Aēsopが売れる理由 〜高価格でも売れる戦略〜
単純な機能価値での差別化が難しくなっている今、ある程度の高価格で販売しながら、かつお客様に満足して頂けるという構造こそ、皆が幸せになれる構造です。
それではどのような戦略をとればその構造が叶うのでしょうか。
この記事ではスキンケアブランドAēsopを成功例として分析します。
高価格でも売れる戦略を知ることで、価格競争に巻き込まれない、自分とお客様両者がWin-Winの関係を築くことができるはずです。
Aēsopとは
まずAēsopとは、オーストラリア発のスキンケアブランドです。
ピンク色のハンドクリームや、商品を購入するとついてくる巾着袋はInstagramでよく見かけます。
下の写真は私の物で、使っていくうちにくしゃっとなってしまう、薬局で売っているハンドクリームにはない風合いが出るところもお気に入りです。
Aēsopは、写真のハンドクリームは3080円(税込)で、かなり高価格なブランドと言えます。
高価格にも関わらず、若い女性から熱狂的な支持を受けることができるのはなぜなのか、考えていきます。
Aēsopのマーケティング
Aēsopが売れる要素は、ブランド力や店舗戦略などを含めたくさんあると思いますが、今回は「価格」にフォーカスして考えます。
高価格であることのメリットは、以下の3つがあります。
これでは分かりづらいので、一つ一つ考えます。
①いい意味で、ちょっとだけ手が届きづらい
「手が届きづらい」という要素が、ひとつの魅力となり、他ブランドとの差別化となっていると考えます。
消費者行動において、「購買関与度」というものがあり、これには「低関与商品」と「高関与商品」の2つがあります。
低関与商品の場合、私たちは深く考えることなく購入します。スキンケア商品であれば、立ち寄った薬局でなんとなく目についたから購入する。目に入ったPOPが気になったから試しに購入する。などという、比較的軽い心持ちで購入されることが多いと言えます。
一方で、高関与商品は、一般的に購入時によく吟味されます。「高いお金を払うのだから、失敗したくない」という思いが強いためです。
スキンケア業界においてAēsopは、「高関与商品」に分類できます。そのため購入時にはどの商品が良いか熟考されます。
熟考されることの最大のメリットは「手間」です。「手間」と聞くと、ネガティブな印象を抱くかもしれませんが、マーケティングにおいてはポジティブに働く場合も往々にしてあります。例えば、IKEAの例が有名です。IKEAで購入する家具は、購入者が自ら「手間」をかけて組み立てなければなりません。「IKEA effect」という言葉にもある通り、人は自分が「手間」をかけた物に対しては高く評価しやすいというバイアスを持っています。
(これについては「不便性」というテーマでこちらで詳しく書いておりますのでぜひ参考にしていただければと思います。)
話を戻すと、Aēsopは高価格であり「ちょっとだけ手が届きづらい」ということから、お客様は購入の際に熟考し、その分愛着が湧くということがわかります。
②プレゼントとしての価値が上がる
普段私たちは「できることなら安く買いたい」と思っているはずです。
しかしそうではない、「少し高いくらいで買いたい」と思う場合はないでしょうか?
いくつかの場合があると思いますが、「プレゼントとして買う場合」を今回は取り上げます。
これはMUPの「SALES SKILL」という講義で扱われた内容で、高級チョコレートブランドのGODIVAがなぜあんなにも高く売れるのか。それは自分用ではなくプレゼント用として購入されるためです。講義の中で竹花さんは「プレゼント用だと高く売れるという点を、どの業界でも考えるべき」とおっしゃっていました。
Aēsopはまさにその「プレゼント」として購入されることが多いため、高価格でも購入されるのだと言えます。
③試供品の価値が上がる
Aēsopでは店頭で購入する際にたくさんの試供品をもらうことがあります。そこでお客様が感じるのは「あんなに高い商品なのに、試供品をこんなにもらった!幸せだ!」という感情です。実際はそういった試供品のコストも込みで商品の値段が高く設定されているのだと思われますが、そこまで考えられることは少なく、「商品が高価格=試供品も本当は高価格な、価値の高いものであるはずだ」という印象になり、店頭での体験への満足度が非常に高いものになります。
試供品をバーコードにかざす店員さん
私が店頭に実際に訪れ、試供品をもらった際に気になった点は、試供品であるにも関わらず店員さんがレジで商品と同じようにバーコードを読み取っていたことです。一般的には試供品はバーコードで読み取ることは愚か、店頭に置きっ放しで「ご自由にお取りください」と書いてあることもあるほど、そこまで丁寧に使われている印象はないのではないでしょうか。POSデータとして取得してどのように利用しているのか、詳しくはわかりかねますがAēsopでは試供品も商品と同じように扱っていると考えられることから、試供品も「売り」のひとつとして位置付けているのだと考えます。
最後に
高価格であることのメリットとして、
① いい意味で、ちょっとだけ手が届きづらい
② プレゼントとしての価値が上がる
③ 試供品の価値が上がる
これらの3つをあげました。
「競合よりも1円でも安く」という価格戦略では、価格競争となり、過酷な戦いを強いられることが目に見えています。それに比べ、高価格戦略は今回あげたメリット以外にも、様々な、そして大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。高価格だからできること、高価格だからこそやらなければならないことを、考え抜くことで新たな戦略を見つけることができるかもしれません。私も考えようと思います。