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短歌集 心の漂流記
私の自伝的小説「心の漂流記」は、まだ第三巻までしか出版できていません。もっと書きたい内容はたくさんあるのですが、なかなか筆が進みません。思い出すための手がかりとして、短歌をまとめておきたいと思いました。
第一巻 工場街育ち
2021/08/28
幼き日 三途の川の渡し賃 払わなかった ペニシリン様
「心の漂流記 第一巻」より
2021/10/30
お母さん そこに座っているだけで 太陽だった 大洗浜
「心の漂流記 第一巻」より
2021/12/30 20:32
山の手と工場街と下町が うまくまざって 大森三中
「心の漂流記 第一巻」より
2021/12/30
工場の焼け跡で見た不審物 川に蹴り込み 熱水柱
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/04
ラジコンやトランシーバー 初めてで おやつはとどめ 手製ドーナツ
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/04
「アッちゃん」の 子役二人は上手かった 子供のくせに 声色使う
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/04
イヤホーン コイルアンテナ ダイオード これだけあれば ラジオができる
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/11
爆竹の破壊の力 魅せられて アルミサークル 火の海となる
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/11
我が親父 弁護士様になれずとも 大好きだった 裁判事件
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/11
グリコ様 我が青春の宝もの オマケでもらった 望遠鏡
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/18
いい天気 授業無視して鬼ごっこ お前はリーダ モップでコツン
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/18
卓球を 壊れ扉で練習し 準決勝で ボロ負けしたよ
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/18
九科目 八百五十は 驚異的 同じ人種と 思えなかった
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/24
工場地 火事だボヤだと ウンザリだ 早く移ろう 夢の山の手
「心の漂流記 第一巻」より
2022/01/31
もらい火で 家が丸ごと焼けちゃった 布団を出した 叔母は神様
第二巻 巣立ち
2021/08/28
えこひいき あって当然教師でも 採点だけは 公平にやれ
「心の漂流記 第二巻」より
実力は 好きでなければ人生で 発揮できない 後悔するな
「心の漂流記 第二巻」より
食事抜き 家庭教師の押し売りで 出されたカステラ 忘れられない
「心の漂流記 第二巻」より
2021/10/10
世話好きの 母のもとではいつまでも 大人になれぬ 俺は出て行く
「心の漂流記 第二巻」より
2021/10/10
君と会い 君と語った 若き日々 おかげで俺は 大人になれた
「心の漂流記 第二巻」より
2021/10/26
崖崩れ おまえの重みで氷溶け 地獄を見たぜ あの武甲山
「心の漂流記 第二巻」より
2021/11/16
転校は 誰にとっても辛いもの 仲良い友が どこにもいない
「心の漂流記 第二巻」より
2021/11/23
アブが出る 納屋の便所で腹が張り 田舎はいやだ とても住めない
「心の漂流記 第二巻」より
2021/11/23
双子池 春であったが雪深く 小川の水が 暖かかった
2021/11/23
夏が来た 石道川で魚獲り 兄はカジカの 名人だった
2021/12/01
不遜にも 入学式で逆らった 俺を見ながら 微笑む担任
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/01
高校で初めて会った おまえだが 今では共に 古希を超えたな
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/01
往復の通学時間 長かった ただ小説に のめり込んだよ
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/07
博学になれたとしたら それはただ 本に注いだ 奨学金さ
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/07
アンチョコが 助けてくれた漢文は 今でも好きさ ツバメの詩など
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/07
甘くみて 高校入試しくじって 初めて知った 大きな挫折
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/14
敷金に礼金加え 手数料 知らなかったよ 大学生で
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/14
反省と大きく違う 後悔は 過去を忘れて 今に生きよう
「心の漂流記 第二巻」より
2021/12/22
