2020年の短歌
見知らぬ人に自己紹介をするときに「趣味は短歌」とは言ったことはない。詠めない日が続くこともある。でも短歌を辞めるとか続けるとかをいちいち考えることはない。まだ4年しか経っていないけれどこれからも短歌はずっと私のそばにあると思う。
Twitterにあげたのと重複はしますが、ありがとうございましたの気持ちと、記録しておく目的で今年の短歌から20首。
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光線の構えばかりだ疑いを知らないころの僕の写真は
そのことに触れないけれどグループの交換日記を止めたのは僕
そのうちにペンギンを飼うことにして大きい冷蔵庫を買っておく
埃及(エジプト)の壁画の展示を見る人のまるで壁画のような横顔
またねって手を振る準備してるのに君は一度も振り返らない
まだ夜が続いてほしい見たことない魚の名前をずっと言い合う
テキトーに生きてきました部屋干しでカーテンレールが曲がっています
組み立ては上手くできたと思うけど部品がひとつ余っています
満たされて帰る真昼の公園で蟻の巣穴にコーラを注ぐ
待っててもいいかななんて聞いちゃダメSiriもあなたもきっと困るし
恨んだりしてないけれど明日君が犬のうんちを踏みますように
ここじゃないどこかに今日も行けなくて回転寿司で頼むクレープ
用もないのに出入りする 玄関に人感センサーライトを置いた日
グローブをはめたことない愛情の受け止め方も知らないままだ
君じゃなきゃいけない理由が見つからず理由はなくてもいいかもしれず
会うたびになに食べたい?と聞かれてる未来の約束ができなくて
帰らない旅に出たいと思う日のがん健診と確定申告
大切なものからなくすモロゾフのプリンカップをいくつもためて
行き先の病院名に運転手が「急ぎますね」とだけ言う深夜
バイクの音、朝の占い もういないあなたに伝えたいことばかり
2020年12月 寿々多実果