『The Devil Within: Satgat』韓国から世界へ!インディー魂の職人技【受賞者ドキュメンタリー第6弾】
第1回GYAAR Studio インディーゲームコンテスト(以下、GYAARCon)を受賞した「The Devil Within: Satgat」は、中世と現代、東洋と西洋が融合したような美しいグラフィックが印象的なゲーム。インタビューに参加した両氏はスリリングかつ緻密なアクションシステムにも自信を持っており期待が高まる。Newcore Games(※)は韓国発のゲーム会社であり、グローバルでも数々のコンテストでの受賞歴を持ち、ゲーム業界10年以上の実力派のベテランたちが集まっている。メトロイドヴァニアライクな横スクロールアクションゲームの本作は、2024年上半期「Steam」でアーリーアクセス(早期アクセス)タイトルとして配信予定である。自分のゲームを作りたいという一心でインディーゲーム世界に飛び込んだ二人の話を聞いてみた。
■ 経験豊かなプロフェショナルが示す、インディーゲームの魅力と完璧なバランス
――遅ればせながら、受賞おめでとうございます。まず開発の体制について教えてください。
🔸Lee:私を含めて19名います。グラフィックが9名、QA含めて企画は6名、プログラマーは4名です。グラフィッカーは背景、キャラクター、アニメーションなどを分担していて、私は企画兼ディレクターをやっています。
――「Satgat」という名前はだいぶ変わってますね。世界観ともつながっていますが、Leeさんが考案したのですか。
🔸Lee:そうですね。当時「キム・サッカ(※)」というコンテンツにはまっていまして、それをモチーフにゲームを作ったら面白そうだなと思いました。
――少し発音しにくいですが、グローバルなファンの反応はどうでしたか。
🔹Cho:海外のユーザーたちがどう受け止めるか心配していましたが、ストリーマーさんとYouTuberさんの映像をみたらかなり正確に発音していましたね。彼らにとってSatgatという単語は一種の固有名詞にすぎずそんなに重要ではなさそうでした。ほとんどがDevil Withinにフォーカスしていて、内面の悪鬼と武士が対立したり協力したりしながらプレイするゲームなので、タイトルに対しネガティブな反応はありませんでした。意味や背景を聞くと納得していましたね。逆に韓国のユーザーからは最初はタイトルに惹かれた、興味深いとの反応が多かったです。
――19名という開発体制は初期から続いていたものですか。
🔸Lee: 最初は4人で始めました。開発を始めてすぐ、新型コロナウィルスの直撃とゲーム開発者の人件費高騰の影響で大変な時期もありました。小規模な会社として特に苦戦したのが採用でしたね。背景を2Dから3Dに方向転換した時期でもあり、3D開発者と原画担当を採用するまで10か月ぐらいかかりました。結局は外部からの採用は失敗し、社内でキャラクターモデラーをやっていた人が職種転換する形で異動しました。危機を乗り越えるまで約10か月かかったということになります。
――その過程で開発期間も人も増えたわけですね。
🔹Cho:もともとは10名を超えない規模でゲームを作りたかったんですが、2Dのプロトタイプのクオリティが思った以上に良く、より良いものにしたいという欲が出てきました。そのためには3Dで作った方が良いということでみんな同意しました。ただ、3D開発には結構な人数が必要です。都度状況に応じて人を採ってたらこんなに規模が大きくなったわけです。
――もうすぐ発売されますか。
🔹Cho:今年4月9日に「Steam」でアーリーアクセスタイトルとしてリリースします。それから年末にはコンソールとPCの正式バージョン発売を計画しています。
――お二方のゲーム原体験について教えてください。
