1本のスタジイの木と〈ひと月の記録〉
寝室の窓のむこうに、スダジイの木が立っています。おとなりさんの庭の木です。
こないだの新月の日から、このスダジイの木と朝起きてすぐのひとときを一緒に過ごす、ということを始めたことは、上限の月のときに書きました。
異種間コミュニケーションのために、自分の中を静かにする練習として始めようと思い立ったので、とにかく静かにただ一緒にいることを目標にしてきましたが、不思議なことに本当に毎日違う”洞察”をもらい続けて今日にいたります。
毎朝、なにかの”洞察”を期待したりわざわざ得ようとしたりはしたくなかったので、やりとりの記録はあえてせずにきましたが、3/4カ月経った下弦の月の日に、やっぱり忘れてしまう前に書き留めておこと思いたち、遡って書いてみて、そして残りの1/4月は日々書き留めていきました。
◆最初の日(上弦の月のときにも書いたけれど再掲):やわらかく気を向けていたら、全身にじーんと気が通るような、少しふるふるした感覚になりました。昔、学校の帰り道に居た1本のスダジイの木と仲良くなったとき、いつもその木の前に立つとこういう感覚が全身に訪れたのを思い出しました。それで、あ、この木と通じ合えたみたい、と感じました。
◆次の日:やわらかく気を向けていたら、ぐいん、ととても背の高いところにいる感覚がやってきました。地上3~4メートルくらい? そこから見下ろしていると、人間のみんなは背丈が低いんだな、と感じました。(考えてみたら、人間は一番背の高い人でも2メートルくらいですもんね)。そして広い空の空間を身の周りに感じました。ああ、木から見ると、人間はこんな小さく見えているんだなあ、すごく地面に近いところにいる存在に見えているんだなあ、と思いました。
◆別の日:「風」について(上弦の月のときにも書いたけれど再掲)。いつもより強い風にあおられれる枝葉と、こんな風にも微動だにしない幹にやわらかく気を向けてたら、「ものすごい敏感さと、揺るぎなさが、この木の中で同居している」「風って情報」というのが来た。自分の中の問題点である「影響されやすさ」についての洞察をもらった。「風に吹かれて幹までしなるのは、若い頃」。大人になるということは、どっしりした幹を持つということみたい。
◆別の日:ウグイスが来ました(上弦の月のときにも書いたけれど再掲)。静かにスダジイの木に気を向けてたら、ウグイスが、私が目を向けていた一番下の枝葉の中に飛んできた。その枝から、上の枝、また上の枝へと飛び移り、そこで「ホー、ホケキョ!」と立派に鳴きました。朗朗とうたう声はいつも聞いているけれど、うたっている瞬間の姿を見せてもらったことはこれまでなかったので、贈り物をもらった気持ちになりました。
◆別の日:「太陽の光」について、「知性」について。朝の光を受けて輝く葉っぱに気を惹かれてたら、「太陽の光はエネルギーであること」「木々は光を得るために競い合ってるのでなく、太陽を礼賛しているだけ」というのが来た。「木と人間とは造りがまったく違う、人間の脳は手を使うことによって大きくなって、それを知性の指標にしたけど、手を持っていない生きものにはまったく別の知性の指標がある」「人間は脳が大きい=知性が高いと考えているようだけど、人間の脳の大きさは手先の器用さとつながっているだけなので、たくさん考えて悩むくらいなら手をたくさん使えばいいだけのこと」「木は食べ物を自分で作れるから、食う食われるの恐れを知らないこと」も来て、その後、鳥との関わり、虫との関わりについても来た。
◆その次の日:「雨粒、水」について。雨に打たれるスダジイの木を眺めていたら、「水は、うるおいと、戯れ」というのが来た。雨粒が枝をツーッと伝ってくるのは、おもしろいみたいでした。そして潤うことは嬉しいみたいでした。また、スダジイの葉っぱは「雨粒を受けるワンクッション、ツークッションになることで、雨粒が地面に直撃する勢いをやわらげて、地面を守っている」というようなのも来た。この日は脳内が静まらなくて、スダジイの木と一緒にいようとするのにすぐ別のことに考えが飛んでいって、ここに不在になってしまう私。そのことを謝ると即座に「いいよ」と返ってきた。はじめてはっきりとした言葉として応答が返ってきた日でした。
◆その次の日は微風の日:「空気」について。このあいだは強風に吹かれる一方に見えた葉っぱから、「風に吹かれているだけでなくて、風の中のいろんなものを葉っぱで取り込んでいる」というのが来た。「取り込んでは、また外へ返している」。だから風に吹かれる一方なのでなくて、風を迎えにいっている部分もあるようでした。そして空気の成分も、水の成分も、光のエネルギーも、どれも「流れ」となって木の中を通り続けていることを知らされました。みずからは「通り道」であること。
残り23日分は個人的な内容も若干含まれるので、以下、限定公開させていただくことにしました。
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