真相 その1
その話しに最初に違和感を唱えたのは、日本のトップカテゴリーで自ら属するチームを何度も勝利に導いた名監督だった。
『それ、おかしくねーか???』
2月の中ば、仕事の打ち合わせで急遽日本に帰国した自分。
久しぶり、と言う事になり、二人で会う事になった。
六本木のステーキハウス。おっさん二人で600kgと少々デカ過ぎる肉を頬張りながら、その言葉を言い出した監督は食事を止めた。
『まさか外人-外人じゃないよな?それはあり得ない。だってひとりは既に発表しているし…』
『俺ならそんな人選はしない。なぜならB(外人選手)は去年、タイトル争いに絡んだんだぜ?今年はチャンピオン最有力候補だよ?それを外してわざわざ実績の無いドライバーを起用しないだろ?』
言われるまで考えていなかった。
ただ、その時は抱えていたこの外人ドライバーAに関して"何とかシートを決めなければならない"と言う焦りもあり、このステーキハウスでの会食から遡る事二日前にAから『チームから決まったと連絡が来たよ』と聞いて、ただただ安心するだけしか意識になかった。
監督は食べるのを中断し、しばし考え込んでいる。
考えるのも無理はない。言われてみれば確かにそうだし、事実今朝、Twitterで全く同じ事を呟く人が出た。
この彼の解析はいつも驚かされている。
ただ、現場で見ている訳ではなさそうなので多少違うところもあるが、自分の中でいま一押しのレースファンであり、ブロガーと見ている。
『まぁ…』
『俺ならしないと言うだけだ』
監督は違和感アリアリの表情のまま、黙ってもぐもぐと肉を食い続けた。その後も何度もこの話しを持ち出しては食事が中断したので、それだけ違和感が強かったと言う事だろう。
後日、問題が起こってから友人のMが私に言った。
『やっぱ、おかしいですよ!』
『Bはどこの出身です?
テストに来たCは?Dは?』
これを言われた時「あっ」と思い固まった。
「全部TRか???」
Mは続けた。
『B、C、DはTRですよ。
けどね、AはあなたがTRに許可を取った上で自分でやっているんでしょ? つまり言い換えれば全部、あなた印なんですよ!』
つまり自分が関わっていたドライバーを何らかの考えのもと、狙い撃ち的に声を掛けられていた。その事に気が付かなかった。
TRのドライバーだけを狙っていればコレには気が付かなかった。なぜならTRと自分はかつては在籍していたが、今は自分の意思でチームを出てイタリアのPと同様に自分の所属会社である"GWR"をひとつのパートナーとして契約しているからだ。
家内は引き続き所属しているが、少なくとも自分はそうしている。
その為に"自分のチーム"と言う意識は少なくとも無い。その意識の希薄さが背後で動いている意地汚い復讐にドライバー達が利用されていた事への発見が遅れた。
簡単に言えばこう言う事だ。
以下、続く…