ビジネスでサーキュラーエコノミーを加速する!事業創発を目指す交流イベントを開催
GXリーグの新たな取り組みとして2023年度にスタートした「ビジネス機会創発の場」。昨年度行った未来像策定の洞察を発展させたもので、GXが実現した未来の経済社会システムを“ビジネス機会”として描き、新たな経営戦略や事業開発につながる対話を行う場です。
※第1回の模様はこちらでレポートしています
2023年11月8日に開催された第2回イベントのテーマは「サーキュラーエコノミー」。GX実現を加速させる資源循環の効率化・高度化に向けたデータ活用について、関連するスタートアップ企業5社を招き、参画企業と意見交換・交流を行いました。会場のLIFULL Table(東京都千代田区麹町)には、テーマに関心の高い参画企業30社の代表者が集まりました。
イベントは4部構成で、第1部の基調講演、第2部のパネルディスカッションはオンライン配信を実施。後半には、登壇企業を交えてグループディスカッションを行いました。
【第1部:基調講演】
■経済産業省
経済産業省は、2023年3月31日に「成長志向型の資源自律経済戦略」を発表し、資源循環市場を2050年に120兆円規模とすることを目標に掲げています。同戦略のもと、①規制・ルールによる競争環境整備、②政府支援による投資促進、③パートナーシップによる産官学民連携の3つのギアで、資源循環を価値軸とした市場経済へのトランスミッションを加速していく計画です。
今後のアクションについて、同省産業技術環境局 資源循環経済課の水上智弘氏は、「産官学連携、個別部材に関する情報流通、動静脈産業の連携加速に力を入れていく」とし、現在政府として取り組んでいる事例を紹介。ASEANと連携したリサイクル技術能力構築支援や、国内4自治体における地域循環モデルの取り組みを通じて、大小さまざまな資源循環の実装を目指しています。
「サーキュラーエコノミーの取り組みは、まさに今、産官学あらゆる方面からのアプローチで動き出しているフェーズ。リサイクル技術など日本の持つ強みを活かし、実装・進化を図っていきたい」と意気込みを示した水上氏。すでに200以上の企業・団体が参画する産官学CEパートナーシップへの参画を広く呼びかけ、取り組みの活発化に期待を寄せました。
【第2部:スタートアップ企業によるパネルディスカッション】
第2部は、資源循環のデータ流通やトレーサビリティ事業などに取り組むスタートアップ企業より、イーアイアイ、サイクラーズ、digglue、レコテック、LOZIの5社が登壇し、それぞれの事業について紹介。その後、スタートアップ支援を行う東京大学FoundXディレクターの馬田隆明氏をモデレーターに迎え、各社代表者によるパネルディスカッションを行いました。
パネラー:
イーアイアイ 常務執行役員 小林均氏
サイクラーズ 経営企画部 山田晃一氏
digglue 代表取締役CEO 原英之氏
レコテック ファウンダー&CEO 野崎衞氏
LOZI CEO Martin Roberts氏
モデレーター:東京大学FoundX 馬田隆明氏
データ利活用に関する現状の課題とは?
5社はデータを活用したソリューションを持つ点で共通していることから、「データの利活用に関する課題」をひとつ目のテーマに意見交換がスタートしました。
AIやロボティクスなどのディープテック事業を行うイーアイアイは、クラウド型基幹業務システムとAI自動配車のアルゴリズムを掛け合わせた一元管理システム「Waste Force」(2023年12月ローンチ予定)を通じ、廃棄物処理分野のDXに取り組んでいます。小林氏は、動脈側の方向性策定や静脈側の設備投資も進んでいない中で国際基準への対応も迫られている現状から、データ構築の方向性を見極める難しさを課題に挙げました。
廃棄物回収から加工・処理、物流、DXサービスまでグループ内で完結し、さまざまな事業を展開するサイクラーズ。金属スクラップと産業廃棄物のリサイクル事業を行う東港金属を中核とするグループ全体で、資源循環市場の創出に取り組んでいます。広域から回収した廃棄物を取り扱うため、「自治体によってデータの収集や活用の方針が異なることが複雑な課題」と山田氏は述べ、標準化の必要性を訴えました。
「資源循環が進まない構造の解決」を課題に掲げるdigglueは、排出の見える化、トレーサビリティ、DPP(デジタルプロダクトパスポート)に対応するWebプロダクトの提供と、資源循環コンサルティングを行っています。原氏は、「トレーサビリティ関してはステークホルダーが多く、誰がどの範囲でデータを共有するのか、情報レイヤーの整理が必要」と発言。個社が独自のプラットフォームを構築する動きに対し、構造を複雑化する一因にもなると指摘しました。
