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マッチ売りの少女

これは、女子大生だった私がラブホでアルバイトしていた時の話である。


ラブホの先輩から聞いた話しで、印象に残っている話がある。


ある時、深夜にチェックインしてきたお客様がいた。
若い女性1人でチェックインし、男性をお部屋で待つという。


なかなか珍しいケースだが、無くもない。

翌朝、9時まで滞在出来る事をお伝えしたそうである。  



コトは、深夜2時過ぎから始まった。
フロントへ電話が来たそうである。


プルルルルル

「はい、フロントです。」

「201なのですが、、、、、。マッチありませんか。」

「お部屋にはありませんでしたか?
 箱の中が入っていなかったでしょうか。失礼いたしました。」


先輩は、清掃の補充ミスだろうかと、マッチを箱で、持っていったらしい。
(タバコをマッチで吸う人もいるとかで、当時はライターの他にマッチも置いていた。たしか。)


15分後。

プルルルルル
「はい、フロントです。」

「201なのですが、、、、、。マッチありませんか。」

「マッチ? 先程、私、、、」

「上手くつけれなくって。足りないんです。
 マッチが欲しいんです。」


先輩は、さっきのマッチの箱の中身を目視確認せずに、
振って確認しただけだったので、実はあまり入っていなかったのだろうかと思い

悪いことをしたと、早々に、今度はたくさん入った、マッチ箱を持っていった。
(マッチではなくて、ライターも勧めたが、断られたらしい。)



その、20分後。

プルルルルル
「はい、フロントです。」

「201なのですが、、、、、。マッチありませんか。」

ここまで来ると、201号室は、マッチ少女、と名づけられ、今日の主役である。


これは、さすがに先輩もおかしいと思い、店長と相談。

最初っから、この部屋にはマッチがあったのではないか?という話と、全部の箱にマッチが満タンで入っていたら、

かなりの数を渡していることになり、火事になったら困ると、箱では渡せないと答えたらしい。


それでもマッチ少女は、
マッチが欲しいマッチが欲しいというもんだから、
店長も確認がてら、数本のマッチと共に部屋へ行き、部屋からはちゃんと、少女も見た目変わらず出てきて生存確認。
室内から、焦げ臭い匂いがしないことを確認した。

どんだけのヘビースモーカーなのだろうかと、
みんなで話しつつ、マッチ少女も夜の3、4時を過ぎれば静かになり、
結局、彼女は部屋では誰とも合流せずに、最後まで1人で帰っていった。

あの、マッチ少女は何だったのかと、噂で持ちきりのフロントに清掃さんから電話が来た。

「浴槽に・・・!浴槽に、おびただしい数のマッチが浮いてるの・・・!」

それは、マッチで大きな浴槽の水面が見えないほどだった。


そう、マッチ少女は、満タンのマッチを3箱強、全てに火をつけ、浴槽に水をはり、

そこに、火をつけては水にジュボッっと、つけることを夜中の2時に、ずーっと繰り返していたのである。


彼女がマッチの火を見て、その照らされた明かりの中に何を見ていたかは、もう、知る由もない。


マッチ売りの少女というより、マッチ使いの少女の話。人間は心に何か闇を抱えているものである、と言うことを学んだお話。闇を抱えながら、それでも人は生きていく。

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