インタビューの準備で重要なのは〈情報収集〉より〈完成イメージ〉
インタビュー相手の著書を全部読める?
インタビューの前に、相手の情報を徹底的に集めましょう——。
「インタビューのコツ」といった趣旨の記事を読むと、よくそんなことが書かれています。
なるほど。まちがいじゃない。けれど、「では、相手に100冊の著書があったら、それらをすべて読み通すのか?」という(いささか意地悪な)疑問も生まれます。
個人的な趣味で読むならいい。相手が昔から知る人で、すでにすべての著書を読んでいる、といったケースもなくはないでしょう。
しかし、【仕事】としてインタビューを行なうなら、相手は初めて知る人物、名前だけは知っているがどんな活動をしているかはよく知らない人。そんな場合が多いのではないでしょうか。
そもそも100冊の本を読む時間があるのか。あったとして、ビジネス上のメリットはあるのか。そんな疑問もあります。
さらには、インタビューの相手が有名人・著名人とはかぎりません。ふつうに高校に通っている女の子かもしれません。その場合も、相手の情報を徹底的に調べるのでしょうか。
インタビューの前に情報を収集することは、たしかに重要です。でも、どんな情報をどのくらい集めるのか。そこでは情報を取捨選択する基準が必要になるはずです。
闇雲に情報を集めても、それらをページづくりに活かせる可能性は低いでしょう。
「ページの完成イメージ」から逆算して情報を集める
では、何が情報収集の基準となるのか。それは「ページの完成イメージ」です。「完成イメージ」から逆算すれば、どんな情報が必要かは必然的にあきらかになります。
読み手としてどんな人を想定しているのか、読み終わったあと読み手にどんな利益をもたらしたいのか、どんな気持ちになってもらいたいのか、といった要素を考慮しながら、情報を集めていくわけです。
私自身の経験をお話ししましょう。
とあるアイドルグループのメンバーのひとりにインタビューをすることになりました。掲載する媒体は、アイドル雑誌や音楽サイトなどではなく、犬の専門誌です。そのメンバーには犬の飼い主として話をお聞きすることになったのです。
そのとき私が事前にやったのは、アイドルグループのCDを聞いたりDVDを観たりすることではなく、彼女のブログから犬のことが書かれた記事を探し出し、ひたすら読み込むことでした。
もちろん、アイスブレイクのための材料として、最近の活動を知るために楽曲を聴いたりするのはいいでしょう。ですが、それはインタビューの本筋ではありません。実際、アイドル活動については、ひとことも質問しませんでした。「完成イメージ」ではアイドル活動について触れることを想定していなかったからです。
「完成イメージ」から一連の作業を逆算する——。これは、インタビューにかぎらず、ライターとしての仕事のあらゆる局面で重要なふるまいだといえるでしょう。
*この文章は「インタビュー・マニュアル」制作のためのメモです。
*ここで紹介するのは、唯一の正しい方法ではありませんが、20年以上のライター経験から得た有効なノウハウのひとつだと考えています。