🔸Lee:私は子どもの頃アーケードのゲームセンターに通うのが好きでした。当時記憶に残っているのが「ストリートファイターⅡ」が発売された時期で、その時から色んなゲームを遊ぶようになりました。実際プレイもうまい方でした。家庭環境があまり良くなくて貧乏な生活を過ごしていましたが、それでも親は小3の時からコンピューターの習い事に行かせてくれました。唯一私に許されていたのがPCの雑誌と習い事で、コーディングも習っていました。自分にはPCとかゲーム機はなかったので、友だちの家に泊まりで遊んだりしましたね。子どもの頃からゲーム開発をしてみたいと漠然と考えていましたが、決心がついたのは高校1年生の時でした。PCを買ってもらい、色々触っているうちに、ゲームを作りたい、ゲーム開発者になりたいと確信するようになりました。
――高校1年生の時から進路を決めていたとは、だいぶ早い決断でしたね。
🔸Lee: 早い段階で決めていましたね。もともとは高校卒業後、すぐゲーム会社で働きたかったんですが、卒業した大学に初めてゲーム学科というのができまして、私が第1回の入学生になりました。
――今はゲーム企画をされているそうですが、途中でキャリアチェンジしたということでしょうか。それとも業界に入る時からゲーム企画者になりましたか。
🔸Lee:プログラミングが専攻でしたが、その時のゲーム業界は体制が整っていない歪な時期で、履歴書はプログラマー志望で提出していたのに、企画者として採用されましたね(笑)。韓国ではゲーム企画者という職種が珍しい時期でもありましたので、大学在学中に担当していたプロジェクトで自分が企画もやっていたと話したら、企画者になれという流れになりました。そういう経緯でゲーム企画をやってます。
――Choさんはいかがですか。
🔹Cho:私の専攻はゲーム開発ではないですね。ただ、幼い時からゲームが好きだったので、自然と職業としてゲーム業界を選んでみたいと思うようになりました。就職する時にちょうどゲーム会社の上場が相次いでものすごい注目を浴びていたので、前途有望だと思いビジネス部門で仕事を始めました。Leeのような泣ける話はありません(笑)。
――お二方はどこで出会いましたか。
🔹Cho: 今の会社は4人で立ち上げたのですが、Leeがその中核メンバーでした。CTOとアニメーション開発担当の人がLeeと十数年来の知り合いで、そのCTOと私がつながっていました。4人で偶然会う機会があってこんなゲームを作りたいという話で盛り上がり意気投合し、今に至っています。なので私とLeeは3年前に初めて会いましたね。
――みなさんゲーム業界長いですね。19名のうち、残りの方々も元々知り合いですか。
🔸Lee:一部はそうで、やはり経歴の長い人が多いんですが、新卒で入って成長しているメンバーもいます。
――コンテストに応募したきっかけは何ですか。グローバルでの受賞履歴もすごいですが、その情報はどこで得ていますか。
🔹Cho:インディーゲームスタジオなので広報やマーケの予算が皆無に近いんですね。みんなゲームを頑張って作っているんだけど、宣伝をどうすればいいか悩んでいた時期に、世界的にいろんなオンラインイベントやコンテストがあることを知り、出来る限りたくさんのコンテストに応募してみようと思いました。お金をかけずに宣伝できるチャンスだと考えたからです。コンテストを見つけては申し込むという繰り返しで、モーニングルーティンがゲームイベントやコンテストを検索することになりました。当時、バンダイナムコとして第1回GYAAR Studio インディーゲームコンテストを開催するというニュースをみて、すぐに応募しました。
――応募自体も大変ですよね。特に海外のコンテストだと言葉の壁などはありませんでしたか。
🔹Cho:我々のチームには幸いビジネス専任の人がいます。主に私の役割ですね。開発になるべく影響を及ぼさないように、文書作成や海外とのコミュニケーションをやっています。一昨年から海外のコンテストや展示会にいくようになって英語でのコミュニケーションも重要になってきました。そこに関しても運よく去年Robという素晴らしいスタッフが合流してくれて言語の壁はあまり感じません。コンテスト応募も数十回繰り返すうちにノウハウができて今はそんな大変じゃないです。
――コンテスト受賞前後で変わったことはありますか。
