【読書】マツオヒロミ の 百貨店ワルツ を愉しむ
百貨店ワルツ
マツオヒロミ
2016年2月12日発行
大正モダニズムデザインの雅やかさに惹かれてしまう
精緻なイラストとマンガは、同人誌から出版社の目に留まり出版されたそうだ
大丸心斎橋店の改築がきっかけになり、改築前の商業空間の夢のような美しさを再現してみたくなったようだ
それが大正時代にまで遡る時の移ろいも含まれていた
婦人服売り場も洋服はまだ一般的ではない時代だ
時代が変わる輝きがそこにはある
アール・ヌーヴォー、アール・デコの意匠が看板からポスターから商品の陳列棚、壁紙に至るまでイラストとマンガに描き起こしている
とてもおしゃれで、女性は皆、老いも若きも憧れてしまう夢の売り場だったことが伝わってくる
東京でも日本橋高島屋や日本橋三越など、そんな面影を感じさせてくれる部分も感じる
著者の住む岡山には天満屋がある
そして岡山後楽園の近くには竹久夢二記念美術館があるようで、最近の著者の作品展示の機会があるようだ
和服が普段着であるから、売り場で季節を感じさせるのは呉服の展示会だ
その紋様も伝統的な意匠に、舶来のデザインをアレンジした柄が混ざってくる
モダンだとか、ハイカラだとかの言葉の感覚がイラストやマンガで表現されていることに不思議な魅力が醸し出されている
女子も学校には着物で通学しながら、百貨店の化粧品売り場で舶来の香水や化粧品を眼にする
それを洋装で買いに来る富裕層の女性を見かける
洋服をあつらえれば、下着や靴、鞄、帽子とかなりな費用のかかる贅沢なファッションだ
そんな時代の文具売り場、喫茶室、食堂、屋上庭園と観覧車
催事のポスターやアドバルーンも含めて憧れのシンボルになっていたことだろう
イ・ミイェの著作 夢を売る百貨店
と併せて読むと夢の売り場にトリップできそうだ
ショッピングゾーンとしてのデパートが、憧れの百貨店であったことをこだわりのイラストで様々描いてくれていて、同人誌ならではの楽しみに期待と可能性を持たせてもくれた