったのだが、おそらくSBの原則によるものだろう。特にLSBの14番はかなり控えめの攻撃参加で、LWGのアルドウサリはボールを引き出しに降りてくるので誰も左サイドで幅を取る選手がいなくなり、後半のサウジアラビアの左サイドは手詰まり状態となっていった。

また、日本は交代で前田をLWBに入れることで守備力も高めて、サウジアラビアのサイド攻撃にも対応。後半から途中投入された小川のCKからのヘディングゴールもあり、上手く難しい試合をコントロールしながら勝ち切ることができた。

試合終盤のサウジアラビアのシンプルなロングボール放り込み攻撃への対応がヒヤリとした場面があったことやWGタイプのWBの勝算は今後どれだけあるのか気になった点ではあるが、上田は50/50のボールをマイボールにしたり、守田のゲームマスターのような振る舞いや3バックの組織的な守備などシンプルに"強さ"を感じられる点が多かったことも事実だ。また、途中交代で出てきた選手がゲームを壊さずに機能したことやサウジアラビアの大アウェーの地で着実に勝点3を手に入れたことは大きな自信に繋がるはずだ。

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Gyo Kimura
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