🔸Lee:バンダイナムコはネームバリューの大きい会社ですよね。このような会社で、しかも韓国でもなく、日本でコンテストを開催すると聞いた時、大きな期待はしませんでした。果たして注目されるだろうか。ダメなんじゃないかと思っていたのでびっくりしました。バンダイナムコという有名な会社が我々を選んでくれたということだけで、内部的にはかなりテンションが上がっていました。モチベーションが復活したきっかけになったと思います。あと、韓国の場合は、海外の有名なコンテストで受賞すると、噂が広まります。そこから他の開発会社とのネットワーキングも急速に進展しました。それにバンダイナムコから賞をもらったというのは対外的にもBtoB的にもネタになりますし。大企業の名を借りての宣伝効果もものすごい大きかったと思います。
――他に受賞のベネフィットはどうでしたか。
🔹Cho:一番大きいベネフィットは賞金ですね。分割支給ですが、賞金規模としては世界的にも最高レベルです。韓国で受賞したコンテストで5百万円ぐらいはもらったことがあります。資金面での援助なので直接ゲーム開発に役に立つ部分ですね。次はGYAAR StudioとPhoenixxが日本で開かれるいろんなゲームショーやイベントで宣伝もしてくれるので、その効果も大きかったです。そして、バンダイナムコエンターテインメントとバンダイナムコスタジオ、Phoenixxの現役開発の方たちがテストプレイのレポートを送ってくれて、ゲーム改善につながりました。
――他の受賞者のインタビューでもフィードバックが役に立ったとのコメントがありましたね。実際反映された部分はありますでしょうか。
🔸Lee: GYAARCon関連だけでなく、当時デモ版も公開していたので、いろんなチャンネルからもフィードバックをいただいていまして、共通する内容が多かったです。それをまとめて「Steam」で配信中のデモ版に対し去年10月改修を行いました。前後の反応をみると改善された部分に対するコメントがポジティブに変わっています。フィードバックをもらってなかったら今もネガティブな反応は変わってなかったと思いますね。
――他のクリエイターたちとの交流もありますか。
🔹Cho:唯一残念に思う部分です。専用Slackチャンネルで活発に交流自体は行われていますが、海外の会社としてはどうしても言葉の壁があります。東京ゲームショー2023の時、ネットワークパーティーにも参加しゲームの長所・短所について意見交換もしたりしましたが、物理的な距離や言語の壁が存在するという事実は否定できないですね。第1回の受賞者の8割が日本のチームです。毎月日本で試遊会が開催されるんですが、オフラインで参加できないのはとても残念です。第2回でまた他の海外受賞者が出たら、別軸でネットワークの輪が広がるのではないかと期待しています。
――先日English onlyのオンラインテストプレイ会というのも開催されたそうですが。
🔹Cho:今回は旧正月の期間がかぶってしまい残念ながら参加できませんでした。次はぜひ参加したいです。欲をいえば、韓国語をサポートして欲しいですが、すべての言語に対応するのはさすがに難しいと思うので、今回みたいに英語だけでも助かります。
――サポートで改善してほしい点はありますか。
🔹Cho:既に十分すぎます(笑)。1点だけ強いていうなら、もっと国際レベルでこのコンテストが知られて欲しいなと思います。すでに関係者の方には話していますが、コンテスト自体は素晴らしいですが、日本向けに特化しているという状況から脱し、もっと世界中のインディーゲーム会社に参加していただけるよう宣伝して欲しいです。実際今回は多くのチャンネルで広報もされていまして、私たちも周りの韓国開発者に口コミで情報を広めました。すごい良いコンテストだと思うので、世界中のみんなに知ってもらいたいと思っています。
――インディーゲームコンテストの種類は色々ありますが、GYAARConならではの差別化ポイントはありますか。
🔹Cho:他のコンテストは殆どが一過性のもので結果を発表し受賞式が行われると終わり、というケースが多いです。それに対しGYAARConは1年以上にかけてフィードバックを継続的に投げてくれるので、ビルドや品質管理にも役に立ちます。マイルストーン管理する時も、GYAAR Studioへのビルド納品をスケジュールに組み込んでいるので、開発には刺激になりますね。そこも他のコンテストに比べて役に立つポイントだと思います。
