ヲタクに憧れて
ヲタクになりたい。
僕は高校生くらいの頃から、ぼんやりとそう思っていた。
高校生時代、僕の友達にはいわゆる「ヲタク」と呼ばれる人が多かった。
アニメヲタク、ガンダムヲタク、声優のヲタク、その他さまざまなヲタクが僕の周りにいた。
一方の僕はというと、何をしてもすぐに飽きてしまう性格で、これといって打ち込んでいることがなかった。
好きなことに一直線に打ち込んでいて、熱く語れる友人たちが僕は羨ましかった。
ヲタクに憧れを抱きつつもヲタクになれないまま、僕は大学生になった。
大学に入ると、高校の時と環境が一変した。
僕が入学した大学は都内のミッション系の大学で、まわりはおしゃれな人ばかりだった。
いわゆる「ヲタクファッション」の人は全くと言って良いほどいなかった。
僕はヲタクになれないというコンプレックスを抱えながらも、外見はヲタクファッションそのものだったので、周囲から浮いていると感じてしまった。
少しでも周囲になじめるよう、大学生らしい爽やかなファッションをしようと心がけた。
音楽系のサークルや芸術系のサークルを覗いてみたり、おしゃれなお店を開拓してみたり、とにかく大学生らしいオシャレなことをしようと頑張った。
そんな風に「おしゃれで爽やかな大学生」感を出そうとしたが、元々「おしゃれで爽やか」な人には敵わないと思い、一年くらいで断念した。
それから僕は、周囲に合わせようとするのをやめ、自分の趣味を前面に出すことにした。
キャラクターの顔が大きくプリントされた服を着たり、派手な髪色にしてみたりした。
なんだかんだ、こっちの方が自由で気楽で良いなって思った。
しかし、大学時代を通して趣味という趣味は見つからなかった。
大学を卒業し、僕は社会人になった。
これといった趣味のなかった僕は、毎日家と職場を往復するばかりの生活になり、「一体なんのために働いているのだろう」と思ってしまった。
そんな時、テレビで地下アイドルの特集を見た。
ある俳優さんが地下アイドルについて熱く語っていて、その様子はとてもいきいきとしていて楽しそうだった。
もともとアイドルが好きだった僕は、地下アイドルのライブに行ってみたいと思った。
いきなり一人で行く勇気はなかったので、音楽が好きな友達を誘ってアイドルのライブへ行ってみた。
専用劇場を持っているアイドル、1000人規模の箱でやっているグループアイドル、50人規模の箱でやっているソロアイドル、、、
一時期は様々なアイドルのライブへ行ってみた。
その中で出会ったのがゆるめるモ!だった。
2018年の夏のことだ。
初めてゆるめるモ!のライブ会場へ行ったとき、フロアを見てカルチャーショックを受けた。
ゆるめるモ!のヲタクの人たちが、僕の中にあった所謂古典的な「ヲタク」のイメージとは異なっていたからだ。
年齢層が若いし、女の子が多いし、皆オシャレだった。
あのちゃんのファッションを真似ている「あのちゃんギャル」と呼ばれる人たちも印象的だった。
開演前から強く印象に残ったゆるめるモ!の現場だったが、ライブを観たら完全にハマってしまった。
メンバーはオシャレでかわいいし、曲がとても良かったし、フロアも盛り上がっていて会場に一体感があった。
初現場にして、「これからもゆるめるモ!のライブに通おう」って決心した。
それからしばらくの間は、ゆるめるモ!の現場に通いつつ他の様々なアイドルの現場に通っていた。
しかし、次第にゆるめるモ!の現場が中心になり、ほぼほぼゆるめるモ!の現場のみに行くようになった。
「ヲタクになりたい」と思いながらもヲタクになれなかった僕は、
どうやら気づいたらヲタクになっていたようだ。
しかし、今振り返ってみると、あの頃の僕はヲタクとしてはまだまだだったと思う。
なぜなら、全力感が足りなかったからだ。
好きなことに全力で向き合ってこそ真のヲタクだと、僕は思う。
あれから2年あまり。今の僕は、理想のヲタクに少しは近づけたかな。
「好き」に全力で向き合える、そんなヲタクになりたい。