アップリンク・ショック以降、須藤の焦点は再び数字・結果から人に移っていった。改めてそのことの重要性を認識したと言っていい。
そんな中、須藤にとって「人はあたたかさみたいなものを求めてるんだ、それがもっとも大事なんだ」ということが確信に変わる出来事があった。
それが2月1日から3日間に渡って吉祥寺NEPOで行われた「Dialogue Live」だ。
これは彼らが東京公開で知り合ったクリエイターの作品の展示、ひとつのテーマについて語り合うDialogue、音楽ライブが合わさった複合イベント。それまでの東京で数々のイベントは行っていたが、須藤は新たな気持ちで、この「ART+TALK+MUSIC」の催しに向き合った。
半年前の広島では聞かなかったが、今回須藤が何度も繰り返していた言葉があった。
「あたたかみ」
それは東京という場所だからこそ切実に浮き彫りになった、彼の理想郷なのだろう。
東京公開の終盤から『逆光』のインスタグラムには、再び地方からの報告が入るようになる。名古屋、岐阜、京都、大阪、神戸、福岡……これからの公開に向けての仕込みと新たな出会いの日々。
それにしても笑ってしまうのは、彼らのメンタルがものの見事に季節と符合していることだ。真夏の広島・尾道ではじけ、真冬の東京でちぢこまった。自然のままに生きる彼ら。ではこの春、3月25日から公開する京都では何を見るのだろう?
京都は『逆光』の前日譚ともいえる、須藤と渡辺の出会いとなった『ワンダーウォール』の街。自らのルーツですごす春うららで、またやわらかな乱反射が描かれていく。 (おしまい)