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Nardisについての考察

‘Nardis’
“Portrait of Cannonball”
Cannonball Adderley
1958

ラストチューンでありこの曲が初めてレコーディングされたアルバムである。作曲はMiles Davis。キャノンボール初のリーダー作のレコーディングに際しマイルスがキャノボールに送った曲とされている。

メンバーは
Cannonball Adderley (alto sax)
Blue Mitchell (trumpet)
Bill Evans (piano)
Sam Jones (bass)
Philly Joe Jones (drums)  

そう、ピアノはビル・エヴァンス。「ナーディス」という曲を生涯かけて育てたのは間違いなくビル・エヴァンスだ。1958年といえばマイルスもエヴァンスもモードの研究を始めている頃のはずだ。この演奏の中でもキャノンボールとブルーミッチェルの大きなラッパの音のバックでエヴァンスだけがモーダルなピアノを弾いている。マイルスが「キャノンボールはわかってない!理解しているのはエヴァンスだけだ!」と言ったとか。そういうマイルスはこの曲を一回もレコーディングしていない。

マイルスとエヴァンス、キャノンボールといえば1959年の“Kind of Blue” がモードの誕生の瞬間として有名である。

そしてその前年つまり1958年に“1958 Miles“ で3人は共演している。

これが5月26日。『ポートレートオブキャノンボール』が7月1日。いろいろな人が言ってはいるが、タイミングとしてはバッチリ。言ったもん勝ちのジャズの世界のこと、マイルスが自分が書いたってことにしちゃったんだろうと思えなくも無い。

『ポートレートオブキャノンボール』全体を聴いてみても「ナーディス」以外のエヴァンスのピアノも、まぁ間違いなくエヴァンスではあるが、キャノンボールのハードバップとマッチしたクールな演奏をしているのである。しかし「ナーディス」だけはフロントラインとエヴァンスのピアノがマッチしていないのだ。

キャノンボールがマイルスからどんな形でこの曲をもらったのかはわからないが、仮にテーマ部分を譜面でもらったとして、キャノンボールはハードバップクインテットの王道のトランペットとサキソフォンの2管ユニゾンでテーマを吹き上げて演奏をスタートする。そのバックではエヴァンスが自分の考える「ナーディス」を演奏している。言ってみれば浮いているのだ。ここでのスタイルはすでに1961年レコーディングの “EXPLORATIONS” のその世界観になっている。「理解しているのはエヴァンスだけ…」

真相はわからない。マイルスが自身の演奏を残していないこともミステリアスさに輪をかけている。しかし育てたのはビル・エヴァンスだ。史実はわからないが僕のレコード棚にある中では一番新しい演奏、1979年11月26日レコーディングの“The Paris Concert -Edition Two”を最後に聴くことにする。

William John Evans 1980年9月15日没。死の10カ月前、命がけの演奏である。

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