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「もっとコーチングをしなさい」

先日、カーディフシティアカデミー内の全てのコーチ向けにミーティングがありました。3ヶ月に1回、アカデミー内の活動報告と振り返りを行うために開かれています。

ミーティング前の様子

そのミーティング内では昨年の11月から新しく就任したアカデミーダイレクターからのアカデミープログラムの振り返りと改良プランのプレゼンテーションがありました。

例えば、カーディフシティのトップチームのスカッド内に4年後までに12人のアカデミー出身の選手が所属していることを『夢』とし、10人が所属していることを『理想』、そして8人が所属していることを『プライド』というように位置付けていました。現在カーディフシティのトップチームには6人のアカデミー出身の選手が所属しており、この数字を維持しつつもさらにその先を見据えていこうという話でした。

また、その他にもアカデミーとしてのビジョンの提言があり、施設の充実やコーチングの向上などが主に議題に上がってました。

特にアカデミーダイレクターからのメッセージで強調されていたのは「我々はもっとコーチングをしなければいけない、コーチというリソースを無駄にしていたらもったいない」でした。

例えば試合中にただタッチラインで試合を眺めているのではなく、選手のパフォーマンスの向上に繋がるような影響を与えることが求められました。特にアシスタントコーチに対してしっかりと役割を与えることでタスクを明確にしてコーチというリソースをフルに活かすことが重要で、監督が自チームを指導するのであればアシスタントコーチは対戦相手を観察してどう攻略するかを考えることや、個人にフォーカスしてより濃密な情報を与えてあげることが必要です。

カーディフのアカデミーでは1つの学年に最低2人はコーチが配置されているので、練習中や試合中に1人のコーチがリードして指導を行っている際に、他のコーチがボーッとしている時間を少なくすることが求められました。

練習中のアシスタントコーチのあるあるが、メインコーチが練習を回し、練習のテーマに沿って全体にコーチングを行うために、アシスタントコーチはただプレーを眺めていたり、ボールを拾っていたり、盛り上げ役に徹してしまうというような立ち回りです。これらの役割は「本当にそのアシスタントコーチじゃないといけないのか、もっと他にできることがあるのではないか」という視点で考えることが重要だと思います。

メインコーチが全体にコーチングしているのであれば、選手個々にコーチングしたり、練習のテーマがポゼッションなのであれば、守備側のチームに対して「どうボールを保持してくる相手に対して上手くプレスをかけてボールを奪えるか」をコーチングすることも可能だと思います。アカデミーダイレクターからの「あなた方はコーチなのだから選手たちを最大限サポートして選手を上達させなければならない」という言葉は非常に重要なメッセージだと感じました。

限られた時間の中でコーチというリソースを最大限活用して選手の成長をサポートすることはどのクラブにも共通して不可欠なことだと思います。

コーチングに関しては、より具体的な話があり、「サイドで積極的にローテーションを取り入れていこう」「CKを守る時は配置をこうしよう」というような戦術的な改革案も出されました。また、普段の練習メニューに関して「もっと『ペースの変化』と『様々なシチュエーション』を取り入れるべきだ」という提言がありました。

パススピードの変化やパスのテンポに変化が加わるだけでも、より試合に近い感覚でプレイを行うことが求められますし、選手の適応能力を伸ばすことが期待できます。また様々なシチュエーション(ピッチサイズ、ピッチの形、プレイヤーの人数、条件やルールなど)を取り入れることで、より意図的で効果的な練習にすることができます。しっかりとチーム・個人のパフォーマンスから逆算して練習メニューを作ることが大切だと思いました。

そして、このミーティングの次の週にはコーチングカリキュラムの見直しが行われました。

アカデミーダイレクターの助言をもとに従来のゲームモデルやプレイ原則を1つひとつ見ていきアップデート。新たなゲームモデルとプレイ原則をもとにコーチングカリキュラムも更新されました。練習前にコーチングカリキュラムの見直しを行ったため、時間が足りずにコーチングカリキュラムは完成しきれませんでしたが、しっかりと根本から見直して再検討することは必要なプロセスだと思います。来週に新しいコーチングカリキュラムが完成する予定です。

カーディフシティU11/12のゲームモデル
カーディフシティU9/10のゲームモデル

今回のミーティングを通じて感心したことはコーチの誰1人として現状に満足することなく、「よりチーム・クラブを良くするためにはどうしたら良いのか」をみんなが考え、その考えを共有し、それを汲み取ってクラブのプログラムに反映されていることです。そして現場で働くコーチの方々はアカデミーダイレクターの言葉を真摯に受け止め、理解して、新たな試みとして練習や試合で実戦していく柔軟性が海外らしいなと感じました。当然、コーチとしての哲学が必ずしも合致するわけではありませんし、好きなプレーやスタイルも異なるとは思いますが、言われたことを自分の腑に落ちるように噛み砕いて理解することで現場に反映されていることがわかりました。「クラブとしてこうしていこう」というお話から現場に反映されるまでの一連のプロセスを見ることができたのは素晴らしい経験になりました。

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Gyo Kimura
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