――去年東京ゲームショウにも出展されましたでしょうか。
🔹Cho:はい、二つのブースに展示していました。GYAAR Studio受賞作のインディーブースと、韓国ゲーム共同ブース。どれもBtoCで多くのユーザーに来場していただきました。
――現場のフィードバックはどうでしたか。
🔸Lee:現場ではボス戦だけ試遊できるようにしていました。自慢話になりますが、東京ゲームショウの韓国共同ブースでは我々のゲームが一番行列ができていました。難しいけどチャレンジし続ける、ボス戦をクリアするために、何回も並ぶ方もいらっしゃるなど、面白い経験でした。
🔹Cho:少し驚いたのは、韓国など他の国のユーザーに比べ日本のユーザーがソウルライク類ゲームに強いということです。ゲームパッドでアクションゲームをプレイするのが比較的簡単にできちゃう気がします。他地域でのイベントとは差別化された部分です。楽しかったです。
――現場ではゲームパッドでしたか。キーボードでプレイしていた時はパーフェクトガードがどうしもてできず、難しかったです(笑)。私が下手なだけですが、難易度調整もユーザーフィードバックの一つでしたか。
🔸Lee:それは難易度調整しないとですね。ボス戦が難しいという難易度に関するフィードバックはたくさん寄せられていましたね。実際改善したポイントでもあります。
――コンテスト応募当時の完成度はどうでしたか。
🔹Cho:2022年の12月だったのでアルファ版開発がちょうど終わったころかな。3Dリソースが出始めてた時です。
🔸Lee:デモ版開発も終わってない時期でした。アセット自体は多いが、ポリシングはできてない状態でしたね。
――にもかかわれず受賞されたわけですね。どういった点が評価されたと思いますか。
🔹Cho:ビジュアルの面で高い評価をいただいていたと思います。横スクロールゲームなのにアクション性に優れている部分やビジュアルのところで良い評価をいただいていたのではないかと思います。
――有名ミュージシャンとのコラボ記事もみました。
🔹Cho:それも日本に縁がある話ですね。去年BitSummitに出品しまして、Sonyの関係者に会う機会がありました。プレイステーションチームで私たちのゲームを担当されるPMさんがいるんですが、ありがたいことに、うちのゲームを結構気に入っていただきまして、知り合いにヘヴィメタル音楽をやってる人がいる、つなげようかと声をかけてもらい、マシュー(※)という人とコラボすることになりました。バンドでギターをやってる人ですが、同じくゲームを気に入っていただいて、気が合う感じでしたね。コラボ自体もあっという間に終わるぐらい順調に進みました。
■ インディーゲームの本質を明らかにし、定義をめぐる議論に終止符を打つ
――まわりに興味をもってもらったり楽しみに待ってくれているファンの方も多そうですね。安定的な大企業を離れて独立すると決心したきっかけはなんですか。
🔸Lee:もともとこの業界に入った時から起業への意志は強かったです。起業するには資金が必要です。そして一緒にやる人も集めないといけない。あとは私の意志を原動力にするだけでしたが、思ったより早く結婚し、子どもが生まれてしまったんです。予想より早く一家の大黒柱になって家族を養わないといけなくなり、一時期起業という夢から遠ざかっていました。このままいったらいつまでも独立はできないんじゃないかと悩んでいた時、ちょうど前の会社で担当していた「CROSSFIRE」のシーズン2チームに異動するようになって、ここに注ぐ熱情を自分のゲームに投入したいと思いましたね。家庭に金銭面での安定感と基盤ができたと思えた時期に、奥さんに相談しました。起業するなら、今しかない、これ以上時間が過ぎたらもうチャレンジできない気がする、と。今が適切なタイミングだと思ったので奥さんに許可をもらってから、一緒に働くメンバーを探し始めました。
――許可をもらえたんですね。
🔸Lee:はい、条件としては、家には資金援助を求めないということでした。私からは、1年ぐらいは生活費は入れないと宣言しましたね。
