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UEFA Aライセンス 実技試験①原則ベース練習【コーチングログ#21】

5月から始まったUEFA Aライセンスではライセンスを取得するために様々なタスクや課題をこなしていかなければならない。

UEFA Aライセンスは1年かけて取得する長丁場のコースとなっており、ウェールズサッカー協会でUEFA Aライセンスを取得できるのは年間で50人となっている。

UEFA Aライセンスの受講者とスタッフ

5つの課題

大きく分けて5つの課題を修了することで初めてUEFA Aライセンスが交付される。

①100%の講義やレジデンシャルブロックへの出席率
オンラインでの講義や年に3回あるレジデンシャルブロックと言われるコーチング合宿への出席が必要。

②オンライン学習
オンラインにアップロードされているコーチング理論やマネジメント理論の録画レクチャーを視聴して、講義の内容に関するレポートを提出。提出するレポートは12個。

録画レクチャー

③指導案と振り返り
40個の指導案の作成と20個の振り返りレポートを作成して提出する。

④プレゼンテーション
1番最後のレジデンシャルブロックでこのUEFA Aライセンスのコースで何を学んだかをプレゼンする。

⑤5つの実技試験で70%以上の成績を取る
5種類の練習(原則ベース、個人フォーカス、IDP、チーム練習、試合準備練習)の実技試験で70%以上の成績を取ることが必要。

5つの実技指導をトータルで70%以上取ることができれば指導実践はクリアとなる。
コース一年の流れ

今回はだいぶ日が経ってしまったが、UEFA Aライセンスの1つ目の実技試験を終えたので、その内容を振り返っていく。

要項

実技指導①では原則ベース練習を行う必要がある。
コースの始めに予め作成した自分自身のゲームモデルに沿って実技指導も練習メニューを作成する必要がある。

今回はミドルサードでの『前進』をテーマに練習メニューを作成。そして、この練習で落とし込むプレー原則は下の画像を参照。

ゲームモデルの一部

そして、ゲームモデルに沿ったプレー原則を落とし込むだけでなく、戦術的ピリオダイゼーションも反映させる必要があり、マッチデイから逆算した負荷のかけ方やオーガナイズ、更には取り入れるフィジカル要素や技術的要素も考慮して練習メニューを作成する必要がある。

練習メニュー

4v4+4のポゼッション練習

テーマ: ミドルサードでの前進
MD-4 (球際の強さ、ハイインテンシティ)
5分×3セット+コーチング

・12人
・35ヤード×25ヤード
・コーン、マーカー、ビブス、ボール

トレーニングのオーガナイズ

説明
・2チーム(図の赤と青)が各ハーフに入りオフェンスとなり、残りの1チームがディフェンス(黄色)。
・ディフェンスチームは3人までプレスさせることができて、残りの1人は中央でインターセプトを狙う。
・オフェンスチームは自陣で3本パスを繋ぎ、反対のハーフピッチへパスを通すことができれば1点。
・ディフェンスチームがボールを奪い、反対のハーフにパスを繋げることができれば、ボールを失ったチームと攻守を交代する。

プログレッション
1.ディフェンスチームは何人でもプレスにいける。
2.オフェンスチームはハーフレーンを通過させるパスを出す場合、3本パスを繋がなくてもパスをすることができる。

コーチングポイント
・ボール保持での4人の立ち位置(3つの選択肢を確保できているか?)
・ピッチを広く使えているか
・相手のプレスやボール移動とともに立ち位置を変えられているか
・プレス回避の方法(ドリブル、ワンツー、レイオフ、サイドチェンジ)
・反対側で待機しているチームの準備
・技術(パスのスピード、精度、コントロール、)

実技試験の様子

指導案(英語)をダウンロードしたい方は以下のリンクからどうぞ。

感想とリフレクション

まず、ピッチのオーガナイズでハーフレーンのところにはマネキンを置いて、より人と人の間を通すイメージを作りたかったが、この日はマネキンがなかったため大きめのコーンで代用。その分、ハーフスペースやハーフレーンの意識は希薄になってしまった。更にはピッチサイズが少し狭すぎたような印象を指導してて受けた。横幅は丁度良いサイズだったが、縦幅が短く、ボール保持しているチームは自陣で3本パスを回すことに苦労して、かなり窮屈にプレーしているように見受けられた。選手のレベルからするともう少しピッチを大きくして、丁寧に状況判断ができる環境を作ってあげることが必要だったかもしれない。そして、タイムマネジメントが上手くいかず、20分予定の練習が20分50秒くらいまで伸びてしまった。最初のトレーニングの説明から練習時間はスタートし、コーチングなどの全ての練習時間が基準となるため、フリーズコーチングやセット間のフィードバックをもう少し簡潔にまとめる努力が必要だった。

上手くいった点としてはコーチングのディテールはバランスが取れていて良かったと思う。技術的なコーチングや選手の立ち位置などの個人戦術やユニット戦術にも指導することができた。更にはプレー原則を意識させるようなレイオフやサイドチェンジといったラインブレークの方法を提示することができたので、今回のテーマである原則ベースの練習を上手く実装することができた。

・上手くいったポイント
→コーチングのディテール
→ゲームモデルやプレー原則とマッチした練習の内容

・改善点
→ピッチサイズ(縦幅がもう5ヤードあると良かった)
→タイムマネジメント(フリーズコーチングやチームトークでの時間の使い方)

結果と評価

後日に届いた採点者からの結果では10%中8%を獲得。これにより残りの4つの実技試験で90%中62%を取ることができれば実技試験の課題はクリアとなる。

8%を獲得

そしてこの8%は各評価項目の平均点数が反映されている。以下が各評価項目。

5段階評価で全ての評価項目が3以上でなければならない。これらの平均点が実技試験の結果となる。

そして、各評価項目を見てみるとトレーニングのオーガナイズ(ピッチサイズ、使用器具、セット数、休みとプレー時間のバランス)のところと適切な介入(時間と質)のところが3点という評価となっている。おそらく、これらの点数が他の項目よりも低いのは、前述したようにピッチサイズが狭すぎたことと予定していた練習時間の20分を超過してしまったことが考えられる。

実際に練習の時間のデータを見てみると20:44秒の練習時間の内、アクチュアルプレーイングタイムは13:58で67%程。基本的に70%以上が好ましいとされているため、もう少しまとまったコーチングが必要だろう。

練習時間のデータ

実際に採点者から具体的な改善点を聞いたわけではないが、もう少し具体的なコーチングをすることができれば全体的な点数ももう少し上がったかもしれない。やはりコーチングでは「もう少し内側」や「広がって」というような抽象的な言葉を使ってしまいがちだが、「どのくらい/どこまで内側へ移動するのか」や「どのくらい広がるのか」を言語化することが求められる。

次回の実技試験に向けて細部の部分を修正してより良い結果が出るようにしておきたい。

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Gyo Kimura
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