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復調の兆し、バルセロナの新システム【コパデルレイ: 準決勝2ndレグ】バルセロナvsセビージャ
1stレグでバルセロナはセビージャに0-2で敗れ決勝進出するには非常に厳しい条件となりました。そんな絶体絶命のバルセロナはホームカンプノウでの2ndレグとなり、4日前のリーグ戦から新システムを導入し大逆転を目指しました。
一方のセビージャは1stレグでは勝利しているものの直近のバルセロナとのリーグ戦では完敗。バルセロナの新システムに対してどのように対応するのか注目が集まりました。
決勝進出条件
バルセロナ
・3点差以上での勝利
・2-0で前後半終了し延長戦またはPK戦で勝利
セビージャ
・この試合に勝利
・この試合に引き分け
・1点差以内で敗北
・1点以上得点し2失点差で敗北
・0-2で前後半終了し延長戦またはPK戦で勝利
スタメン
バルセロナは直近のセビージャとのリーグ戦の時と同じメンバーで挑んだ。3-5-2のフォーメーションでデンベレがメッシと2トップを組む形となった。
セビージャは直近のバルセロナとのリーグ戦から6人を変更。フォーメーションは4-3-3だったが押し込まれる展開となったので4-2-3-1気味となった。怪我明けのオカンポスや古巣と対戦となるラキティッチはベンチスタートとなった。
試合内容
前半12分にデンベレのミドルシュートが決まりバルセロナが先制。圧倒的にボールを保持するバルセロナに対しセビージャはブロックを作り守備を固める。いくつかバルセロナがチャンスを作ったもののデンベレのゴールのみで前半終了。
後半もバルセロナペースで試合は進むがなかなか得点まではいけない。すると73分にセビージャがカウンターから途中出場のオカンポスがPKを獲得。オカンポス自らキッカーを務めるもテアシュテーゲンに止められてしまう。バルセロナは続々とアタッカーを投入し攻勢にでる。後半アディショナルタイム(90分+2分)に途中出場のトリンコンが倒され、倒したセビージャのフェルナンドはこの日2枚目のイエローカードで退場となる。90分+4分のCKで1度はクリアされるがグリーズマンがクリアボールを拾いクロス、中にいたピケが頭で合わせて土壇場で同点とする。そして後半も終了。2戦合計2-2の引き分けで延長戦へ突入する。
延長戦も1人多いバルセロナが優勢に試合を進める。95分にジョルディアルバのクロスに途中出場のブライスワイトが頭で合わせて勝ち越しに成功。1人少ないセビージャはなかなかチャンスを作れず得点を奪えないまま試合は終了。3-2でバルセロナが勝利した。
試合ハイライト動画
・DAZN
バルセロナの新システム
奇跡の大逆転で決勝進出を決めたバルセロナですが、この試合に3-5-2のフォーメーションで挑んだのは1つの大きなポイントでした。セビージャは直近のバルセロナとの対戦でこの新システムと戦い完敗していました。
・セビージャのプレスとバルセロナのビルドアップ
セビージャは4-3-3のフォーメーションで前半は立ち上がりから前からプレスをかけてバルセロナのビルドアップを封じようとしました。
しかし、このように前からプレスをかけましたがバルセロナのパスワークで回避されてしまうので後退しブロックを作ることを余儀なくされました。
またセビージャはデヨングとオリベルでプレスの形を変えて圧力をかけるシーンもありましたが、ラングレやミンゲサからドリブルで持ち上がられてしまうので上手くハマりませんでした。
そして最終的には4-3-3でリトリートする形になりました。
・リスクマネジメント
バルセロナは3バックにしたことで攻守のバランスが良くなりました。
これまでは4バックで両サイドバックが高い位置を取っていたので2CBs+ブスケツというような形が多く、カウンターでピンチになる場面がよくありました。ですが新システムでは攻撃時には3バック+ブスケツという形になるのでカウンターのリスクマネジメントがより良くなったと思います。
スタッツを見てもこの試合でのセビージャのカウンターは1回のみでした。
セビージャはCFのL.デヨングを起点にカウンターを仕掛けたかったところですが、この試合ではL.デヨングはピケやラングレの徹底マークで潰されてしまいボールをキープできるポイントがなかったのでゲームを厳しくなってしまいました。
