KN95がKN95にしかなれないわけ
結局KN95は医療用マスクではない
中国にはKN95を医療マスクとして設定する基準がなかった。
そもそもKN95がどうしてKN95として存在しているのか?と言うところを説明します。中国製KN95の根幹たる基準はGB 2626−2006というレギュレーションであり、これは中国語では“勞保口罩”であり、日本語に訳すと“労働者の保護マスク”という規定となる。
ではこの労働者とは何を指すのか?
このケースの場合の労働者は医者ではない。分かりやすくいうと“民工”である。工事現場などで働く労働者をイメージしている。
これは中国の国内産業の歴史に密接に関係した、いわゆる生活の知恵的なものを国が基準化したものである。
ではこの場合、どこで何をしている労働者を労働者としているのか?分かりやすく言うと“炭鉱”である。
つまり元々は炭坑などで粉塵・煙・微生物等から労働者を保護するために作られた規定である。もしこれを読んでいる人が日本人であって、日本人の心持っているのであれば、ここは笑うポイントでもなければ、非難するポイントでもない。
なぜなら我が祖国もこれと全く同じ道を歩んできて、それが近代化した現代日本の尊い礎となっていることに異論を挟むものはいないと思う。
問題はその炭坑夫の世界の状況をそのまま医療現場に持ってきてしまっている事が問題なのであって、これもまた近代中国の成長と経済に密接に関係している。
昨日今日まで500元で苦労していた中国人が、あっという間に普通にレクサスに乗る時代となった。この間わずか20年。急速というより、急速過ぎる発展がこのような悲劇的な過ちを生んでしまったのは、現代中国の全てのシーンにおいて見て取れる。
話しを戻す。
つまり炭鉱などの粉塵から身を守る事が唯一無二の労働者の保護策だった。そのルールは中国のマスクのルール作りにおいて、むしろ排除できない基本中の基本として残ってしまっているのは、これは無理もない話しであるし否定的になる必要もない部分である。
日本人の食卓から米と味噌汁と魚を排除できるか?恐らくこの先、未来50年〜100年経っても一つの文化として残るのであろう。
同じようにGB2626−2006は彼らにとって絶対、否、この先100年経っても残る基準であろう。
問題はGB2626のレギュレーションの構成
ここから先は敢えてGB2626の規定をKN95と呼ぶが、このマスクの製造規定は、医療用の規定ではなく、労働者の保護規定で作られてる基本があるために、その製造設備にも医療用または医療用衛生用品を作る環境を規則として求められていない。
従ってKN95を医療用に持ってくると、ここが一番大きな問題になる。そこで何度も登場するが、この表である。
今や日本のマスク業界のフリー素材と揶揄されるほど、あちこちで使われてしまったが、作った当時は正直、こんなに使われると思っていなかった。敢えて中国語の原文を上、日本語の訳文を下に並べた。
まずこの表は左が工業用、右が医療用へと振っている。医療用品の製造現場として認可を取り、医療用として作られるのは真ん中から右までの3つ。
当然そうなると、左側の2つは医療用の許可がなくても作れるもの、ということになる。
そこから考えた時、KN95が医療用と名乗る事自体の根拠がそもそも無くなってしまう。するとそこから先は全て“自称”という話しに帰結してしまう。
次に中央のメディカルマスクと、その右隣のサージカルマスクを比較。日本語に訳した方が分かりやすいが、この右から二番目のサージカルマスクつまり【YY0469-2011】において、初めて“臨床”の二文字が出てくる。
つまり、患者と向かい合うと言う意味に於いて、この右二つ(一番右はN95の規格)のみが実際に患者のいる医療現場に使用できるものであると、これは中国の法律で定められている。
因みにこの規定書の冒頭にこう書かれている。
“ここに書かれている事は強制である”、と。
さらに一つのルールとしてKN95はヘッドハーネスである事が義務付けられている。つまり耳掛け式はKN95に於いてもNGであり、そうなると耳掛け式で展開しているKN95は全てKN95の規格さえクリアしていないタダの粗悪品と言いきっても良い。
従って中央のメディカルマスクは臨床用では無く、尚且つ日本語の方で下に追記している“BFEの試験云々”の追記は複数ある検査のうち、この表記の部分については検査項目から除外されていると言う意味。
これは検査表のレギュレーションに明記されているのだが、表には入っていなかったため、こちらで翻訳する際にわかり易くする為、1カ所にまとめたという経緯がある。
そう言えば『元の中国語にないのに、日本語になっていたら勝手に記載している、私はこいつは信用しない』と丁寧に一所懸命、批判しながら拡散している輩がいたが、分かりやすくまとめあげて、タダで見ておいてそれを批判材料にして拡散しているのは言語道断で『信用できない』という前に、せっかくわかりやすく書いたのに感謝しろと言いたくもなる。
もし全文を翻訳して説明してほしいであれば、50万円を今すぐ振り込んでくればすぐ仕上げてあげると伝えるよ。払うのが嫌だったらちゃんと自分で文献を探してからモノを言え!
さてここまで説明すると分かると思うが、KN95はそのレギュレーションのスタート地点からゴールに至るまで、結局は医療用となり得る要素は無い。どこまでいっても労働者を守る領域からは脱せられない。
マスク不足に悩むFDA(米国 食品市薬品局)は輸入は認めたものの、そのデバイスの承認を与える事はなかった。さらに言うとFDAばかりが取り上げられるが、一番肝心なのはCDC(米国疾病予防管理センター)であり、NIOSH(ナイオッシュ/National Institute for Occupational Safety and Health/国立労働安全衛生研究所)承認が正規の医療現場で使えるか否かの判断材料である。
さてここで度々問題になるのが厚労省の通達である。
“KN95マスクなどの医療用マスクも”と言う一説の功罪
全体の括りは【医療用マスク】であり、その中の【KN95】と読み取れる。つまりKN95含む医療マスク、と言う解釈であると信じて止まない。
そうとなるとKN95と言う医療マスクは一体全体どこにあるのか?と言う話しになる。最初から工業用設定の規格で作られたものを、どこの段階で医療用に転用していたのか?と言うその変換ポイントを知りたい。
その変換ポイントがあるのか?ないのか?あるとしたらその文献は?誰がいつ変えた?それについて米国の臨床医師のジェイ・パーク先生が明確に述べている。
そこについては、また次回。