中国のマスク外交の成果は?
非常に興味深いタイトルが目を惹いた。
結論から言うと“失敗”だろう。
中国の共産脳は『世界にマスクを供給した』とか『嫌なら出さないぞ』など、慈悲慈愛の欠片も無い、ただただ勝者(と、思い込んでいるだけ)の踏ん反り返っている姿がある。
この2月からマスクに関わる仕事を始め、何度書いたか分からない貿易関係の書類。その中に今回に限り、見た事が無い書類が混ざっていた。忙しかった事もあり、「そんなの(書類)、相手にするな!」と指示した所、この書類をキチンと書いて提出し、中国税関の印を貰わないと出荷できないと言う。
今まで一度も聞いた事ない展開に流石に訝りながら、その書類を見た。
わかり易く言うと、
①.中国で作られた製品は全ての基準を満たしている事を証明する
に続き
②.医療現場に於いて、使用しない
③.もし何か問題が生じてもそれは中国の責任では無い
と言うものだった。
誰がどう見ても、①と②・③は大きく矛盾する。
規格通りに作って、規格をクリアしているのであれば、少なくとも②と③の展開にはならないのではないか?と思った。つまり取り繕っているとは言え、世界中にマスクを輸出し、表向きは“医療を助ける”を打ち出した中国が、人知れずひっそりとその方向を打ち消し、見えないところで方向転換をしていた、と言えるのではないか?と思う。
では、いつ?なぜ?この様な方向転換を打ち出したのか?
少なくともこの書類は4月位にはあったらしい。しかし、あまりシビアではなかったので、ロジスティック会社が適当に書いていたのだと言う。ところがこの暫くは徹底的に指導され、ロジスティック会社も『ウチでは書けない』と言い出した。
「冗談じゃない。書けないとは何だ?だったらカネだけ払ってモノが出荷できないじゃないか?」
最終出荷前の週末はこのたった一枚の書類を巡り、三日間、硬直状態が続いた。そんな中、台湾のMAKRITE社がこの状況に気がついた。何やら工場とお客さんとの間で揉めているらしい、と。
いつも頼んでいる台湾のロジスティック会社のマネージャーが、MAKRITE本社に掛け合った。
すると一本の電話。
MAKRITE本社がその書類にサインをして保証をする事を約束する、と。これは後日、それまでは工場から本社黙認で出して貰っていた商品を、結果的に本社から直接、いち代理店へと当社が昇格するキッカケになったのだが、それはまた後日。
ともかくこれで無事に商品は日本へと向かった。
さて、問題のこの書類である。
とにかく、この1枚の書類の持つ矛盾は大きい。
MAKRITEの9500-N95はCDCでNIOSHを取得し、その後、FDAでもFDA clearedを取得している、いわゆる3M/1860と同じ“医療マスク”のお墨付きを頂いている。
因みに、かの3M様。あれだけのマスクのラインナップがあり、NIOSHを取得しているモデルが54種類もありながら、FDAとして医療マスクの認可を得ているのは僅か8アイテム(そのうち3種類はサイズ違いなので実際には5アイテム)しか存在しない狭き門。
MAKRITE 9500-N95は元々、中国規定GB2626-XXXXの防塵マスクからスタートし、のちに医療用へとアップデートした、と言う経緯がある為、中共から『医療用では無い』と噛みつかれた。
米国で“医療用”として認可されているのに、台湾メーカーとは言え製造が中国の為“認めない”とは如何にもと言う印象でしかない。
この為、出荷する際の段ボールに“非医用口罩”(医療用ではありません)と印字させられた。
まったく、屈辱だね…
そこで、ここまでやる理由は何か?と言うポイント。
ここまでの流れを見るに、やはり世界中、中でもとりわけ目立ったのが“中国製ゴミマスク”の拡散だ。コレが中国のメンツを丸潰しにしたと言う。日本で話題になった(した?)BYDのマスク。自分のこのnoteでも散々書いたが、結果は予想を上回る悲惨さだった。
また、恐らく、中国の方針転換に直接影響したのは、やはりカリフォルニアのマスクゲートではないか?と考えられる。
結局これはCA州知事のニューサムが勝手に期限を伸ばし、6/10を最終期限としてBYDは何とかNIOSHの承認を取得。
因みに勘違いしている方が多いので、このNIOSHの取得によって“何が得られるのか?”と言うポイントを説明する。このNIOSHの取得によって得られるものは“N95”と言うモデル名を名乗って良いと言うだけである。従って、このNIOSHのリストに出て来ないN95は全て自称である。
さらにここから医療用として登録したいのであれば、FDA clearedを取得しなければならない。従って、このBYD悲願のN95はまだこれからFDAの厳しい試験を通らなければならないが、その後、続報が無い。
なぜ続報が無いのか?