またピケ、ラングレ、L.デヨングの3人のデュエルのスタッツ(Ground Duels:地上戦勝利数、Aerial Duels空中戦勝利数)を見てもバルセロナがL.デヨングに仕事をさせなかったことがわかります。
ピケやラングレの対人の強さとミンゲサのスピードを活かしたカバーは非常に相性が良くバランスが取れているなと感じました。後ろが安定したことでよりWBやIHが前に出て行けると思うので3バックにして得られる恩恵は大きいと感じました。
また守備時には5-3-2の形で守り最終ラインには5人が並びます。5バックにしたことでディフェンスラインが1人増えることでWBのジョルディアルバとデストの守備の負担が分散されたことも大きいです。彼らの攻撃面でより輝ける選手だと思うので、彼らの守備の負担が減り攻撃にエネルギーを使えることはバルセロナの攻撃力を増加させるポイントになると感じました。。
・デンベレの起用法
新システムになってからデンベレはCFとしてプレーすること多くなりました。元々はウイングの選手で快足を活かしたドリブル突破や両足使いこなせる器用さが魅力の選手です。
この3-5-2のシステムでFWで起用されている理由が3つあると思います。
①ラインブレイカー
デンベレの特長の1つである快足を活かして相手ディフェンスの背後に飛び出すことを期待されて起用されていると思います。これまでバルセロナはなかなか深さを出すことができなかったので、相手にコンパクトに守られてしまい苦しむことが多くありました。しかしデンベレを起用することで深さを出せるようになったのは大きいと感じました。
前半5分のデンベレがペドリからスルーパスを受けてシュートしたシーンですが、マークしていたクンデもデンベレのスピードについていくのがやっとで寄せ切れていませんでいた。
こうしたディフェンスラインの背後を取れる選手がいることで相手のディフェンスラインを下げさせることができます。実際にこの試合でも途中からセビージャはラインを下げてリトリートしていましたし、デンベレを警戒していたのは間違いないと思います。
②両利き
デンベレは両足を遜色なく使いこなせるので中央でプレーするとその優位性が際立ちます。
イメージ:サッカーキング
この試合のデンベレの得点を見てもわかるように右足でも強烈なシュートを打つことが出来ます。CF(2トップの一角)に入ることでどちらのサイドに流れてもカットインの選択肢を持てるので両利きのメリットが出やすいです。また相手ディフェンダーからすると両足警戒する必要があるのでシュートコースやパスコースの遮断の仕方が難しくなります。
③守備
デンベレは守備は上手くないので守備のタスクを変えることで負担を減らす狙いもあると思います。CLのPSGとの試合ではデンベレのサイドを狙われていましたし、ウイングでの起用となるとどうしても自陣深い位置まで守備が必要になってきます。
CF(2トップの一角)としてプレーすることで守備のタスクがより前になりますし、基本的にプレスがメインのタスクになるので失点につながるようなことはありません。そういった意味でもトップ起用は理にかなっていると感じました。
<課題>
引いて守ってくる相手だとデンベレの良さが出にくいことです。セビージャが途中から前からプレスするのをやめてリトリートに変更しましたが、やはりスペースが狭くなりデンベレが目立つシーンが減りました。クーマン監督もそれは理解していてデストを下げてグリーズマンを投入しデンベレを右サイドに移動させました。
また崩し(PA内への侵入)の部分でも課題があるのかなと感じました。バルセロナは特にワンツーや選手のパスワークでPAに侵入する傾向が強いです。例えばデンベレがゴールを決めたシーンでもメッシとのワンツーを失敗しています。結果的にゴールに繋がりましたが狭いエリアでの細かいプレーや判断に関しては今後CFとして起用するときの課題になると思います。
ロペテギ監督の戦術と采配
セビージャは4日前のリーグ戦でバルセロナに完敗だったことや2点リードしている状態でこの試合を迎えました。最終的にセビージャはバルセロナに大逆転をされて敗退となるわけですが、ロペテギ監督の采配や戦術が悪かったから負けたというわけではないと思います。
①前からプレスをかけてショートカウンター
まず最初のセビージャのプランが4-3-3で前からアグレッシブにプレスをかけていきバルセロナのビルドアップを封じようというゲームプランです。しかし先程説明したように上手くプレスがハマらなかったことで、ブロックを作りカウンター狙いへとシフトしました。
