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競馬で会社が倒産した話

「強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いのだ。」
フランツ・ベッケンバウアー 

第10回西ドイツ大会(1974年)決勝で、優勝候補であるオランダと、“皇帝”フランツ・ベッケンバウアー率いる西ドイツの試合にて、優勝トロフィーを手にしたフランツ・ベッケンバウアーが語った言葉だ。


今から5年前、当時20歳だったおれは起業した。
サラリーマンをやるつもりはなかったし、そもそも社不のギャン中が毎朝ちゃんと起きれる訳がなかった。

早速、ブルジョワのおじいちゃんにマルチ講のような話術で資本金500万を引っ張り、法人を設立した。

問題はそこからだった。

「この500万をどうやって増やすか…」

田舎の老人しかいないパチ屋(通称:老人ホーム)でおれは初代シンフォギアのハンドルとともに頭を捻っていた。

時は流れ12月、いつものようにパチ屋に行くと、休憩所で競馬中継が流れていた。

「コレだ… 」

2019年12月22日 第64回有馬記念 出馬表

この年の有馬記念は特別だった。

出走馬16頭中11頭がG1ウィナー、そこに凱旋門賞帰りのフィエールマンとキセキ、豪州G1馬リスグラシュー、菊花賞馬のワールドプレミア。
空前絶後の豪華メンバーだった。

そんな豪華メンバーを退け、単勝1.5倍の圧倒的人気に押されたのは、最強牝馬「アーモンドアイ」だった。

この馬がどれくらい強いかというと、デビュー戦の新馬2着、前々走の安田記念で3着こそあれど、デビュー10戦8勝, 2着1回, 3着1回と全てのレースで馬券に絡んでおり、海外G1も制覇した史上5頭目の牝馬三冠馬だ。

アーモンドアイの有馬記念前の戦歴

「強いやつが勝つに決まってる」

いまおれが朝倉未来と100回ブレイキングダウンで勝負しても100回ボコられるのが自然の摂理だ。

おれは迷わずアーモンドアイに500万円Betした。

投票確定のボタンを押す瞬間、今は亡きおじいちゃんの顔が浮かんだが、既に頭の中は500万がいくらになるかしか考えていなかった。

場末のパチ屋にファンファーレが鳴り響く。

休憩所に老人たちも集まり、みんなで運命の一戦を見届けた。


当時インスタのストーリにあげた投稿。
気持ちは完全にカイジだった。

馬券はアーモンドアイが1着前提に適当に買った。
アーモンドアイが1着であれば大体当たるような買い目。


データは残っていなかったが、残りの300万はアーモンドアイを軸に3連単と単勝を買ったと思う。


15時25分、弊社の夢を乗せた16頭がゲートを出た。
道中、アクシデントもなく、アーモンドアイは良い位置に付けていた。

勝負の第四コーナー、馬なりで出てきたアーモンドアイは前から4番目の絶好のポジション。

左から4.5頭目、水色の勝負服がアーモンドアイ。

「勝った…」

完全に勝ちパターンだった。

ここからムチが入り、鬼の末脚でゴール板を抜ける。

何度も見た光景。デジャブだった。

左から3頭目がアーモンドアイ

残り250m、アーモンドアイは先頭に立った。
2,000,3,000万円という金が見えてきた。

「抜けろっっ」

声なき声を絞り出した次の瞬間

「・・・ど、どこいった?」

アーモンドアイはおれの意識とともに画面の外へフェードアウトした。

結果は9着。

12月決算の弊社は売上0、特別損失500万で第1期目の決算を終えた。



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