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ペンギンは空を見上げる 八重野統摩
「努力だけではどうしようもないことは、世の中にある」by ハル
【あらすじ】
佐倉ハルは小学六年生。
家は商店街にあるクリーニング屋。
両親と祖父とが営んでいる。
ハルは両親との関係が特に母親とは上手くいっていない。
ハルの夢はNASAで働くこと。
そのために小学1年生から英語の勉強を始め、
今は手作りの風船ロケットで宇宙の様子を
撮影するために準備をしている。
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ハルはクラスから浮いた存在。
それはある事件も絡んでいる。
そんななか、幼なじみの三好だけはハルに声をかけてくる。
でもハルは三好に「学校では話しかけるな」と命じている。
ある日、ハルのクラスに転校生がやってきた。
金髪で青い目の女の子。
名前は鳴沢イリス。
ワシントンから転校してきたイリスは自己紹介で
「なかよくしてくれなくていいと思います」と言い放つ。
最初はいろいろ話しかけにきたクラスメイトも
イリスの態度に腹を立て、物を隠すようになる。
イリスがいつも持ってきている
ウサギのぬいぐるみメアリーが無くなった。
雨に濡れながらメアリー探している所を
ハルが見つけイリスをほっとけなく、
ハルは英語で切り出す。
驚きながらも素直に答えて一緒に探すことになる。
メアリーはゴミ捨て場で掃除に使う
ワックスにまみれて見つかった。
ハルはイリスを家に連れて帰り、ボイラーで
アイロンをかけている祖父の哲じいにメアリーを託す。
ふかふかになったメアリーを見て喜ぶイリス。
それからは学校でハルの後をくっつくイリス。
風船ロケット二号の打ち上げに向けて準備をするハル。
三好とイリスと三人で打ち上げることになった。
当日は早朝から起きて三人分のお弁当を準備するハル。
打ち上げた後、三人でお弁当を食べて時間を過ごす。
そう、風船ロケットは打ち上げるだけでなく回収までするのだ。
ロケット内にデジタルカメラを設置し、
ロケットからの映像を見るのが目的なのだ。
ガガーリンが言ったように本当に「地球は青いのか」
しかし、風船ロケット二号は回収不可能だった。
ハルを励ますようにイリスは言う。
「私ね、将来、宇宙飛行士になることに決めたの」
「ハルがロケットを作って、それにわたしが乗るの ! いい考えでしょう」
その言葉に対してハルは、
「お前みたいなやつは、宇宙飛行士になれない」と返す。
次の日からイリスはまたハルに話しかけなくなった。
そして、イリスにある出来事が起きて、学校にも来なくなった。
そのままアメリカに引っ越してしまうことが担任より告げられる。
ハルはイリスの家に向かう。
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【感想】
ハルにはある秘密があります。
物語の後半にはその秘密が明らかになるのですが、そ
こがまたぐっときました。
ああ、だからハルの一人語りの形になっているんだ。
クラスから浮くことになった事件についても明らかになります。
イリスが学校に来なくなったこともハルの事件も
決して小説の中だけの話ではありません。
そのことが悲しくもありました。
風船ロケットの制作については
かなり詳しく説明があります。
実際に風船宇宙撮影の第一人者である
岩谷圭介氏の著書を参考にしています。
私も興味を持って岩谷氏のホームページを観ました。
岩谷氏が思ったより若かったこと(昭和61年生まれ…まだ30代)
風船ロケットからの映像がとても美しいのが印象的でした。
岩谷圭介 ホームページ
ハルが大人になってNASAのエンジニアとして活躍している続編が読んでみたいな。
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東京創元社
258ページ
2018年5月25日第1刷発行
本体価格 1600円
電子書籍あり
著者 八重野統摩
1988年生まれ、北海道札幌市出身。
立命館大学経営学部卒業。
電撃小説大賞への応募作が編集者の目に留まり、
2012年に書き下ろし長編『還りの会で言ってやる』でデビュー
著書
「プリズム少女」
「犯罪者書館アレクサンドリア」
「終わりの志穂さんは優しすぎるから」など
岩谷さんの風船による宇宙撮影です。
最後まで読んで頂きありがとうございます🍀