②ブロックを作りカウンター
前からプレスがハマらないこともセビージャからすると想定内だったと思います。やはりバルセロナはパス回しが上手いチームですしリードしていたこともあり後退してブロック作る選択をしました。
特に後半からはより守備的に戦うことをロペテギ監督は選びました。
リトリートして背後のスペースを狭くすることでデンベレの裏への抜け出しをケアするという狙いもあったと思います。
ディフェンスラインの位置を低くしスペースをなくしたことで明らかにデンベレの裏への脅威は減りましたし、バルセロナもなかなかスペースがない中で崩していくのは苦戦していました。
もちろん重心を後ろにしたことで前で起点が作れなくなってしまったことはありますが、この采配は一定の効果があったと感じました。
③選手交代
この試合で先に選手交代を行ったのはセビージャでした。後半の早い段階にデヨングを下げてラキティッチを投入。レキク、オカンポス、ヘスス・ナバスらを投入することで守備のバランスを変えずにカウンターに出ていきける運動量を確保しました。ロペテギ監督の選手交代で「守りながらカウンターを狙う」というわかりやすいメッセージを送ったことでセビージャの選手達もやることがはっきりしたと思います。
そして73分にカウンターからオカンポスが倒されPKを獲得したことを考えると、もしPKが決まっていたらほぼ試合が決まったと言っても過言ではない得点になったと思うのでロペテギ監督の采配は良かったと思います。
④想定外
もちろん時間が経つにつれてバルセロナがより攻勢に出るのはロペテギ監督も想定していたと思いますし、守りながら前がかりになっているところをカウンターで点が取れればというプランもほぼ成功と言えると思います。
ただ想定外のことが起きたのがロペテギ監督のゲームプランに大きく影響を与えたと思います。
・フェルナンドの退場
この試合でCHに入っていたフェルナンドの退場はセビージャにとっては大きなダメージでしたし、ロペテギ監督も想定外だと思います。あのシーンでトリンコンを倒す必要はありませんでしたし守備で重要な役割を果たしていただけに痛い退場となりました。ただそれでも残り時間はわずかで1人少なくても守り切れれば問題はありませんでした。
・失点時の対応
セビージャが守りきれていればロペテギ監督の采配は称賛されたかもしれません。ですが失点時のディフェンスの対応はロペテギ監督の更なる想定外だったと思います。
これは結果論になりますが、D.カルロスのグリーズマンへの対応も冷静さを欠いていたかなと感じました。グリーズマンは左利きですので左足でのクロスを警戒するべきでしたが、右足のキックフェイントにあっさり引っかかり左足でクロスを上げられてしまいました。
⑤延長戦
延長戦に突入するとロペテギ監督は1人少ないので5-4のブロックを作りバルセロナの猛攻に耐えようとしました。しかし、これが結果的に中の選手が多すぎてマークが疎かになるということを引き起こしてしまいました。ジョルディアルバのクロスも見事でしたがブライスワイトのをフリーでヘディングさせてしまいました。ただ一人少ない状況でしたので積極的に点を取りに行くのは現実的ではなかったと思うのでこの采配自体も悪くはなかったと思います。
まとめ
圧倒的にセビージャ有利の状況で始まった2ndレグですがバルセロナが決勝戦へと駒を進めました。後がないバルセロナは3-5-2のフォーメーションを採用しよりアグレッシブに戦ったことや選手交代が的中したことも大きかったです。バルセロナの新システムがどこまで通用するのか気になりますし、選手選考を含めて注目だなと感じました。
セビージャはゲームプランは悪くなかったですが心理的なところで選手達のパフォーマンスに影響が出たのかなと感じました。細かな局面でバルセロナのしたたかさや勝利への執念がセビージャを上回り、結果として些細な部分が勝敗を分けたのかなと感じました。ただセビージャも怪我人が戻ってきましたし、攻守にハードワーク出来る選手が多いので今後が楽しみなチームだと感じました。
両チームともにCLが残ってますしリーグ戦でも良い順位にいるのでここからさらに奮起を期待したいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
出典:
・サッカーキング
・Sofascore
・Getty images
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