これは自分の憶測だが、この前記の書類が効いているのではないか?と考えている。つまり中国政府が“中国で作ったものは医療用と名乗るな”“医療現場で使うな”となった訳なので、コレはもうやりようが無い。
もちろんキチンと米国の承認を通っている訳なので、問題無く使える訳だが、BYDは前にも書いた通り政府と裏表だ。
コレで一歩先へ進む事もできなくなったのは明白である。
にも関わらずバカな提灯記事を書いて、その日暮しの糧を得ているデマ記事ライターも世にはいる様だが。
どこが“形勢逆転”なのか、さっぱり分からない。
こう言うデマ流しには要注意である。
いつも自分は“共産脳は目の前の一歩には必死で喰らい付くが、二歩先が読めない。まして三歩先は子々孫々の代の話しにしか思っていない”を主張しているが、そのまま当てはまる。
NIOSHでN95を取得し、晴れてN95を名乗れるとなったBYD。しかしそうなると、承認取得前までに日本政府や世界のアチコチに「N95です」と配ったマスクは何なのか?と言うポイントに行き着いてしまう。それであるならば、責任を持って回収すべきではないか?と考える。
さて、ここで重大な種明かしをする。
“BYDはNIOSHを取得すべきでなかった”
と言う身も蓋もない話だが、つまりは結果はそう言う事だ。
今回、BYDは何度も出てくる下記の表で言う中国の医療用カテゴリーであるGB19083-XXXXで作っている。何も米国で難易度の高いNIOSHを目指さなくても、少なからずGB19083で納入を交渉すれば良かったのだ。少なからず中国規定では“医療用”なのだから。
しかしその前に、GB2626で作ったマスクをN95だと言い張って動いた事が大失敗と時間のロスを大きくしてしまった原因である。実際はKN95だったのだが、実はそのKN95規格すら通っていなかった。
因みに当社の商品であるMAKRITEもGB2626ーXXXXでNIOSHを先に取得し“防塵用N95”を取得した上で、次にフィルター性能をUPさせFDA clearedを取得。晴れて医療用マスクとした。
それをGB2626で散々『N95だ』と嘘を撒き散らし、問題が出てから今度は難易度の高いGB19083で作り直し、、、しかもそのGB2626/KN95も自称で、規格を満たしていなかった、と言うお粗末っぷり。
話しは横に逸れるが、こう言う基本的な知識を抑えておけば、今だに横行するこの様なインチキな宣伝と販売に騙される事は無い。
何を持ってFDA認証医療用マスクとしているのかサッパリ分からないが、こう言うのが医療現場を崩壊させる、一番の原因である。もちろんFDAの認証は嘘で、この会社が拠り所としているFDAの認証なるものは、今までもこのnoteで散々書いたが、米国のどこかの司法書士的な事務所がFDAに輸入申請を出しましたよ、と言うFDAとは全く関係の無い“ちょっと凄そうに見える証書”である。コレは金を払えばどの会社でも出してくれる。
この会社には複数の方々が抗議をしたそうだが、聞く気は無い様なので、こう言うのは消費者庁にドンドン通報すれば良い。
さて、話しを戻す。
BYDはなぜこうなるのか?と言うと、元々BYDは“何かを作っていて存在する会社”では無く“投資金を引っ張る為に何かを作る会社”であると言う事が出発点である事が大きい。
常に付け焼き刃であり、結果が見えていない。
政府から散々引っ張ってきた助成金で電気自動車の絵を見せ、テスラが来るとあっさりと惨敗。その昔はカラシコフの銃を密造してアフリカの内戦地帯に売っていれば済んでいたが、この時代、そうもいかない。
結果、自らの手で中国の医療マスクの信頼性を大幅に落とし、自らが所有していた残り僅かな信用を完全に失墜させた。
そしてこう言う“デタラメ”な発表。
そうした流れを経て、日本で売り出したBYDマスクの不良品が続出。前記の文春砲の餌食と相成るのである。
いずれにせよ、レギュレーションを良く読み込んで、可能性を模索し、メリットとデメリットをキチンと評価する事。それが出来れば事業は簡単だし、それが出来なければ、今回の様に多くの人と係る現場を混乱させるだけ混乱させて終わると言う結果しか残せない。
一言、言う。
『孫さん。あんたとその愉快な仲間のおかげで余計な仕事が増えたわ💢』