”Social Mirai Design”「激変する時代の未来デザイン」(第4回)
今日の特別講義は、ミミクリデザインCEO/DONGURI CCOの安斎勇樹さん。僕の中ではワークショップデザインとファシリテーションと言えば安斎さんというイメージです。
その安斎さんが「ソーシャルデザイン」を解釈していくプロセスの話も興味深く、頭の中を覗ける貴重な機会。1時間半のお話はどれも面白くてあっという間の時間でした。
面白かったポイントを5つにまとめました。
1)ファシリテーションは「良い問い」を立てることに尽きる。
問いが変われば答えが変わります。「どんな地域になったらいいですか?」と聞かれても「う~ん。」となるかもしれませんが、「こんな地域いいなぁって思った場所はありますか?」とか「こんな地域がいいなぁと思ったエピソードはありますか?」とか、角度を変えたり、問いの大きさを変えたりすることで答えが出しやすくなったり、対話が進んだりするかもしれません。望むような対話を生み出すためにどんな「問い」を立てたらいいかが非常に重要です。
ある企業で「自社のアイデンティティとは何か?」という問いには答えにくくても、「自社らしい製品を3つ選ぼう。」という問いに変えると社員は選ぶことができ、なぜそれを選んだかが自然と自社のアイデンティティの言語化につながるという事例も納得でした。
また、問いによって、参加者が自分事と感じるか否かにも影響します。「そんな話、俺には関係ない。」という問いでは対話にすらなりません。参加者全員が「考えよう!」と思える問いを設定する必要があります。
対話が進み、求めるべき方向で答えを探すために、「良い問い」がすべてと言っても過言ではない気がします。
2)遊び心が創造性を加速させる。
人は「面白そう!」という感情で気持ちが動くことがあります。でも安斎さんがいう「遊び」とは、表層的な遊びだけでなく、「埋め込まれた日常から離れてみる」つまり非日常的に考えること、とのこと。
つまりワークショップにおいて、ゲームのようなことをするのではなく、「日常のあたりまえ」を離れた「考え方」や「問い」を設定するということですね。
3)衝動が創造性の源泉になる。
安斎さんは、依頼者の毛穴から衝動が飛び出さない限り、ファシリテーションをスタートさせない、といいます。その衝動がなければ、その衝動から生まれた問いがなければ、どれだけワークショップをやってもファシリテーションをしても本当の対話、本当の答えに辿り着かないのでしょう。
形だけのワークショップ、やった感だけの結果になってしまうのを避けるためにもこの衝動は大切なんですね。
4)川を上から見ない。
ファッションなどの流行やコロナにしても、川でいうところの「表層」部分は速く移り変わっていきます。しかし川の深層がゆっくり流れるように、人の価値観や文化はゆっくりと変わっていきます。この表層に振り回されることなく、深層の動きを捉え、読み解く必要があります。
特に時代の変化が激しい現代だからこそ、表層の流れなのか深層も動いているのかを判断できる目を養いたいものです。
5)問いとソーシャルデザイン
ソーシャルデザインに「社会の課題」はつきものです。
この課題がまさしく「問い」ですね。なので、ソーシャルデザインにおいては既に問いがあることが前提だと思います。ただ、その「問いの形」によって、参加する人たちの気持ちの強弱に違いが生じます。強弱どころか、問いの立て方によっては、人がそこに取り組もうとすら思わないケースもあります。つまり「問いが人とつながっているか?」が重要です。
同じ問いに人がつながっていれば、その人と人がつながり、同じ課題に向かって取り組む仲間になり、ムーブメントになり得るんですね。
もう一つ重要なのは、社会課題として問いを立てる上での「視点」。
「社会における高齢化」という社会的な視点に立ちすぎると、参加者は自分事として捉えにくく、思考や対話が生まれにくいですが、「自分のじーちゃん」という個人的な視点だと、まさしく自分事として考えることができます。しかし、個人的な視点だけではチームとしての対話を通じて創造的なことに発展しにくい面があります。どちらに偏るよりは、その両方向のバランスを取ることが大切だという話はとても大切な学びでした。
ワークショップとかファシリテーションという領域は、人と人との関わりが生み出すことだけに、カンと経験則がものをいうブラックボックス的な側面が多いように感じていましたが、安斎さんはそこを極めてロジカルに研究されてて、言語化していることがさすがだなと感じました。