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「嫌知らず」から他者との境界線を考える

X(Twitter)で「嫌知らず」という言葉が話題になっている。
相手が「嫌だ」「やめて」と言っていても、その意思を無視して行為を続けることを指す言葉だ。

特に女性や子供など、立場的に弱者とされる者が「やめて」と言っても、相手が「でも俺は嫌じゃない」と自分の気持ちを押し通してしまう行為の事である。

「嫌知らず」と名前が付いたことで、
今まで見逃されてきた「される側」の気持ち、「する側」の心理、なぜしてしまうのか、など
形がぼんやりとしていた事象の輪郭が、ぼんやりと浮かび上がってきたのだ。

親子関係における嫌知らず

男女間だけではなく、家庭内の何気ない瞬間に、この「嫌知らず」が潜んでいたりする。

子どもが「やめて」と言ってもくすぐりをやめない
冗談のつもりでちょっとからかう

私自身、子供たちと接する中で、この境界線を越えてしまわないように気を付けている。
子ども自身に、自分の発するNOにはちゃんと力があるという事、そしてそれを表現しても良い、むしろ表現するべきだという事を知っておいてほしいから。
我が子であっても別々の人間であり、自分と相手の間にはまぎれもなく境界線(=バウンダリー)が存在するのだ。

夫婦間・パートナー間における嫌知らず

夫婦間やパートナー間ではどうか。
我が家では日常的に夫からのスキンシップは多めだが、今はやめてほしいというシーンも確かに存在する。

  • 調理中で刃物や火を使っている(危ないからヤメロ)

  • 子どもの前での過剰なスキンシップ(場をわきまえろ)

  • 機嫌取りのようなスキンシップ(は?そんなことで無かったことになると思うなよ????)

  • 生理やホルモンの周期的なもので、触られたくないときもある

ただ、私自身は「も~やめてよ~」「まったくも~」「キャー」と言いながらもどこか笑って、軽く受け流してる風に対応してしまう。

本気で嫌な時もあるのに、なぜ本気の「NO」が言えないのか。

それは、夫のすべてのスキンシップを否定したいわけではないから。
結局、「状況と場合による」という身も蓋もない話になってしまうのだ。

でも、それを相手に汲んでというのは難しすぎないか?
それを言うことで相手は、いつがOKでいつがダメなのか分からない、と感じるだろう。そして結果的に、相手は全てのスキンシップができなくなるのではないか。
それはそれで私がいつかさみしく感じてしまうのではないか、という私自身の保身や損得勘定もあるかもしれない。

SNSから見えてきた嫌知らずの本質

ただ、今回X上で嫌知らずのさまざまな意見を目にしているうちに気付かされたことがある。

自分が本当に嫌だと感じているときでも、
「女性ははっきりNOと言えないんだ」
「男性はやめてと言われてもやってもいいんだ」
という暗黙のメッセージを、知らず知らずのうちに子供たちに伝えてしまっているのではないか。
それを体現して子供に学習させてしまっているのではないかと。

我が家には女の子、男の子、どちらの性別のジェンダーもいる。
この子たちがこれから大人になっていく過程で、これが「普通の事」として刷り込まれていくのは、決して良くないことだよな、と感じる。

印象的だったのは、X上でのある投稿だ。
学生時代の自分を振り返って、好きな女性に対して嫌知らずをしてしまっていたという内容。
好きな女性だからこそ、ダメな自分を指摘されたくない、完璧な自分でいたい。
完璧な自分を成立させるためなんだから、あなたが私のダメなところを指摘なんてするんじゃないよ。
あなたはもう私の内輪なんだから、私が自分をネタで自虐するように、私はあなたのことも自虐するけど、別にいいよね。だってそれが愛なんだもん。
そんな正当化をしてしまった、という過去の自分を振り返った「してしまった側」の告白。

その方の言語化のおかげで、する側の心理が垣間見えた気がする。
嫌知らずとは「自他境界線」のゆるさがもたらすものなのかもしれない。
恋人関係や家族など、甘えが通用する関係性になったとたん、「私は私」「あなたはあなた」というバウンダリーが消滅してしまうのだ。

子どもたちのために、自分のために、できること

家族だろうと大事な人だろうと、社会で出会う誰であれ、相手が嫌がることをやったら本気で指摘される、ダメだしされる。
これは「される側」がわがままなのではない。
自分のバウンダリーの緩さを指摘されることへの耐性と、受け入れは必要だと思う。
我が子には、今まで社会の中で見過ごされてきた「嫌知らず」を、きちんと認識できる子供に育ってほしい。
そのためには、私がまずできることをやらなければいけないのだ。

今まで、軽いノリやじゃれてるふりでしのいできた場面で、私がきちんと本気のNOをいえるようになること。
まずは調理中とか、相手にも自分にもわかりやすい場面から伝えていこうと思う。


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