パクられて仕事が減ってしまった時の話
シュールでゆるーいイラストを描いている“まるぺ”と申します。ゆるゆる動物を描いてグッズを作って4年。その前はアパレル関係のちょっとマニアックな所のデザイン企画。その前は...ジーンズのお尻にカモメっぽいマークを描くアルバイト(笑。そのまた前は大阪のデザイン事務所に勤めて...と、新しい物を考えて生み出すことばかりしています。
今日は作家になる1つ前の職場での出来事のお話。
もう何十年と古い付き合いの取引先に定番で卸している商品があった。その商品ができた頃、私は入社してなかったのだが上司や大先輩方が当時の苦労話や拘りを事ある事に語ってくれ私はその“当時の想い”を聞くのが大好きだった。
苦労して試行錯誤して出来上がった商品は他とは比べ物にならないくらい細かい所まで拘っていてデザインもその1つだった。
しかしある時、毎年あるはずの注文が来なかった。“何がおかしい...”色々と調べてみると他社に乗り換えたというではないか。
そして他社の商品を入手し、見てみて驚いた。
デザインが瓜二つ。
スキャンして比べるもほぼ一致。自社の商品をトレースでもしなければ無理なくらいデザインが同じだった。
何より社内で“悔しい”と思ったのは製品のおそまつさだった。
自社よりずっと価格も安いが何より品質の悪さ。数年すれば直ぐに劣化して使い物にならないのが目に見えた。
それでも得意先が選んだのには安さの条件の他に自社のこだわりが伝わらなかったからだろう。もしかしたら得意先から他社へ「このデザインで安く作ってくれ」と依頼したのかもしれない。
長年取引があれば当然担当も変わる。その担当者に継続して自社の商品の良さを語りきれなかったこちらも悪い。
ただ、パクられた!悔しい!私も企画部の人たちも声を揃えて他社を憎み落ち込んだ。
しかし、そのデザインを手がけた上司が言った言葉に時が止まり空気が一瞬で変わった。
1番悔しいであろう当事者の上司はこう言った。
“パクられるって事は自社商品が認められた証拠じゃないか。どんどんパクらせればいい!何十年も前に作ったものを相手は今更作ってるんだぞ。しかも品質までは再現できないときた。僕らは何十年も先を進んでるってことだ。どうだっていい。また次「そう来たか!よしパクろうぜ」って言われるくらい良いものを作れば良いだけの話。おいおい……今そこで解決もしない事で嘆いて他社に追いつかれていいのかい?そんなこと考える前に1つでも商品が売れるにはどうしたらいいか考える時間にしろ!”
前向き過ぎる前向き。ごもっともだ。
そうだ作り続けるしかないんだ。
デザインは盗めても、これまでの努力や苦労まで奪われた訳では無い。その差こそが大切で相手は決して追いつけないのだ。
止まった時が動き出した瞬間、
皆は“これから先”を見ていた。
上司がかっこいいと思った。それだけ言い切れるのは並々ならぬ努力と上手くいかない悔しさを何度も経験したからこその自信と確信だろう。果てしなくかっこいいと思った。20歳上の彼に好意を抱くほど素敵に思えた。
7年間上司のすぐ側で働いた私には、他にもたくさん上司から貰った素敵な言葉がある。私はその言葉を大切に大切にしていて作家として活動していく中で迷子になった時は、そっとその引き出しを開けて当時を思い出す。
今があるのは間違いなくモノづくりに前向きの塊の上司のお陰。後ろや下を向きがちな私だけどこれからも前を前を向いて作ることを楽しもうと思う。
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モノづくりをしていて自分が作ったものと瓜二つなものが出回ってしまうことや逆に作ったものの既に世の中に似たものがあったということは、あるあるの話だ。
大昔からモノづくりやデザインはあったから世に溢れていて当たり前に似てしまう事はある。
特に日本人は真似ることが得意だ。
真似て更に発展させることが得意だ。
“真似“...なのか“パクる“...なのか、はたまた“参考“なのか。言い方によって受け取りが全然異なってくる。
企業広告を作っていた際はクライアント側から、
「〇〇企業の広告の雰囲気で作って欲しい」と言う事もあったし作る際は同じジャンルの既に世に出ているデザインを見てインスピレーションを得て作ることが大半だった。これを自分では“参考”と呼んでいたが、元を作った本人からしたら“パクられた”と思われてしまうかもしれない。もしかしたら、私が“参考“にした相手も何かを見て“参考”にしたかもしれない。
(権利を取得していて同じものを作ったなら話は変わってくるが)
作った本人からすれば腹立たしく思うかもしれない。ただ腹を立てるのは一瞬でおしまい。また新しいものを作るのみなんだ。頑張ろう。
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