見出し画像

ノベラボグランプリとは何だったのか

小説投稿サイト「ノベラボ」について


2015年6月15日に正式オープンした、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンの小説投稿サイト。
当初、出版社が直接運営するサイトということで、期待が高かった。

 ノベラボは、出版社ディスカヴァーが運営する小説投稿サービスです。投稿された作品はすべて無料でお読みいただけます。
 優れた作品はディスカヴァーから「紙の書籍」または「電子書籍」として出版されます! 出版社が運営しているサービスなので、作品が編集者に確実に届き、小説家デビューへのチャンスが広がります。
 小説家を目指している方も、文章を書くのが好きな方も、小説を書いてみたいな…と思っている方も、この機会にぜひご投稿ください! 既に他の投稿サイトで公開している作品や、完結していない作品もOKです。

小説閲覧ページが縦書きだったのも、当時としては画期的だった。
しかし、「小説閲覧ページの表示が重い」「投稿してから閲覧ページに反映されるまでに『審査』という過程が入り、すぐには反映されない」という微妙な使いづらさがあった。

「バーチャル小説家アイドル・文野はじめ」がノベラボのプロデューサーに就任!
イメージキャラクターの導入、海外進出など、d21社の意欲と本気が伝わってくるサイトだったが、いつの頃からか運営がおざなりになり、作品の形をとっただけの物販業者の広告がトップページにいくつも並ぶという荒廃ぶり。

ついに、2019年9月、サイトの終了が発表された。

2020年6月、デザインエッグ株式会社がノベラボの運営を引き継ぎ、ノベラボは従来通りの形で存続することになった。

ノベラボの小説賞・ノベラボグランプリ

毎月、テーマを決めて開催されていた投稿小説コンテスト「ノベラボグランプリ」は、ノベラボの目玉だったと言ってもいいだろう。

毎月1日から末日まで開催され、Twitterで「#ノベラボグランプリ」というハッシュタグをつけてつぶやくことによりエントリーできる。作品は完結している必要があり、分量は1万字~15万字(とはいっても、未完結の作品が最終選考に残っていたこともあるので、運用は比較的ゆるやかだったようだ)。
おおむね、締切から2か月後に結果が発表される。
賞金などはなく、最優秀賞の賞典は、d21から電子書籍として発刊されることである。

このコンテストの魅力は、
・結果が出るまでの期間が短い
・出版社の編集部が直接審査してくれる
・応募者が少なめなので、競争率が低い

という点である。

(「最優秀賞:該当なし」の月も多かったので、応募者が少ないとはいっても簡単に受賞できるわけではない

毎月異なるジャンル・テーマで募集し、必ず 1 作品は電子書籍としてディスカヴァーから発売されます。なんと、応募から最短 3 か月で小説家デビュー! さらに、電子書籍で人気の作品は、紙の書籍として出版されます
ふるってご応募ください!

ノベラボオープン直後から、第37回(2018年10月)まで続いたこのノベラボグランプリ。ペーパーバック化してもらえた受賞作、中国語に翻訳してもらえた受賞作など、その時々でd21社の向いている方角によっていろいろな試みが見られたが、「電子書籍で人気が出て紙書籍化してもらえた受賞作はとうとう一つも出なかった

ちなみに、第1回~第37回の募集テーマは次の通り。

・第1回「ファンタジー」  ・第2回「青春・友情」
・第3回「ホラー・サスペンス」  ・第4回「恋愛」
・第5回「SF」  ・第6回「ミステリー」
・第7回「歴史・時代」  ・第8回「卒業」
・第9回「ビジネス・経済」  ・第10回「家族」
・第11回「旅・旅行」  ・第12回「オールジャンル」
・第13回「ファンタジー」 ・第14回「青春・友情」
・第15回「SF」  ・第16回「ミステリー」
・第17回「恋愛」  ・第18回「歴史・時代」
・第19回「お仕事小説」  ・第20回「アクション」
・第21回「コメディ」  ・第22回「サスペンス」
・第23回「オールジャンル」  ・第24回「夏」
・第25回「ファンタジー」  ・第26回「料理・グルメ」
・第27回「青春・友情」  ・第28回「SF」
・第29回「歴史・時代」  ・第30回「お仕事」
・第31回「アクション・バトル」  ・第32回「コメディ」
・第33回「恋愛・ロマンス」  ・第34回「オールジャンル」
・第35回「夏」  ・第36回「ファンタジー」
・第37回「オールジャンル」