信州で 食ったカジカは美味かった いつも兄貴の おこぼれだった
第三巻 内なる仮想空間
2021/12/14
お釈迦さま 現世はすべて空なりと これぞ内なる 仮想空間
「心の漂流記 第三巻」より
2022/01/24
我が内の 空間認知 見つけたり カントは凄い 彼は科学者
「心の漂流記 第三巻」より
2022/01/24
チャボはバカ それでもかわい 俺は好き 餌をあげると すっ飛んでくる
「心の漂流記 第三巻」より
2022/01/31
青い空 誰も見ているこの景色 でも本当は 頭の中に
「心の漂流記 第三巻」より
2022/01/31
簡単に 仮想空間変えられぬ しっぺ返しが あな恐ろしや
「心の漂流記 第三巻」より
第四巻 大学時代
2021/09/02
生協で 食べた夕食まずかった そこで語った日々は ご馳走
「心の漂流記 第二巻」より
2021/10/21
冬が来る 心がうずく銀世界 滑る姿は 芸術品さ
2021/10/30
断崖を ウェーデルンで 降りた奴 帽子を取れば 長い黒髪
2021/10/30
白樺の 光の間を抜けて行く 志賀高原の 初心者コース
2021/11/07
列車から 朝日を浴びた銀屏風 帰って来たぜ 北アルプスに
2021/11/07
赤城山 心が踊る初スキー 足だけ抜けて 滑って行った
2021/12/22
御前崎 海水浴に行った時 夜の麻雀 いつもハコテン
2022/08/21
化学科は二十人が 四年間 水に合ってた 埼玉大は
第五巻 大学院時代
2021/08/31
電算機センターからの 帰り道 赤レンガ館に 消えて行く君
2021/09/02
「おごるよ」と二人で入った喫茶店 財布を見たら 空っぽだった
2021/11/16
能勢口の 友の下宿に宿借りて 夕食がわり フランクフルタ
第六巻 X線結晶研究者として
2021/08/28
「はやまるな」オヤジの言葉で救われた 行くはずだった 港の底に
2021/10/12
お見合いの 場所も聞かずに横浜へ ラセンのかなた 君が輝く
2021/11/07
母危篤 慌てて着いた枕元 あなたの目から 涙がポトリ
2022/02/22
才なきが 悩みながらも見つけたり 海が割れてく この道を行け
2021年「日経歌壇」三枝昂之選
第七巻 放射性セシウムの封印
2021/10/12
セシウムを封じ込めたし ポルサイト 那須の麓で 励んだあの日
第八巻 自然農法家
2021/08/08
腿痛め 久々に来た鷺野畑 草生い茂り 我立ち尽くす
2021/08/23
六年目 やっと成ったぜ 温州が 摘果も嬉し 冬が楽しみ
2021/08/23
柿の実が 十六本中 八本で 自然農法 五年の歩み
021/08/23
耕すも 草を抜くのも 全部ダメ 自然農法 成果は多い
2021/08/28
もも痛め 歩けなかった三か月 畑に行ける ありがたさかな
021/08/28
普通なら 梅雨の間に腐ってる グランドペチカ 盆でも元気
2021/08/28
腰までの アワダチ草を切り倒し やっと見つけた 白い玉ねぎ
2021/08/28
百姓は 表土流出マジ怖い 耕すことも 除草もダメだ
021/08/28
炎天下 熱中症に隠し玉 ガリガリ君と 白くま君だ
2021/08/29
ヤブガラシ お前は憎くないけれど 花に集まる スズメバチ嫌
2021/09/10
雨の中 ダイコン揃い発芽して 来るか分からぬ 宅配を待つ
2021/09/30
知らぬ間に 図太くなった畑の木 枝もたわわに 柿の実が成る
2021/10/19
君がいて 僕が歩いた四十年 幸せ色に 道が輝く
2021/10/26
秋虫は ネットなければ防げない 注意すべきは 夜盗虫たち
2022/02/09
草刈って 綺麗な畝を準備して 買うの忘れた 玉ねぎの種
2022/02/14
ほうれん草 シュウ酸あって虫食わぬ 発芽悪いは 水が足りない
2022/03/04
シジュウカラ ケンカしながら 柿を食う 渋くないのか 俺も食べたい
2022/03/04
葉の裏に うまく隠れて気がつかず 移植六年 柚子こんにちは
2022/03/12
柚子は好き 鍋や吸い物 柚子湯など 来年こそは たくさん実れ
2022/03/16
ベランダで大きくなって ほぼ三十路 地植えにしたら 枯れたゴムの木
2022/03/29
どんな木も 径4センチ 越える頃 大人になるか 実がなりはじめ
2022/04/06
足もとで ハクセキレイが鳴いている 目当てはミミズ 俺でなかった
2022/04/06
モクレンの つぼみ日に日に膨らんで 春は近いか まだまだ寒い
2022/04/24
いつもなら 鳥も食べないのらぼう菜 今年の冬は 厳しかりけり
2022/08/21
なつめの木 大きくなって実をつけた ナツメヤシとは 違うらしいが
2022/08/21
なつめの木 沢山成って驚いた 台風で落ち 残念無念
2022/08/21
初めての 温州みかんもぎ取りし 味はまあまあ 香りが凄い
2022/10/05
七年目 南高梅が少しなる 樹は生い茂り 梅酒ができた
2022/10/05
そら豆と枝豆きゅうり なすトマト 種を集めよ みずからの手で
2022/10/05
白菜の 苗を育てるリビングで LEDの 力を借りて
2022/10/13
紫陽花に 追い立てられて七年目 強く香るよ 金木犀が
2022/10/13
里芋の まわりの草を全部刈り 住処を追われ トカゲが二匹
2022/10/13
渋柿と 鉄の織りなすキレートは 窒素肥料の もとになるらし
2022/10/13
甘柿の 熟れ頃見るは 難しい 鳥に負けじと 取れば渋柿
2022/10/13
野葡萄が 肺繊維症に効くらしい 畑に植えて お茶を作ろう
2022/10/30
とろろ蕎麦 自作の芋で食いにけり ありがたきかな 天の恵みよ