レコテックの野崎氏は、原氏の意見に同調。同社が力を入れる廃材リサイクルの分野では、技術は進化している一方で、集まるデータの仕様や精度にばらつきがあるために技術活用がうまく進んでいない点を課題に挙げました。こうした弊害をなくしていくには、統一的なデータ共有・連携が不可欠であることから、同社は廃棄物計量管理システム「pool」を用いたデータ連携による回収インフラ構築に取り組んでいます。
LOZIのRoberts氏は、他のパネラー同様にデータの標準化を挙げるとともに、個体識別IDの必要性にも言及しました。同社は、スマートフォンとバーコードでモノの動きを可視化する情報記録アプリ「SmartBarcode ®︎」の提供を通じ、サプライチェーンの課題解決に取り組んでいます。国際規格のバーコードはスケール単位で付され、サーキュラーエコノミー分野での活用には適さないことから、「ユニークなIDがあって初めて、バーコードが製品パスポートになり得る」と述べ、今後の動向に期待を寄せました。
各パネラーの発言を受け、「従来とは違うデータの粒度が求められるようになっている」と馬田氏。トレーサビリティをどのレベル・単位で管理していくのか、その目的を含めた議論の必要性を再認識するものとなりました。
参加者との質疑応答
パネルディスカッション中は、Webコミュニケーションツール「Slido」を活用してオン・オフライン両方から質問やコメントを募集。具体的な質問が数多く寄せられた中、5社に共通するトピックを取り上げながら意見交換を行いました。DPPやトレーサビリティサービスの将来像、技術進展にあわせた教育の必要性、静脈産業のDXに向けた支援のあり方など、議論はさまざまな話題に及びました。
パネルディスカッションの最後には、各パネラーが今後に向けた意気込みとともに、積極的な連携を呼びかけました。「スタートアップのプロダクトは、使っていただくことでよりよいものになっていく。それが日本のGXを加速していくものになるはず。参画企業のみなさまは、スタートアップにぜひ積極的に声をかけていただき、率先してプロダクトを使うことでスタートアップと一緒にGXを加速させて、より大きなムーブメントを作っていきましょう」と馬田氏が締めくくり、第2部は幕を閉じました。
【第3部:事業機会のアイデアをグループで議論!】
プログラム後半の第3部からは、5つのテーブルに分かれてグループディスカッションを実施。登壇企業も加わり、アイデア創発を行います。
黄色い付箋に「現在の取り組み内容」、ピンク色の付箋に「現在直面している課題」を書き、無地のワークシートの上に貼り出しながら、それぞれの視点や考えを共有。それらをもとに、登壇企業を中心に意見を交わし、事業機会のアイデアを青い付箋に書き出していきます。
どのテーブルでも、異なる業種からの参加者の発言に真剣に耳を傾け、積極的に質問や意見を重ね合う様子がうかがえました。
およそ20分後、席替えを行い、新たなメンバーでディスカッションを再開。参加者のみなさんは、互いに発言を促しながら、課題解決のヒントを探していきます。
議論は、消費者の行動変容、業界単位での標準化、企業間の意識差、法規制外製品のリサイクルなど、さまざまに話題が広がり、スタートアップ企業との連携の可能性を探るものとなりました。
前後半合わせて約50分のグループディスカッションは大いに盛り上がり、あっという間に終了時間を迎えました。
閉会のあいさつに立った経済産業省の折口直也氏は、「各テーブルのディスカッションを聞かせていただいたが、価格差や廃棄物の量の確保といったところが課題感として共通していると感じた。こうした課題の中には、協調領域としてGXリーグの中で連携し解決していけるものもあるのではないか」と、リーグの活動意義をあらためて示しました。さらに、「スタートアップ企業との連携を本気で後押ししていきたいと考えている。この場の交流で終わりにするのでなく、実際のビジネスを進めていくきっかけとして、ぜひ今後につなげていただきたい」と、官民共創による社会課題解決への強い思いを示し、今後に期待を寄せました。
閉会後、会場では第4部としてネットワーキングの場が設けられました。ディスカッションを続けたり、個別に会話したりする姿が多く見られ、参加者のみなさんは時間の許す限り交流を深めていました。
GXリーグでは、対話を通じた共創・ビジネス創発を推進していくため、今後もさまざまな交流の取り組みを行う計画です。参画企業のみなさまの積極的な参加をお待ちしています!
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