ノベラボ小説アワード、始まる

2020年7月、デザインエッグによるノベラボ運営継続を記念して、デザインエッグとd21が「第1回ノベラボ小説アワード」を開催した。

募集期間は7/1~9/30の2か月、結果発表は10/29。
ノベラボグランプリと同じく、Twitterでハッシュタグをつけてつぶやくことにより応募する。

結果は、予定より2週間遅れの11/13に発表された。

第2回ノベラボ小説アワードは2020.12.18~2021.1.31の日程で開催された。
結果発表は3/8の予定だったが、遅れに遅れて、4/20の発表となった。

破られた約束 ~受賞しても電子書籍化されない

ノベラボグランプリの賞典は「電子書籍化」だ。最優秀賞はd21から電子書籍として刊行される。それははっきりと約束されている。

しかし、ノベラボ本体の運営がおざなりになるのと同様、その約束も次第に守られなくなった。2018年5月、ヒロハルさんの「美しき幕引き」(第22回受賞作)を最後に、受賞作の電子書籍化は止まった。

第1回ノベラボ小説アワードが行われた2020年7月の時点で、旧ノベラボグランプリの受賞作6作品が未刊行のままだった。

◆2017年受賞
第23回
「怨火問答 ~幕末陰聞 山南語り~」猛士さん
「ターミナル・マター」ヰ戸英壱さん

第24回
「立町商店街へ、ようこそ」木の実もんさん

第25回
「赤と青の出会う岸辺の物語 ルルヌイの子」観月さん

◆2018年受賞
第29回
「利刀を以て斬れぬもの」古月さん

第34回
「月光、雄山を馳せる如く」powyさん

この中には、放置状態に耐えかねて「電子書籍化を辞退した」とつぶやいていた方もいる。

ノベラボ小説アワードを機に、放置されていたこれらの作品の電子書籍化も一気に進むのだろうな、と私は思った。これらの作品をそのままにして、しれっと次のステップに進むなんて許されることではない。
d21も、年単位で先延ばしにしてきた約束を、ついに履行する気になったのかもしれない。

2021年7月、第34回受賞作の「月光、雄山を馳せる如く」が電子書籍化された。めでたい話だが……それより前に受賞した作品はどうなっているのだろう? 進行の都合で後回しになっただけ、とかなら良いのだが……。

しかしそれ以来、受賞作の電子書籍化の動きはない。
第1回ノベラボ小説アワードの受賞作さえ、1年たった今でもまだ刊行されていない。そのことが気になっていたのだが、つい最近、受賞者であるDJ TOHさんのつぶやきを目にした。11月7日付のツイートだ。

本来であれば電子書籍化してもらえるはずだったが、デザインエッグ社と連絡がとれなくなったので、作品をノベラボから別サイトに移す、とのことである。

ディスカヴァーのみならずデザインエッグもか。
運営主体に見放されたサイトは、親に見放された子のように寂しい。


私は第16回ノベラボグランプリで最優秀賞を受賞し、丁寧な編集を経て、電子書籍を発刊してもらっている身だ。「ノベラボ出身の作家」として、強い関心をもってノベラボをウォッチしてきた。
だから、運営主体がノベラボに対する愛情や関心を失い、運営がおざなりになっていく様子を見ると、心が痛む。

https://www.novelabo.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?