――一大決心でしたね。独立した後、理想と現実のギャップはありましたか。
🔸Lee:克服できないような難しい問題はないと思います。ただ、想定外のハードルが多かったです。不可抗力的状況の前で自分の無力さを痛感しました。新型コロナとか人が採れないなどの難関に直面した時に、こういう試練を克服できるかどうかは「運」で決まると思いました。そして私たちは運に好かれていた方だと思います。何とかここまで来れたんですが、運が悪い会社は結局生き残れず残念な結果になったケースもたくさん目の当たりにしました。結局問題っていうのは何時でも起こり得るものですが、それを解決できるかどうかは、克服しようとする意志と努力、そして運にかかっていると思います。
――Choさんがインディーゲーム会社に合流する際はどんな思いでしたか。
🔹Cho:特に人生における大きな決断という感じではなかったです。前の職場ではMMORPGやオンラインゲームベースのビジネスだけに注力していましたが、私も横スクロールのストーリーベースのゲームが好きだったので、そういうジャンルのゲームでビジネスをやってみたいという想いは常にありました。Leeも一緒だったので、みんなが作りだすものを一所懸命売ってみようと思っただけです。インディーかどうかは重要な問題じゃなかったです。作りたいゲームを作って、売りたいゲームを売ろう、という精神が今も続いてますね。
――まさにゲーム好きなゲーム一筋の人たちの胸に刺さるお言葉ですね。
🔹Cho:それがインディーゲームのメリットだと思います。インディーの定義についてよく議論されますが。
――私もその点が気になっていました。
🔹Cho:アジアではインディーゲームを語る時に、規模にフォーカスされています。5名未満で作るというイメージ。その一方で、アメリカ、ヨーロッパ地域の人たちと話してみると、ゲームを作る時に大きなパブリッシャーなど外部からの資本が投入され、それによる干渉が発生するか意思決定が左右されるかどうかで区別しているそうです。解釈はそれぞれ異なると思いますが、我々は自らの資金力を持って自分たちのコンテンツを作り出す力がインディーだと思っています。
🔹Cho:我々が大企業から投資を受けて最初から20名で開発を始めた、となるとインディーゲームではないですね。しかし、うちは4人で少しずつお金をかき集めたり、政府支援金をもらったりして、一人ずつ必要に応じて人が自ずと増えていっただけで、今の規模でスタートしたわけではないので、魂はインディーそのものですね。
🔸Lee:19名で3年間ずっと開発を続けているとよく誤解されます。はじめの2年ぐらいは10名弱、8名ぐらいで作っていました。
――最後の1年ぐらいで急に人を増やした理由はありますでしょうか。
🔸Lee:開発期間を延ばすか、お金をかけてスピードを出すかの二択があったと思います。時間が押してしまうと、むしろ余計な費用がもっとかかるリスクがあると思ったので、人数を増やしてでもスピードを出した方が、結局費用削減につながると判断しました。
――意思決定も重要ですよね。取捨選択も難しいですし、ユーザーフィードバックを反映するかどうかの一つをとってもそうですが、ベテランが多い分なかなか結論がまとまらないケースはなかったですか。
🔸Lee:私が1次的に意見を整理します。みんなは意外と意思決定された内容には従ってくれる方だと思います。そこでの苦労はあまりありません。CROSSFIREのライブサービス※を中国で長年やっててユーザーからのフィードバックを選別し適用する作業をずっとやっていたのも大きな経験になりました。小規模の会社内で開発しフィードバックを反映するかどうかを決める点においてはかなり役に立ったスキルだと思います。
🔹Cho:会社を立ち上げる時に、Leeがディレクターだという役割分担はちゃんと決めていました。経験が長い分意思決定が重要だというのはみんな理解しているので、ディレクターに裁量をあたえるのが良いとみんな口をそろえていました。
――ゲームの一番のアピールポイントはなんですか。
