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吉福伸逸さんの仕事② 『タオ自然学』

 吉福伸逸さんの重要なお仕事その2。『タオ自然学 現代物理学の先端から「東洋の世紀」がはじまる』(フリッチョフ・カプラ著 吉福伸逸、田中三彦、島田裕巳、中山直子訳 工作舎 1979年初版)。いわゆるニューサイエンス・ブームの先駆けとなった一冊です。

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 こちら1979年の初版です。デザインが工作舎っぽいですね。

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 こちらは1990年の改訂版。今も書店で手に入ります。

 原題は"The Tao of Physics"。「物理学の道=Tao」とでもいうのでしょうか。副題は”An Exploration of the Parallels Between Modern Physics and Eastern Mysticism"。現代物理学と東洋神秘主義の類似点についての考察。1970年代のアメリカのベストセラーで、その後、この本にあやかるように、"The Tao of〜”という本がたくさん出たそうです。

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 こちらは原書(1975年の初版)。タイトルが"The Tao of〜”なのに表紙の写真がブッダ? 西洋人にとっては道教も仏教も同じようなものだったのかもしれません。あるいは出版社がSHAMBARA(チベット仏教の高僧チョギャム・トゥルンパ・リンポチェの関係)だったから? その点、日本版の表紙は太極図をデザインしていて、さすがだと思います。

 今回は翻訳者のひとり、サイエンス・ライターの田中三彦さんにお話をうかがうことができました。田中さんはエンジニアとして福島第一原発の原子炉圧力容器の設計に関わったのち、退社。1990年に『原発はなぜ危険か』(岩波新書)を著し、2011年の東北大震災以降は、国会の事故調(東京電力福島第一原子力発電所事故調査委員会)にも加わり、積極的に発言している方です。アメリカ西海岸でオルタナティブ・カルチャーの洗礼を浴びた吉福さんと、学者の家に生まれ自らも科学者を目指していた田中さん。なにからなにまで違った二人ですがなぜか不思議とウマが合い、生涯を通じての親友となります。

 現在も宗教学者として活躍する島田裕巳さんは当時、東京大学大学院で宗教学を学ぶ学生でした。

『タオ自然学』は工作舎の歴史を通じてもっとも売れた本となりました。工作舎と吉福さんの良好な関係はこの後も続き、1984年には同じくカプラの大著『ターニング・ポイント 科学と経済・社会、心と身体、フェミニズムの将来』(吉福伸逸+田中三彦+上野圭一+菅靖彦訳)を出すことになります。

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 700ページを超える大著です。環境、格差、心身の危機…。人類が抱える問題すべてがここに詰め込まれていると言ってもいい。これを書いたカプラもすごいと思いますが、翻訳した吉福さんたちもすごい。出した工作舎もすごい。1984年当時で定価2900円は価格破壊ではないでしょうか。

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 1995年には300ページくらいに整理された『新ターニング・ポイント ポストバブルの指針』が出ています。こちらはいまも入手可能です。



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