インタビューのメモは〈手書き〉と〈録音〉の合わせ技が最強?
インタビュー中のメモは〈手書き〉と〈録音〉のどちらがよいのか? これまで下記の投稿において、〈手書き〉のほうがメリットが大きいと述べてきました。
○インタビューのメモは〈手書き〉〈録音〉どっちがいい?
○インタビューで話を〈聴く〉には〈書く〉しかない
○インタビューの手書きメモは〈トリガー〉と〈リマインダー〉で攻略する【実践テスト付き】
しかしながら、こう思う人もいるかもしれません。
「むりやり〈手書き〉と〈録音〉のどちらかを選ぶのではなく、両方のメリットを生かす“合わせ技”にしてみては?」
〈手書き〉でメモをとりつつ、同時にICレコーダーを回しておこうというわけです。
今回はこの方法について述べてみます。
対談では録音もしておくのはアリ
〈手書き〉派の私もICレコーダーを回したことがあります。たとえば、テレビのバラエティ番組のプロデューサーとアナウンサーが対談する企画です。
ICレコーダーを使ったのは、1対1のインタビューではなく、発言者が2人になるので、〈手書き〉のメモだけでは内容を書き取れないと考えたためです。
誌面では、おふたりが対話をしているように見えますが、実際は通常のインタビューのように、ひとりずつ質問を投げかけてそれに答えてもらった内容を「対談」のように構成したのです(ただし、おふたりはその場に同席はしていました)。
つまり、表面的には対談ではありましたが、1対1のインタビューと同じ方法論が使えるケースでした。
結果的には、テープ起こしをすることなく、〈手書き〉のメモだけで、原稿の9割ほどは仕上げることができました。
問題は残り1割です。ページの目的はその「9割」で達成できていると思いましたが、対談しているのが「バラエティ番組の制作者」という特殊なケースなので、もう一味プラスしたいと考えたのです。
先の投稿で述べたとおり、〈手書き〉で記録されるのは、インタビューのエッセンスです。これはメリットであると同時にデメリットでもあります。
つまり、あまり重要でないコトバは削ぎ落とされてしまうのです。ほとんどの記事はそのほうがメリットが大きいのですが、原稿にちょっとした“彩り”を加えようとすると、〈手書き〉では対応できないケースがあるのもまた事実です。
そこで、9割仕上がったところで録音データを聞き、プラスアルファの要素を拾っていきました。
今回の例でいえば、プロデューサーとアナウンサーのおふたりは、さすがバラエティ番組の制作者たちというべきか、誌面を楽しいものにするため、できるだけ“おもしろい”発言をしようとしてくれました。
結果的には、「○○○○(笑)」と(笑)を入れたりして、本筋ではないけどアクセントとなる発言を盛り込むことができたのです。これで原稿のクォリティがアップしたことはいうまでもありません。
ただし、この仕事をしたのは10年近く前であり、したがってライターとしての経験値もいまほど高くない時期でした。もしかすると、いまなら上記のような細かいニュアンスも〈手書き〉で対応できるのかもしれません(残念ながら、最近は「対談」のオファーがなく検証できていませんが)。
インタビュー中のメモは〈手書き〉を基本としますが、
・発言者が多い(「対談」や「座談会」など)
・細かい発言を原稿に生かす必要がある(そう想定される)
という場合は、〈録音〉もしてほいたほうがいい、といえるでしょう。
相手が話しのプロなら〈録音〉しておくと安心
上記のケースは10年ほど前でしたが、ごく最近(昨年の夏)にもICレコーダーを使いました。それは、前の投稿でも例に挙げている、大学の副学長へのインタビューでした。
ICレコーダーをまわした理由は3つです。
・事前準備における情報収集の段階で、相手がなにを言うか十分に予測できなかった。
・相手は大学の先生、つまり話すことのプロであり、発言量が膨大になることが予想された。
・〈手書き〉と〈録音〉の合わせ技の効果を実証したかった。
このときも、もちろんあくまで基本は〈手書き〉で、〈録音〉は保険のような位置づけでした。
先の「対談」と同様、原稿をほぼ仕上げたところで録音の内容を聞き、〈手書き〉で書き漏らしたであろう情報を付け加えようとしたのですが……。
結果的には、プラスする要素はなにもありませんでした。相手の話した内容はすべて〈手書き〉で網羅されていたわけです。〈手書き〉メモというトリガーを使って、〈脳〉に記憶していく方法の威力がここでも実感できます。
今回の相手は大学の副学長だったわけですが、お人柄は親しみやすく愛嬌があり(誤解を恐れずにいえば「下町のおばちゃん」といった風情)でインタビューは終始なごやかな雰囲気で進行していきました。
先の対談のように、そのなごやかなニュアンスを付け加えれば、楽しい原稿にはなったことでしょう。しかし、記事はあくまで受験生向けに大学の理念を紹介する“真面目”なものです。副学長の親しみやすさを表現することは目的にかないません(かといって、あまり堅苦しくしてしまうと読みにくくなるので、匙加減が難しいのですが)。
細かい発言を反映する必要がないなら、〈録音〉は不要であることがわかります。言いかたを変えれば、細かい発言を拾う必要があるかどうかは事前に判断しておく(発注者に確認しておく)ことが大切というわけです。
慣れていない人には“合わせワザ”は有効
とはいうものの、ここで述べてきたような〈手書き〉のメリットを最大限生かすには、それなりの経験は必要になるでしょう。
まだライター歴が浅く、インタビューの場に慣れていない人は、〈手書き〉と〈録音〉の“合わせワザ”は有効かもしれません。
先に紹介したケースを踏まえると、それは下のような場合です。
・発言者が多い(「対談」や「座談会」など)。
・細かい発言を原稿に生かす必要がある(そう想定される)。
・相手の発言内容が事前に予想できず、なおかつ発言量も多いと予想される。
・インタビューに慣れておらず、“保険”として録音もしておきたい。
ぜひ参考にしてみてください。
*この文章は「インタビュー・マニュアル」制作のためのメモです。
*ここで紹介するのは、唯一の正しい方法ではありませんが、20年以上のライター経験から得た有効なノウハウのひとつだと考えています。