🔸Lee:発売まであとわずかですが、最初はビジュアルの部分をアピールしたかったです。ただ、最近はグラフィックの素晴らしい「AAAタイトル(トリプルエータイトル)」のゲームが多くてそこで肩を並べるのは難しいです。ただ、「The Devil Within: Satgat」ゲームの長所は、横スクロールにしてはこんなに深みのある豪快なアクションに仕上げているゲームはなかなかないといえるぐらい自信を持って全力を尽くしているという点です。横スクロールのアクションをより洗練したものにするためにそれなりの時間をかけて頑張ったので、アクションの仕組みはこのゲームの肝だと思います。職人の魂でシステムを作り上げたので、存分に楽しんでいただけたらなと思います。
――ヘビーユーザーだとコンテンツ消費が早いと思いますが、上半期リリース後のプランはどうですか。
🔸Lee:2024年度末までにはエンディングをリリースする予定ですが、通常3-4か月に1回アップデートしたいと思っています。ちゃんと準備しないといけないでしょうね。アーリーアクセスのリリース分量としては充分だと思っています。ある程度満足して楽しんでいただけるぐらいは用意できているつもりです。
――グローバル市場をターゲットにしていると、ストーリー、セリフなどローカライズも大事だと思いますが、どのように対応していますか。
🔹Cho:アーリーアクセスの時に必要な言語は英語、日本語、スペイン語、韓国語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語、中国語の簡体字・繁体字です。アクションゲームなのでテキストのボリュームは多くありませんが、ストーリーテリングのため必然的にセリフや会話があったりするので、韓国でローカライズ会社複数社を比較し一番相性の合いそうな会社に任せています。デモ版が出てから一部誤字などを除くと、全体的に翻訳の質は高いとの評価を受けています。アーリーアクセスというのはベータテストという意味も込められているので、アーリーアクセス版が出たら全世界のユーザーよりフィードバックを受け改善したいとも思っています。日本語はバンダイナムコスタジオのサポートをいただきたいですね。アーリーアクセス版はバンダイナムコスタジオにもお送りするので、おかしい部分があったら教えてください(笑)。
――いろんなコンテストで受賞された経験者として、インディーゲーム開発者にアドバイスしたいことはありますか。
🔹Cho:グローバルでは年間100以上のゲームイベントがあります。検索すると英語か韓国語ベースのリスト化されたサイトがあって、そういうリストと情報がまとまっているサイトを探すのが第一歩ですね。あと残りは、開発に時間をかけるしかないですね。
ーー今後コンテストに応募を考えている方々に話しておきたいことはありますでしょうか。
🔹Cho:たくさんのコンテストの経験者として言わせてもらいますと、他のコンテストに比べGYAAR Studio インディーゲームコンテストは飛び抜けて素晴らしいコンテストだと思います。機会があれば絶対逃してはいけないです。新しいゲームが出たら、また応募したいぐらいです。
ーー過去に受賞した人も応募できるんですかね。
🔹Cho:よくわかりません(笑)。
🔸Lee:私も同感です。よくどうやって選ばれたか聞かれるんですが、自分たちもよくわかりません。選ばれるために何に重点を置くべきかは審査基準なので分かりませんし、お話することはありませんが、去年は情報が分からず応募していなかっただけで、今回は韓国の開発会社もかなり応募していると聞きました。より多くのインディーゲーム会社がサポートを受けられるように規模が大きくなればいいなと思っていて、また開発会社にとってはすごく良い機会なのでコンテスト受賞時のサポートを活用しながら素晴らしいゲームを作っていけたらと思います。
ーーでは最後に一言お願いします。
🔸Lee:開発期間も3年目に入りました。紆余曲折を経てバンダイナムコスタジオを含めたみなさんのおかげでここまでたどり着けたと思っています。あともう少しでリリースできると思いますので、最後まで応援よろしくお願いします。
ーー私も楽しみに待っています。ありがとうございました。