立ち入り禁止ドリーム

私にはもうあまり時間が残されていない。
私が私としてこの世界に存在し、何かに干渉し、誰かを愛することができる時間は、本当にあと僅かだけしか残っていない。

私には夢がある。忘れることができない夢を、持っている。そしてそれを叶えることが不可能であるということも、私は理解しているつもりだ。
あの、黄金の青春時代、私は君と一緒に多くの時間を過ごした。私は君に、たくさんのラブレターを送ったし、たくさんのキスをした。たくさんの話をして、たくさんの喧嘩をした。それは老いた今になってみると、どうしようもなく滑稽で、ほんとうに瑣末なことのように見える。もう私はあの時どうして君に怒ってしまったかさえも、思い出すことができない。君の、美しい長い髪や素敵な香りや、弾ける唇やそこから発される優しくて可愛い声や、決して曲がらない、日光のように真っ直ぐな君の目や、そんな、小説の中のヒロインみたいな君しか、浮かばない。

もし、という言葉ほど無為なものはない。
もし……、と私は思うけれども、もう私は君がどこに住んで、どんな音楽を聴いて、誰と一緒に歩いているかもわからないことに悲しくなる。
私には夢がある。
君と過ごしたかったたくさんのクリスマスや正月や、夏休みや、君に話したかったたくさんの話や、君と見たかった世界のすばらしい景色が今、私の中で渦巻いている。その時僕の隣にいたのは、空虚な美しい女で、彼女は私に金の稼ぎ方や上手なキスの仕方を教えてくれた。だから、もし……、に意味はない。
もし、君と二人で思い描いたたくさんの未来が現実になったなら……。

それが、私の夢だ。私の青春は、いつまでも無意味に暴走して、まるでコーヒーの中の無限に溶けていく角砂糖みたいに最後に消える。それが、私の夢だ。

君と思い描いたたくさんの未来が、私の前と後ろに限りなく広がって私はその中を永遠に泳ぎ続ける。私は君を愛し続ける。それが、私の夢だ。

私が目を瞑ると、しかし、思い浮かぶ十代の君の姿の前には立ち入り禁止の黄色いテープが張り巡らされていて私は手を触れることができない。私は君をこんなにも愛しているのに。立ち入り禁止の外側から、君が誰かと愛し合っているのを見ている。それが、私の悪夢だ。

それが悪夢だ。君は私の夢だ。君は、夢だ。

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